『スリーデイズ』(The Next Three Days)
監督 ポール・ハギス


ヤマのMixi日記 2012年02月06日23:57

 ほんまかいなっつうようなお話だったが、地図帳を広げてベネズエラを確かめたときのジョージ(ブライアン・デネヒー)の表情が良かったな〜。あれで作品の値打ちがグンとアップした感じ。

 別の世界に行ってしまったように思える息子ジョン(ラッセル・クロウ)と孫のために、恐らくはララ(エリザベス・バンクス)に面会して頼んだんだろうな。ララが「あなたは一度も無実かどうか訊かないわね」と夫ジョンに言ったのは、多分そういうことだったのだろう。

 ところが、ジョージの想像を超えて、ジョンは本当に別の世界に行ってしまった。その思い掛けなさの半信半疑ゆえに、息子の財布で盗み見た行き先を地図帳で探したのだろう。「よくやった、でかしたぞ!」との声が聞こえるような顔だった。

 ふとゴールデンスランバーの父親を思い出した。ドン・キホーテ、万歳だ!



ケイケイさんの掲示板にて

2012年2月9日(木)06時11分
ヤマ(管理人)
 ケイケイさん、こんにちは。
 『この愛のために撃て』『すべて彼女のために』も未見で、オリジナルとの対照不可の僕でしたが、むしろハギスらしいと思える人物造形の豊かさを味わうことができました(満足)。

(ケイケイさん)
 ヤマさん、おはようございます。
 私もすごいなぁと思っていたんですが、このテイストは元作から受け継ぐもんなんですって。

ヤマ(管理人)
 そうか、ハギスゆえでもなかったということなんですね。


-------ケイケイさんの映画日記を読んで-------

ヤマ(管理人)
 僕の場合、とにかく妻を一心に信ずる夫の姿に、まず心打たれたわけではありませんが(笑)、特にジョンの父親が印象深く、告発のとき同様、ハギスは父と息子の描き方が秀逸に共感至極でありました。ブライアン・デネヒー、光ってましたよねー。

(ケイケイさん)
 打たれて下さいよ〜、あんな素敵な旦那さんいないじゃないですか〜。あれなら奥さんも、どんなに辛くても頑張れるわ(きっぱり)。

ヤマ(管理人)
 そりゃそうでしょーが、あそこまでは、とても真似できませんもん、正直(苦笑)。打たれるよりも“ほんまかいな”が先立っちまいます(たは)。

(ケイケイさん)
 そんなほんまの事ばっかり言ってはいけません(笑)。

ヤマ(管理人)
 根が正直なもんで(笑)。っていうか、無理ができないタチでね(あは)。

(ケイケイさん)
 ところで、デネヒーのあの場面、あそこは母親なら止める止めないじゃなく、息子に真意を聞いてしまいますね、絶対。

ヤマ(管理人)
 僕は、あの息子の出国に気づいた場面以上に、彼の想像の域を超えて、ジョンが本当に別の世界に行ってしまったことの思い掛けなさの半信半疑ゆえに、息子の財布で盗み見た行き先を地図帳で探した場面ににんまりしました。
 「よくやった、でかしたぞ!」との声が聞こえるような顔でしたね。

(ケイケイさん)
 なるほどねぇ。
 そういう思考は母親にはないですね。やはり寂しさと心配が先に立ちますから。

ヤマ(管理人)
 うん、うん。そのへんは、よく判ります。

(ケイケイさん)
 潔くて、ちょっと羨ましいですね。

ヤマ(管理人)
 これは男親の領域ですからね!(ふふ)

(ケイケイさん)
 父親と母親の違いをくっきり浮かび上がらせていたし、普段疎遠でも、幾つになっても、親はやっぱり子供を見守らなくちゃなと思いました。世界中が子供の敵になっても、親だけは味方でなくちゃと思いますね。

ヤマ(管理人)
 そうです、そうです。だから僕、思わずゴールデンスランバーの父親を思い出したんですよ。僕には、ジョンよりジョージの映画だったのかも(笑)。

(ケイケイさん)
 『ゴールデンスランバー』もそういう内容だったんですね。見逃して残念。

ヤマ(管理人)
 ケイケイさんなら、触発されるものが一杯一杯ある作品ですよ。
 あとただ逃亡シーンになると、ラッソー起用が裏目には笑いながらも、確かにと納得しました。そう言えば、僕もそんなふうに感じていたような気がします(笑)。

