『ジャージー・ボーイズ』(Jersey Boys)['14]
監督 クリント・イーストウッド

 これが『ジャージー・ボーイズ』か。グラン・トリノともども当地では上映されていなかったイーストウッド作品で、公開当時、あたご劇場にリクエストしたら、うちじゃ出してもらえないと館主がぼやいていたワーナー作品だ。自主上映などという“御座敷興行”に係るわけがなく、長年、未見のまま来ていた。音楽ものだとは思っていたが、勝手にバードのようなジャズ映画だろうと思っていたら、フランキー・ヴァリ&フォー・シーズンズだった。そう言えば、秀作センチメンタル・アドベンチャーはカントリーだったなと、前期ベスト7の選出で第2位に挙げた作品を思い起こした。

 フォー・ラヴァーズから改名したフォー・シーズンズのメンバー四人が語るフランキー・ヴァリ&フォー・シーズンズの物語には、かなり騙りも含まれていそうに感じたが、トミー(ヴィンセント・ピアッツァ)やニック(マイケル・ロメンダ)が前科者だったのは、本当なのだろうか。マフィアの顔役(クリストファー・ウォーケン)との繋がりの深さも描かれていた。フランキー(ジョン・ロイド・ヤング)以上の立役者は自分だとボブ・ゴーディオ(エリック・バーゲン)が自負していたが、シェリー君の瞳に恋してる(Can't Take My Eyes Off Youの作曲者なら、それも宜なるかなという気がする。

 印象深かったのは、フランキーの仁義というか義理堅さだった。成功しても無法者的な体質の抜けないトミーと対照的に、両者でマフィア気質の明暗部を分け合って体現していたような気がする。厳しい競争と饗応に晒される業界に身を置いて打ち込むなかでの仕事と家庭の両立は、なかなか困難なものだろうとは容易に推察できるが、フランキーもまた難儀を重ねていて、Ray/レイに描かれたレイ・チャールズを思い起こしたりした。1951年から四十年に及ぶアメリカのショービジネス界や風俗を丁寧に再現した美術と、楽曲への郷愁が心に残る作品だった。
by ヤマ

'24. 3. 3. BD観賞



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