最後の王・51


肩を抱いた腕を外し、青年の眠りを妨げぬよう寝台を抜け出ると、厚手のカーテンの隙間から漏れ入る光が目を刺した。
軽い酩酊に漂うように、冷えた空気に暫し身を委ねる。睡魔こそ仄かに残っているが、人が世に生まれ出でた最初の心地とはこうしたものだろうかとマイクロトフは考えた。
一夜で世界は変貌した。目に映る全てが美しく、優しい。
そして背後に目を遣れば、熱を掻き立てる愛しき人が無防備な寝顔を見せている。
この先の人生に如何なる波瀾が待ち受けようと、縦しんばそれがどれほど過酷なさだめだろうと、胸に灯った想いが己を護る。身も心も、未来さえも護ってくれる気がした。
カミューの眠りは深い。ただでさえ失血で疲弊していたのだ。当分目覚めそうにないと判断したマイクロトフは、物音を立てぬように身支度を始めた。
七日間で往復を果たす予定の此度の旅、明日には、各地から集まる騎士たちの合流地と定めた街道の村に向けて発たねばならない。あまり猶予はなかった。祖父母の墓前を訪ねるという目的を果たそうと考えたのである。
適う限りに静かに努めたが、不意に上掛けの奥から囁き声が呼んだ。
「出掛けるのかい?」
慌てて向き直ると、ぼんやり潤んだ琥珀が見詰めている。半分覚醒しただけの青年が、夢心地に身じろいだ。
「すまない、起こしたか。墓参りをしてくる。おまえは寝ていろ」
「……いいのかな、護衛なのに」
吹き出したマイクロトフは、歩み寄って、何やら上掛けを巻き付けるようにもがく青年を覗き込んだ。
「いいから、眠れ。それほど遅くならないと思うが……待てなければ、自力で食事を取ってくれ」
「ん……」
幼げに上がった声に頬が緩み、マイクロトフは首を捻った。
「寝惚けたおまえは初めて見るが」
そうして、軽く唇を重ねる。
「───参った。可愛いのだな」
今までなら言葉にするのは躊躇われただろう。だが、既に再び眠りに陥ろうとしている青年になら言えた。
穏やかな寝息を洩らす唇に今一度くちづけて、マイクロトフは身を起こした。そのまま部屋を後にしようとしたところで足を止め、昨夜カミューが丸めて捨てた紙を屑入れから拾い上げた後、階下へと向かった。
かつて母が暮らした家。前に寝泊まりしたときには父王が一緒だった。
今はもう、母や祖父母の生活の軌跡は窺えない。屋敷は王族が使う宿として手を入れられたからだ。だから、建物に対しては然したる感慨は覚えないが、前回の訪問時に一通りの探索は済ませてあった。
もとは居間だった部屋の扉を開け、設えられた飾り鏡の前に立つ。丁寧に皺を伸ばした紙片を翳し見たマイクロトフは、はっと胸を衝かれた。
書き損じ、とカミューが称した三行目。
マイクロトフは束の間、時の経つのも忘れて、魅入られたように立ち尽くす。
「愛している」─── 流麗な文字が、鏡の中にひっそりと浮かんでいた。

 

 

 

 