(ケイケイさん)
 でしょ? 強そうに見えるので、せめてサングラスは外して欲しかった(笑)。

ヤマ(管理人)
 ま、僕にとっては、元々ほんまかいなっつうようなお話ではあるのですが(笑)。
 でも、ほんと、おっしゃるように“お見事”な作品でしたよね。

(ケイケイさん)
 あんまり期待してなかったんですが、鑑賞後は気分が良くて、テンションも上がりました(笑)。

ヤマ(管理人)
 同感です。僕が観た「あたご劇場」は男性客ばかりの3人きりでしたが、ちょうど居合わせた知人に訊いても満足そうでした。

(ケイケイさん)
 男性にも女性にも好感が持てる作りでしたね。私は日曜日に観ましたが、観客は満員でした。
 こういう質の良い娯楽作は、昔はハリウッドにはいっぱいありましたよね。

ヤマ(管理人)
 ほんに、ほんに。


-------ジョージは、ララとの面会に行ったのか-------

ヤマ(管理人)
 ところで僕は、ララがあなたは一度も無実かどうか訊かないわねと夫ジョンに言ったのは、恐らくはジョージがララに面会して、別の世界に行ってしまったように思える息子ジョンと孫のために、法廷闘争の断念を促すよう頼んだことがあってのことだろうと観ているのですが、ケイケイさんは、どう思われますか?

(ケイケイさん)
 ヤマさんの感想を拝読して、びっくりしたのがこの箇所でした。
 私は自分を信じてくれる夫に対しての、素直な感謝だと思っていました。ジョージは一度も面会には行ってないと思います。

ヤマ(管理人)
 息子が別の世界に行ってしまったようにジョージが感じているというのは、ララがジョージから聞いた話としてジョンに伝えていたから、おそらく面会に行っているはずです。

(ケイケイさん)
 だいぶ以前に観たので、私の記憶も曖昧なのですが、何故か両親はララには会いに行ったという感覚はなかったですね。それ以前に、ジョンと父親は疎遠な感じだと説明もあったようですし。

ヤマ(管理人)
 ジョージが警察に対して言っていた台詞ですね。言葉通りとも限りませんが、ララが逮捕される事件が起こる前は、そうそう頻繁に接触があったわけではないでしょうね。
 でもって、別世界に行ってしまったように感じるということを単にボヤくためだけにララに会いに行くようなジョージではないはずで、まさにララに頼み事があればこそ、足を運んで行ったのだろうと思いました。

(ケイケイさん)
 私はそれすらしない父親のように感じてました。
 威厳があるけど、決して威圧的ではなく、見守っている人かな?

ヤマ(管理人)
 息子に対する心配だけなら、きっとそうするでしょうが、幼い孫が絡んでくるとそんなふうに澄ましてもいられなくなるはずというのは、たぶん僕自身の心境が投影されているのでしょうね(笑)。

(ケイケイさん)
 なるほどねぇ。
 でも、そういうヤマさんの私生活が反映された感想が聞けるのも、お話していて、楽しみの一つですよ(^J^)

ヤマ(管理人)
 お互い様ですよ(にま)。お茶屋さんの言う“身から出た感想”ですよね。
 そこで、じゃあ、その頼み事ってのは何だろうってのを想ううえで、ララがジョンに言った「あなたは一度も無実かどうか訊かないわね」が効いてきたんですよ。ジョージはララに、それを訊ねたのち、無実かどうかの問題ではなくて、息子と孫のために今の状況を続かせないよう頼んだのだろうと思います。
 だから、ララは「あなたは…」と言ったかと。そして、夫以上に、息子のために、自分にかまけさせないよう図るべきではと思案したのではないかと推察したんですけどね、僕は。

(ケイケイさん)
 う〜ん、この辺はどうかなぁ?
 あのお父さんがそういう手の込んだ事をする人には思えなかったです。

ヤマ(管理人)
 別に手の込んだ事ではなく、自分が言うより当のララから言ってもらうほうが有効だと考えたというか、父親の自分が言ったからって、その言うとおりにするような息子ではないとの確信があり、…

(ケイケイさん)
 うんうん、息子というのは、そういうところはありますね。

ヤマ(管理人)
 でしょ。だったら、直接言うのは、言うことで気を晴らすって目的でなければ、無益ですよね。
 で、ジョージとしては、見るに見兼ねる状況のなかで何とかしてやりたいと思ったのだろうと解しましたが、もちろん行間の部分であって定かじゃありません。

(ケイケイさん)
 それでも、嫁にではなく、息子に真正面から言えないですかね?

