独断的JAZZ批評 450.

ALEX RIEL
理屈ぬきに楽しめたら、それでOKだ
"THE HIGH AND THE MIGHTY"
HEINE HANSEN(p), JESPER LUNDGAARD(b), ALEX RIEL(ds)
2005年10月 ライヴ録音 (COWBELLMUSIC : 35)

ALEX RIELがリーダーのこのトリオ・アルバムは2003年と2004年にスタジオ録音された"WHAT HAPPENED ?"以来の2枚目にあたる。言わずもがなであるが、RIELとLUNDGAARDといえば、押しも押されもせぬヨーロッパの今や重鎮。そこに未だ若き無名のピアニストがトリオを組んだのが前回のアルバムだ。
そして、同じメンバーで2005年にCOPENHAGEN JAZZHOUSEで吹き込まれたのがこのアルバムだ。リラックスした和気藹々の雰囲気の中で楽しげな演奏が繰り広げられる。


@"LONG AGO AND FAR AWAY" 
こういうのを非の打ち所のないリズム陣というのだろう。安定したドラムスとベースの4ビートは、それだけで躍動感が湧いてくる。そこに小粋なフレーズでピアノが絡むからこれは楽しい。HEINE HANSENは未だ若いと思うのだが、結構、老練な渋いピアノを弾く。
A"EMILY" 
まあまあ、このシンバリングを聴いてくれ!こういうシンバリングって誰にでも簡単に出来そうで、実は出来ない。これがドラマーの品質だと思ったりする。最近掲載のレビューではMORTEN LUND(JAZZ批評 447.)やBRIAN BRADE(JAZZ批評 448.)が叩いていたけど、いずれもシンバリングが上手いというのが共通項だ。
B"U-TURN" 
C"I CAN'T GET STARTED" 
D"THE SHADOW OF YOUR SMILE / THE CUCKOO SONG" 
E"HI-LILI, HI-LO" 
LUNDGAARDの長めのソロが用意されている。ライヴという環境も手伝ってサービス精神旺盛でありながらも押さえどころはしっかり押さえている。流石だ。
F"IDAHO" 
今度はRIELがサービス精神を発揮。兎に角、ドラムスが歌っているんだなあ。このドラム・ソロを聴きながら、誰もが"IDAHO"のメロディを口ずさむだろう。
G"BODY AND SOUL" 
H"THE HIGH AND THE MIGHTY" 
ベースがテーマを執る。サクサクとしたRIELのブラッシュに乗って心地良くスウィング。
I"THE WAY YOU LOOK TONIGHT" 
高速4ビート。RIELのドラミングを聴いているだけで楽しいし、LUNDGAARDのウォーキングを聴いているだけでも楽しい。そういう意味ではピアノがもうひとつ。
J"SMILE" ここでもテ
ーマはベースが執っている。

かつて、JAN LUNDGRENの"A SWINGING RENDEZVOUS"(JAZZ批評 433.)では「役者が違う!」と書いた。このアルバム、ピアノを除くサポート陣がこのアルバムと同じLUNDGAARDとRIELであった。ピアノが違うと音楽もこれほど変わる。HEINE HANSENもいいピアニストだとは思うが、JAN LUNDGRENと比べるのは未だ早い。まさに「役者が違う!」のだ。
HANSENのピアノはまだまだLUNDGAARDやRIELと対等に肩を並べているとは言い難い。だからといって焦る必要はない。素質は十分だし、やがて時間が解決してくれるだろう。
このアルバムはCOPENHAGEN JAZZHOUSEでのライヴということもあって、プレイヤーたちも楽しげである。リスナーを意識したご愛嬌も飛び出して、サービス精神も旺盛なアルバムとなった。あくまでも、リラックスした楽しいアルバムなのだ。こういうアルバムに緊迫感や緊張感を求めるのはナンセンス。理屈ぬきに楽しめたら、それでOKだ。   (2007.12.04)