屋敷を出た途端、マイクロトフは、庭先に屈み込んだ青騎士隊長を見付けた。
何処からか迷い込んできたらしい薄汚れた猫を無表情に構っていた男が、すぐに立ち上がって軽い礼の姿勢を取る。続いて見せたのは紛れもない安堵だった。
「……良かった。意識が戻りましたか」
皇子の暴走を止めようとして重傷を負った青年への、彼にしては珍しい、本気の気遣いの口調だった。
「良く分かったな」
察しの良さに感心して零すと、騎士は苦笑した。
「ここに着いてから片時も寝所から離れようとなさらなかった御方が、やけに晴れ晴れとした顔をなさって現れた……それで察せられなければ、間抜け過ぎます」
「確かに」
マイクロトフも破顔して、それから眉を寄せた。
「何をしていたのだ?」
「無論、警護のつとめです」
騎士隊長は門の外へと目を向ける。
「わたし個人としては、十のうち十、逃げた連中による仇討ちの恐れなどないと考えますが、侍従殿は異論をお持ちのようで。用心に越したことはないと延々と続く熱弁に応じさせていただきました。団長が屋敷に篭られてより後、一時も欠かさず交代で警護にあたっていたのですが……それも御存知なかったとは」
一気に説かれる事情。騎士隊長相手に訴える従者の姿が目に浮かぶようで、マイクロトフは堪らず吹き出した。
「すまなかった。気遣いに感謝する」
「……護衛殿が目覚めず、団長が憔悴する様を案じていたのは騎士たちも同じです。今朝はわたしが警護担当、吉報を真っ先に得られたのは幸いでした」
「後で皆にも礼を言おう。だが、その前に墓参りを済ませたい。フリードが献花の手配をしてくれていると思うのだが」

 

フリード・Yは、他の騎士たちと一緒に村の宿屋を使っていた。前回の訪問の際には皇王や皇子と共に屋敷に寝起きしたし、此度も同様にしても良かったものを、敢えて別宿を望んだのだ。
特別扱いに甘んじず、皇子に倣って一騎士として過ごす決意が彼にはあった。しかしそれ以上に、間近で皇子の苦悩を見ていられなかったというのが本当のところだ。
昨日の昼、見舞いに顔を出した従者は、眠る青年に回復魔法を掛けた。一晩眠って取り戻した魔力の大盤振舞いであった。
ひとたび傷を塞いだら、回数を重ねても意味がないのはフリード・Yにも分かっていた。魔法では体力は回復させられない。回復魔法には解毒などの効用もあるが、これは外部から及んだ害毒に限定され、所謂「病」までは治癒させられないのだ。
前にカミューの高熱を多少なりとも抑えたのは、それが体内に在る魔の力による熱であったから───つまり、攻撃魔法を癒したのと同義である。
ただ昏々と眠るカミューを、覚醒させる力にはならないと知りながら、それでもフリード・Yは回復魔法を施し続けた。
彼にはそうするしかなかったのだ。あの凄まじい戦いを見守るしかなかった無力な己への自責、そして皇子を魔剣の支配から解放した青年への畏敬。カミューが目覚めて初めて、忌まわしい悪夢の終焉を心から喜べる気がしていたのである。
帰り際、フリード・Yは命じられていた献花の準備について語っていた。青年が意識を取り戻さぬ限り、皇子が傍を離れることはないだろうと確信しつつ、無事に訪村の目的を遂げられるようにとの祈りを込めて、言い残していったのだった。

 