ヤマ(管理人)
 ジョージは、けっこう思慮深い父親だというふうに感じていましたね、僕。つまり、物事を“成算”の観点から考える男であって、短絡的な反応は見せない人物だから、息子の財布のなかに航空券を見つけても、意味なく問い質すようなことはせず、後からひっそりと地図帳を広げて確認するような姿を見せていたのだろうと。息子に対して言わないのは、“言えない”からではなく、上にも書いたように、成算の点から、あまり有効ではないと判断したからだろうと思ってます。

(ケイケイさん)
 それで言えば、あの嫁なら、義父の懇願があったとしても、夫婦の事だと断ったと思います。

ヤマ(管理人)
 夫婦のことならね。でも、息子の状況を持ち出されると母親は揺れると思いました。

(ケイケイさん)
 後で書きますけど、このあたりのララに対する見方は、私と違いますね。

ヤマ(管理人)
 ほぅ(興味津々)。僕は、先にも書いたように、ジョンの取った行動に対して“ほんまかいな”感のほうが強いですが、何かするということにおいて、息子のためと妻のためなら、妻のほうを取りますよ。息子に対しては、自分の道は自分で切り開け感のほうが強いですから。

(ケイケイさん)
 でも切り開くには、あの息子は小さ過ぎるでしょう? それでもですか?
 必ず後から迎えに行くという決意があるから?

ヤマ(管理人)
 そうです。それも、最初から置いていくつもりではなく、ちゃんと足がつかない配慮を加えたうえで、確かな人物に預け、もしものときの場合の対策として両親の連絡先メモも持たせてました。あの年で、まるまる放り出すつもりでは無論ないのですが、基本的な心情として、父親は息子に対して“独り立ち”を願うものです。

(ケイケイさん)
 それは私もそうですね。でも確かに母親は、いつまでも自分を必要としてくれるほうに、喜びを覚える人も多いみたい。

ヤマ(管理人)
 でしょ。そんな感じが強いように僕は感じてますね。特に、息子に対しては。

(ケイケイさん)
 娘じゃないですかね? 一卵性親子というのは、だいたい母娘でしょう? 特に結婚すると顕著にそれが出る人がいて、娘の育児を手伝うため、引越しまでする人がいるそうですよ。

ヤマ(管理人)
 うちでも時々話には出ますよ(笑)。うちの場合、息子ですから、娘の育児を手伝うためではなく、専ら、孫の側にいて刻刻変化する孫の様子を気安く覗きたいからのようですが。

(ケイケイさん)
 息子さんご夫婦が賛同されるなら、いいんじゃないですか?
 私の書いたケースは、いつまでもお互い自立せず、母と娘が依存しあうケースです。

ヤマ(管理人)
 それはともかく、息子というものは、自分が懸命に取り組んでいることに対して、父親から忠告されて考え直す気はないけど、当の相手である妻から言われれば、かなり揺れると思います。ですから、ジョージもそんなふうに考えたはずだと思っちゃうんでしょうね。

(ケイケイさん)
 もちろん、彼女は自分が潔白なのですから何も謝る必要はないんですけど、そうは言っても、今の状況に対して、夫に申し訳ないという風情もなかった人ですから。たとえ義父の頼みでも、自分の意思に添えないなら、一蹴しませんかね?
 そういう気の強さを感じさせる造形だったと思います。

ヤマ(管理人)
 気の強さについては異論ありません。
 上司との喧嘩といい、夫に色目を使うと感じさせた相手への直截な物言いといい、そして何よりも、たとえやむ無くであれ、息子を置き去りにして出国しようとした夫に対する異議申し立ての仕方に鮮烈に顕れていましたね。でも、だからこそ、“義父の頼み”ということではなく、“息子さておき”の状況に対して母親としての自身の選択を迫られたら、揺れてしまうように思いました。

