『百万長者と結婚する方法』(How To Marry A Millionaire)['53]
監督 ジーン・ネグレスコ

 マリリン・モンローが、ど近眼娘のポーラを演じた '50年代の婚活コメディだ。十年ほど前にBS11の録画で観て以来となるが、あいにく映画日誌にもしていなかったことから、再見したものだ。

 前回まるでオペラの序曲を思わせる仰々しい開幕で呆気にとられたが、本編が始まってみると、さほどの洒脱さはなく、まぁ、こんなもんかねぇって、感じ(笑)。とメモしていた部分は、予め覚悟が出来ていたからか、幾分ましなふうに感じられはしたものの、“利口そうに構えてはいても矢張り女の浅知恵”のようなものをコメディに仕立てた感じは否めない気がした。十年前に観た際にマリリン・モンローだって、他にもっともっと輝いている作品があるもんなぁ。と零していた点に関して新たなる発見もなく、その割に作品が名高いように感じられるのは、もしかするとキャッチーなタイトルのせいなのかもしれないと思った。

 仲間に能書きを垂れるリーダーのシャッツィ(ローレン・バコール)にしても、ポーラにしても、モデル仲間からクレイジーを意味する異名で呼ばれているロコ(ベティ・グレイブル)にしても、揃いも揃って狙った男とは違う相手との結婚に至る「人生、計画通りに事は運ばないとしたものだ」を描きつつ、結果オーライのハッピーエンドに収めているあたりは、'50年代ハリウッドの面目だと思う。だが、ブルックマン(キャメロン・ミッチェル)がポケットから無造作に出した1000ドル札を丸めた札束に三人娘が卒倒したことに対して諸君、妻たちに乾杯!で締める最後のオチに前回苦笑させられた金満誇示のラストには、やはり素直に笑えないものがあるような気がした。

 人生、計画通りに事は運ばないとしたものだというエピソードとして最も可笑しかったものは、妻帯者ながらロコを別荘に誘って楽しもうとしながら、麻疹をうつされるは、森林警備隊員エベン(ロリー・カルホーン)に横取りされるは、で散々だった挙句、人目につかぬよう迂回路をとってまで慎重にお忍び旅行の帰路を画策し、頭さえ使えれば人生は思い通りに運ぶ。どんな状況になろうと人間は自らの運命の支配者だなどと豪語しながら、敢えて遠回りして渡ったワシントン橋の五千万台目の通行記念車両となってメディア取材を受け、寄り添うロコとの写真を撮られ、大々的に知られることになる事業家ウォルド・ブルースター(フレッド・クラーク)の顛末だった。




推薦テクスト:「やっぱり映画がえいがねぇ!」より
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by ヤマ

'24. 2.25. DVD観賞



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