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『四谷怪談』['65] | |||||
監督 豊田四郎
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二十二年前に、中川信夫監督作品の『東海道四谷怪談』での、天知茂の演じる民谷伊右衛門の愚かな世迷いぶりが絶妙と書いていたら、仲代ファンの先輩映友から仲代達矢の伊右衛門を是非観るよう言われて幾年月、ようやく宿題を片付ける機会を得た。 先ごろ『陽炎』で仲代達矢を観て惹かれたこともあって、丁度よい機会だった。全く呆れるほどの極悪伊右衛門ぶりに恐れ入った。最低だな、こいつ…と思いながら観ていた果てには、悪よりもむしろ“仕官亡者の哀れさ”が漂ってきて、やられたなと思った。 筋の運びも、ほぼ全ての主要キャラクターの人物造形も、なんじゃこりゃのトンデモぶりで、もう少し尤もらしく運ぶことも人物造形を果たすことも出来るはずなのに、なに故これほど変てこりんにしてあるのだろうと訝しむ程だった。他方で、画面造形は実に見事に絵になっていて感心しきりだった。このバランスの悪さは何なんだろうと妙に落ち着かない感じが、この何ともヘンな人物相関には相応しかったのかもしれない。 お岩(岡田茉莉子)は怖いよりも専ら哀れで、最も怖いのは、おまき(淡路恵子)だったように思う。最も不可解なのは、おそで(池内淳子)。最も罪深いのがお梅(大空真弓)だった気がする。おそでと直助(中村勘三郎)の珍妙な関係がちょいと面白かった。 すると件の先輩から「お勧めしましたかねえ? 私が観たいのは、若いころの仲代達矢主演の俳優座舞台の四谷怪談(記録映像はないようです)で、豊田監督のものは、海外版DVDを持っていますが、同じ仲代達矢主演でも、豪華な共演陣でも、なんとも凡庸な演出のせいで全く面白くなかったのですが、お勧めしたとは申し訳ない」と連絡があったが、僕は勧めてもらってよかったと思っている。 録画を貸してくれた高校時分の映画部長からは「やはり文芸映画ですよ。様式美 美しくこけおどしなく、じっくりとお岩さんの悲劇と伊右衛門の悪行、滅びまでを描きます。…僕はこの映画の変に耽美な画像にずいぶんと惹かれたよ。」とのコメントが寄せられたのだが、僕も同感で、撮影・照明が天晴れで、実に見事な画面だったと思う。また「40年近く前に浅草東宝のオールナイトで観たきりですね。ラストの仲代達矢の「首が飛んでも動いて見せるわ」だけ記憶しています。」と寄せてくれた映友もいたので、ぜひ再見するよう勧めた。 | |||||
by ヤマ '25. 3.18. 日本映画専門チャンネル録画 | |||||
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