『ウィキッド ふたりの魔女』(Wicked: Part I)['24]
監督 ジョン・M・チュウ

 またぞろ「オズの魔法使い」の派生作品かと思いながら観始めたのだが、僕の好むミュージカル仕立てで、画面の造形もキャラクターの人物造形もなかなか見事で、大いに感心した。part1との表示に意表を突かれ、何だ完結させないのかと不満を覚えたものの、これはたとえ三部構成になっても最後まで観ようと思った。観る機会を二年前に得たウィズ['78]との段違いに恐れ入った。エンドロールを眺めていたら、クレジットされたダンサーの数だけでも三面を要していて、五十人ではきかない人数だった。スケール感のある作品だったように思う。

 八十五年前のオズの魔法使['39]のドロシーたち一行の後ろ姿を思わせるカットにニヤリとし、『オズ はじまりの戦い』['13]を想起させるオズの魔法使い(ジェフ・ゴールドプラム)によるメカニカルな仕掛けにニンマリし、いろいろな色替えをシミュレートして黄色い煉瓦の道にする場面にほくそ笑んだ。後の善い魔女グリンダ(アリアナ・グランデ)と後の悪い魔女エルファバ(シンシア・エリヴォ)との意表を突く関係性が面白く、とりわけお嬢さん育ちの我儘娘ながら邪気なく素直なガリンダの造形が好い。

 才能も実力もなく人気頼りのガリンダと、破格のポテンシャルを持ちながら根暗で孤独なエルファバの対照と、二人が相互に引き立て合って力を得ていく過程が好い。王子フィエロ(ジョナサン・ベイリー)の一見したところの浅薄さとは異なる人物像やガリンダにあしらわれて始まったボック(イーサン・スレイター)とエルファバの妹ネッサ(マリッサ・ボーディ)の微妙な関係の描き方も興味深く、今後が楽しみだ。

 オズの魔法使いの影で最も強い悪意を体現していたのが、大魔女のモリブル先生(ミシェル・ヨー)で、現実社会でも実にありがちな構図だ。デマゴーグによる扇動こそが最も大きな社会悪であることを窺わせていたあたりに、現実社会における作り手の問題意識が現われているように感じた。
by ヤマ

'25. 3.23. キネマM



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