(ケイケイさん)
 この時点では、ジョンは息子は置き去りではなく、連れていく方針だったでしょう?
 のちの展開で、時間切れになり息子は置いて行こうとしたわけだから、「さておき」ではないんじゃないかなぁ。それとジョンから脱獄の計画を聞かされて、ララは本当にびっくりしていた感じがしました。だから、事前に義父から打ち明けられていたのでは?というヤマさんの感想にびっくりしたんです。

ヤマ(管理人)
 僕の書き方が適切でなかったのかな、ちょっと混乱があるようですね。“息子さておき”というのは、脱獄に際しての話ではなく、ジョージから見て、ジョンが妻の冤罪を晴らそうと躍起になっていて、別の世界に行ったように感じられ、息子をさておいてララのためだけに奔走している状況にあるという意味です。

(ケイケイさん)
 了解しました。

ヤマ(管理人)
 また、事前にジョージがララに脱獄計画を伝えていたとは僕も思ってませんよ。ジョージがララに面会したと思われるのは、ララがジョージから聞いた話として息子が別の世界に行ってしまったようにお義父さんが感じているという話をジョンにしたからであって、その内容は脱獄計画だったとは思ってません。ジョージがジョンの財布のなかにベネズエラ行きのチケットを見つけたのは、そういった事々の後で、いよいよ決行の目前という時点でしたからね。それも、チケットだけでは脱獄とまでは思ってなくて、はてな感覚のほうが主で、脱獄計画というのは、ジョンたちが脱獄を敢行してから知ったことだろうと察してます。


-------ジョンの妻ララの人物像と自殺未遂の動機-------

(ケイケイさん)
 ララという人は、子供は母親が我が手で育てなければ、絶対ダメだと信念を持っている人だと思うんですね。だからこのまま監獄に繋がれた状態で十数年と言うのは、死ねと言われたも同然だと思うんです。だから自殺を図った。なので、仮に義父の懇願があっても、このままの状態でいろと言われるなら、私は脱獄に賭ける人だと思います。

ヤマ(管理人)
 上記の次第ですから、ジョージとの面会時点では、ララに脱獄という選択肢の発想はなかったと思いますよ。揺れるのではないかというのは、これだけジョンが頑張っても無実を勝ち取ることができず、冤罪を晴らせる見込みがないとなれば、もうジョンに諦めさせてやってくれないかという頼みで、ララのほうは、それを受けて揺れたわけですよ。

(ケイケイさん)
 それでもやっぱりララに対して見方は違いますね(笑)。義父がヤマさんの仮定通り頼んだとして、今度は「家庭の問題」として一蹴したと思います。彼女の造形から、子供の幸せより、母としての自分の思いを最優先させる人に感じました。

ヤマ(管理人)
 ほぅ。

(ケイケイさん)
 自分が我が手で育ててこそ、子供は幸せだという母としての信念が伺えましたもん。だから、夫に諦めさせるなんて、そんな事ないと思います。

ヤマ(管理人)
 母親のその揺るぎなき確信って、どこから来るんでしょうね(笑)。確かに、そういうタイプって、けっこういそうですね。

(ケイケイさん)
 人によるでしょうけど。やっぱりお腹を痛めた我が子という感覚でしょうか?

ヤマ(管理人)
 確かに、他の何にも増して“揺るぎない事実”ですもんね。
 でも僕は、やってもないことをやったと夫に偽って諦めさせるのは耐え難くて、夫に嘘をつかずに自分の冤罪晴らしを諦めさせるには、これしかないって思いで自殺を図ったのだという気がしました。

(ケイケイさん)
 そんな殊勝な人じゃないと思うな。というか、そんなロマンチックでヤワな神経じゃ(すみません(^^ゞ)、あの状態で出獄の夢を捨てない母親は出来ないと思います。あの自殺未遂は、もう出獄できないと思っての自暴自棄だと思います。

ヤマ(管理人)
 僕は、自暴自棄とまでは言いませんが、絶望が前提にあるのは同感です。

(ケイケイさん)
 それもこれも子供のため。夫も愛し、感謝してもいるでしょうけど、多分二の次でしょう。そういう母であったから、逃亡の際の捨て身のシーンが生きてくるんだと思います。