「ああ、それでしたら村長の家に用意してある筈です。墓地への道の途中ですから、通りすがりに受け取られれば宜しい」
「こんな時間に迷惑ではないだろうか?」
「村長は、いつでも、と言っていたので問題ないかと。それに」
くす、と騎士は笑みを零した。
「それほど早朝でもありませんぞ。城でならば、珍しく朝寝を過ごされたか、といった時間です」
愛しい人を腕にして眠りから覚めた身を言い当てられたようで、頬に熱が上る。先に立って門を開けていたため、青騎士隊長は若い騎士団長の照れ顔を見そびれた。
「予定では、遅くとも明日の午後には経たねばなりませんが……彼の体調は旅に耐えますかな」
何とも気怠げだった様子を過らせつつ、マイクロトフは控え目に頷く。
「残れと言っても聞かないだろう。それより、馬を失ってしまった。村で求められるだろうか」
「───ああ、そう言えば」
くるりと顔を巡らせ、騎士は皇子が横に追い付くのを待つ。
「御報告が遅れました。お二人の馬は、昨日、部下が連れ戻して来ました。あの場から然程遠くないところに居たようで、今は御屋敷の厩舎に繋いであります」
「本当か?」
意外だった。
あのとき、野に放した二頭の馬。カミューは「旅の途中に脚を失うのは困る」と言っていたが、一旦手放したからには取り戻すのは至難だろうと考えていた。あれはただ、戦いに巻き込んで傷つけまいとの慈悲なのだろう、と。
マイクロトフの愛馬は指笛によって、停止、あるいは寄って来るように訓練されている。しかし最後まで指示は出せなかったから、半ば諦めていた。
カミューの馬も良く馴らされているようだが、特に合図を出したふうには見えなかった。どうして二頭が近場で見つかったのか、不思議で堪らないマイクロトフだ。
騎士隊長は、皇子の怪訝に気付いて切り出した。
「二頭とも賢そうですからな。主人に必要とされているのを本能で悟っていたのでは?」
「そうか……後でたっぷり褒めてやらねば」
言い差して、ふと首を捻る。
「それにしても、良く連れ帰れたな。カミューの馬はともかく、おれの馬は、おれ以外に寄られるのを嫌うのに」
すると騎士隊長は吹き出した。可笑しくてならない、といった面持ちで彼は言った。
「捜索に出た部下連中も、それを案じていました。主人の許へ案内しようとして威嚇されては堪らぬ、と。ですが……護衛殿の馬に礼を言われるべきですな、彼女の手綱を引いてみたところ、団長の馬が一緒になって付いてきたのだそうです。余程、彼女がお気に召したらしい」
マイクロトフは複雑な気分に陥った。
美しい馬に惹かれて、離れまいと追う黒馬。まるで互いの主人さながらではないか。予期せぬ展開に、騎士たちは困惑し、苦笑したことだろう。
騎士隊長は調子を改めた。
「しかし、運の良い馬たちだ。ほぼ丸一日、一所に留まっていて、よくぞ魔物に襲われなかったものです」
まったくだ、と同意し掛けてマイクロトフははっとした。
「そう言えば……刺客が風魔法を放ったとき、カミューに「真紅のマント」を被せられたのだが」
「侍従殿は「烈火が護ってくれた」と言っていたと……ああ、ならば防ぎ切れなかったときの予備策ですな。実に見事な護衛だ」
半分は同意しつつ、残り半分では、自身で防具を使って欲しかったというのがマイクロトフの本音である。
「……その後すぐに戦いに入ってしまった。返す暇がなかったので、咄嗟にマントを手綱に括った」
「言われてみれば、部下が訝しんでおりましたか。何故また手綱がマント付きなのか、と。成程、あれは魔守効果の強い防具だ。魔物除けに一役買ったのかもしれない」
騎士隊長は納得顔で応じた。
「マントは侍従殿に渡しておきました。後で彼にお返しください」
「そうする。あれは赤騎士がカミューに贈った品だ。戻ってきて良かった」
「……連中も熱心な勧誘に勤んでおりますな」
やや面白くなさそうに零した後、男は言った。
「ともあれ、魔物の餌にならなくて何よりだった。あの馬は体格も立派で、騎馬隊の先頭に立つに相応しい威風がありますからな。我々が近寄っても敵意を見せなくなったのもありがたい。「恋人」の前では、たいそう行儀の良い馬だ」
「…………」
