LARS JANSSON
息子と教え子のサポートを受けてハイテンションのJANSSONの演奏が聴ける
"WHAT'S NEW"
LARS JANSSON(p), THOMAS FONNESBAEK(b), PAUL SVANBERG(ds)
2010年4&6月 スタジオ録音 (SPICE OF LIFE : SOL SV-0013)


LARS JANSSONといえば、ヨーロッパ・ジャズの草分け的存在で、その美しいピアノ・プレイが多くの日本のファンを引きつけてきたはずだ。1951年のスウェーデン生まれ。もうじき、還暦を迎える。もっとも、スウェーデンには還暦という認識はないかもしれないが・・・。
そのJANSSONが新しいメンバーで今年録音したスタンダード中心のアルバム。メンバーが面白い。ベースのTHOMASは、かつてのJANSSONの教え子だというし、ドラムスのPAULは実の息子だという。THOMASとはここ半年の共演だし、息子のPAULとは始めての録音だというから、これはいやが上にもテンションが高くなるでしょう。まあ、親父の腕の見せ所といったところだね。
それともうひとつ面白い点がある。何と、このアルバムはJANSSONにとって初めての本格的なスタンダード集だということ。これほどのベテランにして、スタンダードを演奏することへのわだかまりがあったようだ。ライナー・ノーツの中で「私は長年これらの偉大な楽曲に対して大きすぎる敬意を持ちすぎていたのかもしれない」と述べている。

@"LOVER MAN" 
まさにLRAS JANSSONサウンドだ。今までと一点違いがあるとすれば、それはJANSSONの唸り声だ。あたかもKEITH JARRETTのようではないか!JANSSONのアルバムとしては今までになかった録音スタイルだ。
A"THE MASQUERADE IS OVER" 
ここではドラムスのPAULがハードなドラミングをみせている。その高まりとともに力強い4ビートへと移行していく。こういう味わいは今までのJANSSONトリオにはなかったことだ。
B"HILDA SMILES" 
スタンダード・ナンバーと見紛うほどの素晴らしいテーマ。JANSSONのメロディ・メーカーとしての実力を遺憾なく発揮した佳曲。
C"WHAT'S NEW" 
バラードとしてではなく、心地よいミディアム・テンポの4ビートを刻む楽曲として楽しむことが出来る。曲間に聞えるJANSSONの唸り声はテンションの高まりを表しているのだろうか?THOMASのベース・ソロも良く歌っている。これは良いねえ。
D"VERY EARLY" 
THOMASの力強いベース・ワークが堪能できる。JANSSONは良い教え子を持ったね。
E"BEGINNERS BLUES" 
JANSSONのオリジナル・ブルース。アルバムの中にブルースが挿入されていること自体が珍しい。奔放なPAULのドラミングが刺激的だ。
F"EVERYTHING HAPPENS TO ME" 
G"WILLOW WEEP FOR ME" 
美メロ路線から逸脱したJANSSONの新機軸。グルーヴィな演奏だ。PAULのブラシ・ワークも親父をしっかりとサポートしている。
H"COME RAIN OR COME SHINE" 
息子のPAULと教え子のTHOMASにプッシュされる形でJANSSONがハードにプレイしている。
J"LATOUR"
 3曲目のJANSSONのオリジナル。このアルバムを象徴するかのようなハードな演奏で終わる。

このアルバムでは、息子と教え子のサポートを受けてハイテンションのJANSSONの演奏が聴ける。息子を前にして、おたおたした演奏は見せられまい。そういう意味でもJANSSONのこのアルバムに賭ける意気込みというのが伝わってくる。その想いは最後の"LATOUR"に集約している。
今回のアルバムではJANSSONの唸り声までもがきっちりと捉えられている。ひょっとして、意識的な録音であったかもしれない。  
この10月にはギターのULF WAKENIUSを加えたカルテットでの来日公演が組まれている。詳細は下記のサイトで。   (2010.09.22)

試聴サイト : http://www.lars.jp/cd-whatsnew.html



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独断的JAZZ批評 651.