ヤマ(管理人)
 この受け止めについては、僕も同じです。となれば、ララにおいての“子供のため”の解し方が違ってきてるんですね。

(ケイケイさん)
 そうみたいですね。

ヤマ(管理人)
 もはや冤罪を晴らすことへの夢が断たれたように感じざるを得なくなるなかで、まさに子供のために、妻の冤罪晴らしに没頭する夫の目を子供に集中させようとしたと僕は解し、ケイケイさんは、子供のためには母親たる自分が側にいることが不可欠だから、それが叶わぬとなれば、「死ねと言われたも同然だと思」っての自殺というわけですよね。

(ケイケイさん)
 その通りです。
 例えば子供の身代わりになって死ぬなら、喜んで死ぬ人に感じましたが、人から言われて、自分の信念を曲げる人には思えませんでした。我は強い人のはずで、そういう描き方でしたし。

ヤマ(管理人)
 我の強い人という点に、異議はありません。だから、人に言われてどうということではなく、ジョージから得た情報を元に、それこそ自分の意思として選択したのだと思います。そうでなければ、自殺などに向かうようなヤワな女性じゃなかろうと。だから、自暴自棄とまでは言いませんが、と書いたのでした。
 二つの受け止めにおける、母親としての思いの強さの向い方の差異が面白く、興味深いですね。

(ケイケイさん)
 そうですねぇ〜。でもヤマさんは少数派だと思いますよ(笑)。

ヤマ(管理人)
 ララがジョンとの面会のなかで「息子が別の世界に行ってしまったように感じると、お義父さんが言ってた」と話していたことが観る側にとってどれだけ大きく作用してくるかの違いだろうと思うのですが、少数派なのかもしれませんね(笑)。

(ケイケイさん)
 そんなシーンがありましたっけ? だいぶ前なので、失念しています。では面会には行ったということですね。

ヤマ(管理人)
 電話や手紙もありえますので面会とは限りませんが、ジョージなら、面会だろうと僕は思いました。でも、この台詞に対して電話や手紙を想起する人は、それこそ少数派でしょうから、みなさんに面会の印象が残ってないとなると、台詞自体があったのかどうか、自信がなくなってきてますよ(たは)。僕、ときどき台詞も捏造するみたいですから(あは)。でも、僕にとっての『スリーデイズ』は、そういう作品でした。

(ケイケイさん)
 捏造ですか(笑)。今回は色々な側面から楽しめて、ヤマさんにはとてもお得な作品だったようですね。

ヤマ(管理人)
 そうですね。この台詞の指していた“別世界”と実際にしでかしたベネズエラという“別世界”との対照も効いていて、さすが巧い脚本だなぁとか思いましたし、僕にとっては、強く作用してくる台詞だったんですよ。

 ところで、さきほど夫に嘘をつかずに自分の冤罪晴らしを諦めさせるには、これしかないって思いで自殺を図ったとの僕の受け止めに対しそんな殊勝な人じゃないと思うとおっしゃってましたが、このときのララの思いは殊勝というよりも、むしろ絶望だと思うのですが、なぜ殊勝なんですか?

(ケイケイさん)
 その絶望がどこから来るかというと、舅の助言というか、懇願でしょう? あっさり受け入れる人には、とても見えませんでした。舅の頼みを聞くような、殊勝な人には思えない、という意味です。

ヤマ(管理人)
 いえいえ絶望の第一は、舅の言葉などではありませんよ。夫が手を尽くし奔走していた法廷闘争に敗れたことが第一だと僕は思ってます。

(ケイケイさん)
 それは同意です。う〜ん、どこか話が食い違っている気がしますね。
 私が書いたのは、ヤマさん説の舅の言葉:裁判に勝つ件は、子供のために諦めてくれ、という仮定が前提で、そんな懇願の言葉に同意するような、殊勝な人ではないと言う意味です。

ヤマ(管理人)
 確かにララは、一審で敗れてもまだ法廷闘争を諦めないと言っていたジョンを頼りにしていたんですが、次の弁護の引受け手が見つからないくらい状勢が不利だということに加えて、そのジョンとの面会さえもままならなくなるような遠隔地への移送が決まって絶望の淵がさらに深くなったのだろうと思ってます。