朗らかな揶揄が、そのまま自身を指しているように聞こえる。マイクロトフは必死に動揺を抑えようと努めた。
死んだ刺客については、騎士隊長は何も語ろうとはしなかった。
負傷したカミューと魂の抜けた皇子を村に向かわせるときには、亡骸に構う余裕などなかった。日が変わり、馬の捜索に向かった騎士たちは、やや渋々ながら、刺客らを葬るつもりだった。
けれど戦いの地に遺体はなかった。魔物か野性の獣にでも引き擦られていったのだろう、地面にそれらしい跡が残されていた。
皇子の手による冷えた殺戮の痕跡は永遠に消え失せた。今更、事細かに説く必要はないと騎士隊長は考えたのだった。
会話が途絶え、二人は暫く無言で道を行った。やがて騎士の言葉通り、村長が礼を尽くして皇子を迎えた。
用意されていた立派な花束を抱え、村外れにある墓地へと足を進める。午前の穏やかな陽に照らされた墓碑を、記憶を探りながら回り、やがて目指す一つへと辿り着いた。
村人たちが手入れしてくれているのか、長く訪ねていなかった割には墓は荒れていない。膝を折り、そっと手向けの花を置いて、石に刻まれた祖父母の名を胸で呼ぶ。
彼らが母を生み出してくれたから、今の自らが在る。そんな当たり前の事実と改めて向き合わせてくれた青騎士団副長への感謝も過った。
最後に、ゴルドーの生母の名に目が止まった。
子と争うことになってしまったが、この女性には何の遺恨もない。祖母亡き後、祖父を支えてくれた人だ。そう思えば、安らかな眠りを祈らずにはいられなかった。
騎士隊長は背後に控えて黙していたが、皇子が腰を上げるのを見て穏やかに言った。
「もう宜しいのですか」
「ああ。随従に礼を言う」
では、と騎士は元来た方へと数歩踏み出したが、依然墓碑を睨んだままの皇子に気付いて足を止めた。
「団長?」
気遣うように呼び掛ける声。マイクロトフは振り返り、ひっそりと佇む墓標群を見遣りながら呟く。
「平和な村だ。前の村でもそう思ったが」
「ええ、まったく長閑なものです。多少の貧富の差こそあるが、大枠では民も満足して暮らしているようですな」
落ち着いた口調で同意し、男は目を細めた。
「この先も、団長───いえ、殿下が護られるべき安寧です」
わざわざ言い直した呼称がマイクロトフの琴線に触れる。
この騎士隊長は、マイクロトフが騎士のつとめに臨むと宣言したときより、常に「団長」と呼び掛けていた。然して深い意味はないのだろうと考えていたマイクロトフだが、実はそうでもないらしい。じっと男を見詰めて、量るように問うた。
「聞いても良いか?」
「何なりと」
「おまえたちの目に、おれはどう映る?」
思い詰めた口調が、騎士の飄々とした表情に不可解の影を落とす。彼は少し考えた後、ゆるゆると首を傾げた。
「いま少し、具体的に質していただけませんか」
知らず笑んで、マイクロトフは言い直した。
「おまえたち騎士の目には、今のおれは未来のマチルダ皇王として映っているのだろうか」
質疑の意図を探るかのように、騎士隊長は口元を引き締めた。皇子の腰元に視線を向け、淡々と答える。
「……剣の柄色を違えられた。王家の宝剣を携えた御姿は、マチルダ統治者以外の何ものにも見えませんな」
魔剣の禍を避けるため、長く模造の品を手にしてきた。忌まわしき支配を絶ち切り、今、マイクロトフが佩刀するのは紛れもない王位の証、ダンスニーである。
国を築き、その安寧を護るために振るわれるべき宝剣。過去代々の皇王のうちでも、使い手として選ばれたのは極少数、多くの統治者が触れようとせぬまま戴いてきた力。
それを手にした人物をマチルダ皇王と見るのは自然の流れ───騎士隊長は言外にそう語っていた。
ならば、とマイクロトフは唇を噛んで顔を背ける。
「一個人としてのおれには価値がないだろうか」
今度こそ騎士は眉根を寄せた。目を合わそうとせぬ皇子に長々と眺め入り、そして肩で息を吐く。
「わたしに答えよと仰せですか。不敬を承知で申し上げても構わぬ、と?」
「……無論だ、是非とも答えて欲しい」
低く応じると、男はマイクロトフから立ち並ぶ墓標へと視線を移した。
「わたしはたかだか一騎士隊長、国の決め事に意見する立場にありません。しかしながら、常々思っていました。皇国宰相が赤騎士団長、第一王位継承者が青騎士団長と称される慣習は、まったくもって無意味である、と」
