こんな話を聞いたことがあるかい?

 

雪深い山に庵を構える狩人が
ある日一羽の鳥をしとめた
商いに街へ降りるまで、と
彼は獲物を庭に捨て置いた

 

ふと気配に気づいた夜半過ぎ
狩人は窓の外に目を向けた
そこには息絶えた鳥に寄り添う
もう一羽の鳥の姿があった

 

多分、番いの相手だったのだろうね
『死』の概念が理解出来なかったのかもしれない
再び羽ばたくことを待ったのかもしれない

 

いずれにしても
片割れは冷えた伴侶の傍らに
ただひたすら添い続けた
やがて残酷な冬の冷気が もう一羽をも凍らせて
鳥は伴侶に重なるように死んでいった

 

そのすべてを見詰め続けた狩人は
己の生業を思いつつ
番いの鳥を離すことが出来ず
ひとつ処に葬ったという────

 

 

……哀しい話かい?
確かにそうかもしれないね
でも わたしはこうも思う
死してなお離れられぬほどの伴侶を持つ

 

 

それは最高の幸福ではないだろうか?

 

 

 

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