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『くノ一忍法』['64]&『くノ一化粧』['64] | |||||
監督 中島貞夫
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先に観た『くノ一忍法』は、先頃『真田幸村の謀略』['79]を観て、その破天荒さと心意気になかなか響いてくるものがあったことから、同じ中島監督の真田幸村ものとして楽しみに観た、六十年前の成人指定映画だ。真田十勇士ならぬ真田五忍女ともいうべき“くノ一”の話だが、幸村の謀略により吸壺の術を使って秀頼の子種を宿した信濃くノ一以上に軸に据えられていたのが秀頼の正室千姫(野川由美子)だったように思う。豊臣・徳川の争いのなか、祖父家康(曽我廼家明蝶)の謀略によって過酷な境遇に置かれ、実家が目の敵とする男に惚れた女の苦衷を吐露しつつ、女の身体を道具として扱う祖父家康を含めた「身勝手な男どもへの女としての怒り」を描いていたことに驚いた。山田風太郎の原作は未読ながら、かなりの潤色が施されているような気がしなくもない。脚本は、倉本聰と中島貞夫の共同脚本だ。小島剛夕の時代劇劇画に登場する美女のような趣で登場する野川由美子が、まさに雪女の似合いそうな強い印象を残していた気がする。ラストカットは、千姫の意味深長なる笑みによって締められていた。 忍びの技で意表を突かれたのが、次作のタイトルにもなっている“忍法くノ一化粧”で、信濃くノ一の術ではなく薄墨友康(小沢昭一)の使う伊賀忍法だった。最も貞操堅固なる女性も蕩けさせ、その忘我の隙に女体に乗り移るという荒業で、床技として見せずに衆人環視のもとに披露する術として映し出していた場面に感心した。くノ一お眉(芳村真理)が繰り出す“信濃忍法幻菩薩”というのも、五人の女性(【OSミュージック】星ひとみ、久美エリカ、右京ナオミ、阿井美紗子、ミッチー・佐藤)が天女の如き薄衣を纏って半裸で踊る幻術で、思いのほかアーティスティックで見栄えがしたように思う。呆気なく仕留められていたのは誰だったか、その見目麗しい技のほうに観惚れて失念していたが、後から確かめると、千姫に恋慕した坂崎出羽守(露口茂)の使者たちだった。なるほど成人指定映画らしい趣向だと思いつつも、十八年後となる'80年代のテレビ朝日系「土曜ワイド劇場」の江戸川乱歩の美女シリーズ第17作『天国と地獄の美女』['82]のほうが、'60年代の成人映画を凌ぐ大盤振る舞いを見せる正月特番だったように思う。 薄墨友康が討たれたのは、絶命寸前にお奈美(葵三津子)の掛けた“信濃忍法月の輪”によって正体を暴かれたからだったが、お喬(金子勝美)を“花開きの術”に掛けた雨巻一天斎(山城新伍)は、返し技の“忍法天女貝”で絞め上げられ、お眉の手裏剣に倒れていた。圧巻だったのは、やはりお瑶(三島ゆり子)の使う“信濃忍法筒涸らし”だろう。血の一滴も残らぬほどに精を吸い尽くす信濃くノ一の秘技だったが、DVDパッケージに記された“筒涸らし”を読むまでは“露枯らし”かと思っていた。そうか筒かと笑ってしまった。「花開き」も実は「穴開き」らしい。だが、他にも忍法名を変えているようで、それなら映画では「露枯らし」でいいのではないかと思えてきた。 窮地に追い込まれたお眉が、孕んだ子の心音を聴き分ける般若寺風伯(吉田義夫)から逃れるために、風伯の“忍法日影月影”で操られた家光の乳母たる阿福(木暮実千代)の腹に胎児を移した“忍法宿借り”なる術にも唖然とし、笑ってしまった。“忍法雪の舞”やら“羽衣”を使ってお瑶もお眉も倒した七斗捨兵衛(待田京介)はお眉とは相討ちだったが、最後に、命と引き換えた出産にまで何とか漕ぎつけるお由比(中原早苗)の使った“夢幻泡影”は、服部半蔵(品川隆二)の配下を幾人も倒す強力技だった。そのうえで、千姫に空けて家康の命令に背くことになる百夜車の使い手である鼓隼人(大木実)を操った千姫こそが、何の忍法も使わぬ最大の手練れだったというオチにニヤリとさせられるエンディングだったように思う。 翌日観た同年作の『くノ一化粧』は所詮、二番煎じなので、期待せずに臨んだつもりだったが、映友からの「原作は「外道忍法帖」というのですが、こちらは原作自体もさほど面白くはないんですよ。想定以上にハードルを下げてご覧くださいませ。」との助言に従い、かなりハードルを下げていたつもりながら、遊女の伽羅を演じた春川ますみ以外、サッパリだった。実に見事に呆れるほどにサッパリだった。 五人から六人に増えていた信濃くノ一ならぬ大友くノ一にしても伊賀者にしても、キャラクターも忍術もまるで立っておらず、僅か90分の作品なのに、すっかり倦んでしまった。裸体露出も前作に比べて出し惜しみが著しく、肩から足までが殆どでせいぜいで胸元あたりを覗かせるくらいだ。音楽を江戸川乱歩美女シリーズの鏑木創から山本直純に替えてめっぽう明るくし、コメディ色を打ち出した路線転換が大外れに終わっていたように思う。 いくら原作が“外道”だからといって、これほど外しては、千姫ならぬ扇千代を演じた露口茂も、千姫ならぬ天姫を演じた弓恵子も報われない。チャップリンの『街の灯』の花売り娘のようには気づかない盆暗の天草扇千代を追う伽羅を制して「所詮忍者も男で御座れば女選ぶは面の良し悪し」などと言う服部半助(多々良純)の股間を「何言ってんだい!」と蹴り上げて終えるくらいでは溜飲の下がらない出来だった気がする。脚本は、前作に更に金子武郎が加わった三人による共同脚本だった。 | |||||
by ヤマ '25. 3.10,11. TOEIch録画 | |||||
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