マイクロトフははっと顔を上げた。だが、そのとき既に男は背を向けていたので、表情は窺えなかった。
「訓戒に従い、仲間と共につとめに血汗を流し、その結果得るのが位階です。名だけ冠された騎士団長など居ないも同じ、真の指揮官と仰ぐのは騎士団副長お一人、そのように考えてきました」
そこで口調が和らいだ。
「わたしは前皇王陛下の皇太子時代を存じ上げない。名のみではなく、騎士団長として勤めようとなさった皇太子……年嵩の騎士から口伝てに聞き及んだに過ぎません。騎士団に溶け込まれた非常に稀な御方、部下として尊崇を捧げるに相応しい上官でおられたこと、わたしにとっては全て逸話でしかない。けれど、その死に殉じて剣を置いた騎士が多く居た事実がそれを証明するとも考えています」
「…………」
「その御子息は、父君に似て、騎士道に関心を寄せる方でおられた。青騎士団長の名を受ける以前から、騎士と一緒になって剣の稽古に励んでおられた。が……、訓練参加以上に騎士団に踏み込もうとはなさらない。わたしは、それが殿下の限界なのだと思っていました。しかし───」
騎士はひとたび口を閉ざし、空を見上げた。再び語り出した声音には深い情が篭っていた。
「殿下が我らに目を向けられたのは、確かにゴルドーの策謀を回避するためであったのでしょう。しかし、それは信頼なくば出来ぬこと。何処にゴルドーの間者が潜むか分からぬ状況下で、我らに助力を求められた……命を預けるも同然です。絶対の信頼を委ねられるは、騎士にとって何より重く尊い栄誉、忠誠を捧げる理由となる。あのときからわたしは殿下を、名のみではない、真の青騎士団長として仰いできました」
「……おれは騎士団長らしいはたらきなど何ひとつ為していない。そんなふうに言って貰える資格はない」
ポツと口を挟むと、振り向いた騎士隊長が破顔した。
「自団・他団を問わず、苦境に在る騎士のために心底から憤られた。騎士を従えて街や村を検分なさった。民のために魔物と戦い、井戸の泥まで掬われた。一つずつ階段を昇られながら、何を卑屈になっておいでか。もともと変則的な位階なのです。つとめに臨もうとする志以上に確かなものなどない」
さて、と彼は再び口調を改め、威儀を正す。
「最初の御質問に戻りましょう。わたし、それにおそらく他の騎士たちも信念は一つです。国を護り、安寧を保つ……それが騎士団員に課せられた最大のつとめ。皇太子としてばかりか、一個人としても励んでおられる御方に価値を見出さずして、何を尊べば良いと仰せか」
そうして騎士隊長は粛々と片膝を折って頭を垂れた。
「青騎士団長、マチルダ皇王……冠する肩書きが変わろうと、今の御心のまま進まれる限り、我らは常にあなたを主君として御見上げしましょう」
マイクロトフは黙したまま、長く騎士を見詰め続けた。
広がる感動の中に仄かな痛みが疼いている。
彼ら騎士は、ゴルドーの野望から自らを護り、無事に皇王位に就けるために励んでくれている。「どう肩書きが変わろうと」と男は言うが、それは騎士道に憧れ続けた風変わりな皇子、近く青騎士団長の名を失う皇子の心を慮っての言葉に他なるまい。
───けれど。
マイクロトフは知ってしまった。
己が真に望む未来。
己のみが築ける、より正しきマチルダの明日のかたちを。
そろそろ午後へと向かおうとしている天空の光を見上げ、その目眩さに目を細めて。彼は小さく呟いた。
「……おれは王になる」

 

そして今ひとこと、胸の最奥で言い添える。
───終わりなき信念を掲げた、マチルダ最後の王となる。

 

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気分的には、ここで前半部終了です。
よって、我が家の青らしく
ボキャブラリー貧困くさい睦言
「可愛い」を吐かせてみました(笑)

ここから先は、破局の前の静けさ……かな。
もう少ししたら登場人物が増えます。
チーズケーキ食べ飽きた人とか。

 

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