なあ、マイクロトフ……
わたしの話を聞いてくれ。

 

騎士団の再興も、ほぼ順調に進んでいる。
────多分、おまえはそう思っているはずだ。
だが……実際に難しいのは
これからだとわたしは思う。

 

今はいい。
再興というひとつの目的のために
一丸となっている今は
余計なこだわりが入り込む余地はないだろう。
だが、ある程度状況が納まって
新しい体制が軌道に乗る頃には
必ず問題が台頭してくるに違いない。

 

ああ、おまえにはなかなか理解し難いとは思う。
けれどね……人の確執というものは
簡単に生まれて、容易には消えないものなのさ。
一度は敵対して戦った相手を容易く受け入れられるほど
人は単純な生き物ではないんだよ────

 

そして、ね────
ただでさえ混乱している
ひとつの組織の先頭に立つものは
……ひとりで十分だ。
ひとつの意思の元でこそ、
人は団結し易いものだとわたしは思う。
つまり……

 

おまえ、だ。

 

おまえがこの先、マチルダ騎士団の要となる。
それは誰もが認め、望んでいることだろう。
────わたし?
柄ではないよ、考えてもみろ。
わたしはマチルダの人間でもなく、
反逆の象徴であったわけでもない。
すべてを鑑みて、
やはりおまえが後進を導くべきだと思う。

 

大丈夫だよ、おまえは随分変わった。
もう……わたしの力などなくても十分にやっていけるさ。
………………ああ、そうだ……
そうなんだよ────

 

 

わたしはマチルダを出ようと思っている。

 

 

真っ直ぐなおまえには理解し難いことかもしれないが、
いずれわたしの存在は
騎士団の禍の目となりかねない。
そうなる前に……退かせてもらうことにするよ。

 

……あまり驚かないんだな、少し意外だ────

 

ああ、一度グラスランドに帰ろうと思う。

勿論、会えるさ。
……おまえが磐石の組織を作り上げた頃には。

わかっているだろう、マイクロトフ?
どれほど遠く離れていても、
わたしの心はおまえと共にある。
いつもおまえを……おまえのことを想っているよ……
だから……立派な騎士団長となってくれ。

 

 

ああ、そうだ……もう────

 

 

 

決めたんだ。

 

 

 

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