おじさんとおばさんはご招待と称してたまに人を招いて宴会をしています。その楽しみの一つが、嫌いなものを食べさせることだというのは「意外な組み合わせ」で書きました。これだけだととても意地の悪い夫婦だと思われるかもしれませんが・・・・そうかもしれませんね。とにかく嫌いなものを聞き出しておいて、だまして食べさせるのですから。でも、アレルギーであるとか身体的に受け付けないものは決して出しません。
食べたことがない、食べる気がしない、嫌いだ。というものを何とか食べてもらおうとするのです。ただ、わが家でご招待する人はよく飲み、よく食べる人がほとんどで嫌いなものが少ないように思います。
そんな中で嫌いなものを聞き出したときには、「よしっ!」という思いでメニューを考えます。これまでに一番楽しめたのはNさんという男性です。Nさんはあまり食べずに飲む方なのですが、それでも一通りは食べてくれます。でもナスが嫌いで、ナスにだけは手を出さないのです。
そのNさんに手を出してもらえればおじさん達の勝ちというわけです。
そんなNさんとはなぜか機会があって10回以上ご招待をしていますし、持ち寄りの宴会も何度かあったのでチャレンジの機会もそれだけあったわけです。Nさんはナスはに手を出さないと書きましたが、はっきりとナスだとわからなければ、疑いながらでも箸をつけてくれます。それでやっぱりナスだと分かればその料理はそこまでとなります。
「ナスはどんなに料理されていても分かるけど、前に教え子がカレーに小さく刻んだナスを入れていた時は分からなかった。」と言っていました。でもおじさん達は嫌いなものを食べさせるのが目的ではなく、嫌いだと思っているものを好きになってもらいたいのです。そのためにはその素材の持ち味を感じてもらわなければいけないのです。つまり、素材の持ち味を活かした料理でなければいけないのです。
それで、見た目にはナスとは分からないけど確かにナスの存在感があるような料理を探すのです。Nさんには数多くチャレンジして五分五分というところだったと思います。その中で記憶に強く残っている料理が2つあります。1つは餃子の皮でツナとナスを包んで揚げる料理です。これはおかわりをしてくれました。
もう一つは最高でした。「なすのキャビア仕立て」という料理で、オリーブオイルをかけてオーブンで焼いたナスを細かくきざんで、レモン汁と塩こしょうで味をつけただけなのです。これをしっかりと食べてくれたのです。でも、意地っ張りなNさんはそれでも自分がナスを食べたということを認めようとしませんでした。
「ご招待のおかげで、これまで嫌いだったものが食べられるようになった」という声を何度か聞かせてもらいました。最近では「意外な組み合わせ」の「チーズやっこ」を食べさせた彼女が、自分でやっこネギを買ってきて「チーズやっこ」を作って食べているというのです。うどんのネギも歯で止めるという彼女がです。
それを聞いてとても嬉しくなりました。やっぱりおじさん達は意地悪ではなかったのです・・・よね。