(ケイケイさん)
 私も最初のほうで、このことが、ララが自殺を図った動機だと書いたと思うんですけどねぇ〜。

ヤマ(管理人)
 面会の話から始まり、自殺の話というのは初めのほうではありませんでしたが、ケイケイさんがララという人は、子供は母親が我が手で育てなければ、絶対ダメだと信念を持っている人だと思うんですね。だからこのまま監獄に繋がれた状態で十数年と言うのは、死ねと言われたも同然だと思うんです。だから自殺を図った。なので仮に義父の懇願があっても、このままの状態でいろと言われるなら、私は脱獄に賭ける人だと思います。と書いて自殺に言及してくださったことに対し、僕がジョージとの面会時点では、ララに脱獄という選択肢の発想はなかったと思いますよ。揺れるのではないかというのは、これだけジョンが頑張っても無実を勝ち取ることができず、冤罪を晴らせる見込みがないとなれば、もうジョンに諦めさせてやってくれないかという頼みで、ララのほうは、それを受けて揺れたわけですよ。 でも僕は、やってもないことをやったと夫に偽って諦めさせるのは耐え難くて、夫に嘘をつかずに自分の冤罪晴らしを諦めさせるには、これしかないって思いで自殺を図ったのだという気がしました。と返したのでしたが、ケイケイさんも僕も、共に言葉としては“絶望”を持ち出してはいないものの、自殺に至る第一は絶望で、その絶望の第一とは冤罪を法廷で晴らせなかったことだと受け止めている点では、同じだということですよね。
 ケイケイさんがそのように受け止めているのは了解していましたが、僕もそう受け止めていることがきちんと伝わっていない気がしたので、問い掛けに対する自分の受け止めを返してきたのですが、要はそういうことです。ジョージに同意までしたとは思っておらず、揺れただろうなと感じたわけです。

(ケイケイさん)
 了解しました。文章で長くお話すると、整理していかないと、こういう行き違いは生じやすいですね。
 それにしても、ヤマさんのララ像は、母として自己犠牲を感じて美しいじゃないですか? 私は泥だらけになって血まみれになっても、子供と暮らす執念深さを感じましたよ(笑)。

ヤマ(管理人)
 自己犠牲が美しいとも限りませんが、ララの場合、自己犠牲が動機の第一だとは思ってないです。一番は何といっても絶望で、そこから諦めが生じ、子供も夫も諦め、自分がいなくなるほうが二人にとってもいいのだろうと思うに到り、自死を選択したというのが僕の受け止めですから、一言で言うなら、自己犠牲よりも、絶望や諦観ということになりますね。

(ケイケイさん)
 ここが、絶対的にヤマさんと私の違うララ像でしょうね。

ヤマ(管理人)
 そのようですね。

(ケイケイさん)
 「自分がいなくなるほうが二人にとってもいいのだろうと思う」人では決してないと、私は思います。自殺未遂の原因は、二人のためという思いより、自分自身の希望を打ち砕かれた絶望ですね。でもって、絶望はしても諦観はしない人のように思いますね。その未完成さが、良くも悪くも、彼女の猛々しい母性を作っていると思います。

ヤマ(管理人)
 猛々しい母性ですか、成程、うまい表現ですね(笑)。やっぱ、あの走る車のドアを開けて身を乗り出す場面のインパクトですよね、これ。
 それも分からないではありませんよ。激しい気性の女性ですからね。思いや気性のどの部分の表出として、自殺未遂を受け止めるかの違いに過ぎません。

(ケイケイさん)
 あれはいいシーンでしたよ〜。多分生涯忘れないわ。元作はどうだったか、ちょっと気になっています。
 私は、子供が小さいとき、ララのような信念は必要だと思っているんですね。だから彼女が好きでした。

ヤマ(管理人)
 僕は、僕の解釈のもとにララを支持してましたが、ケイケイさん的解釈に立つと、ちょっと引いてしまうようなところがありますね。お互い、自分が好もしく思える方向で人物像を受け止めているんでしょうね〜。

(ケイケイさん)
 いやいや、あの人は普通は引いてしまう人でしょう(笑)。

ヤマ(管理人)
 ですよね(笑)。

(ケイケイさん)
 今の若いお母さんに欠けている点を観て、私も好ましく思いましたが、お友達にはなりたくないですよ。子を思う母としての部分が非常に共感は出来ますが。
 元作のダイアン・クルーガーは、優しい妻として描いていたそうで、この作品のララは、いわば観客をミスリードするための造形だったと思います。

ヤマ(管理人)
 ほぅ。元作のほうも観る機会が得られるといいけど、きっと難しいだろうな(とほ)。
 ま、優しさというのとは関係ないですが、夫婦でズレた意思の統合を“指の触れ合い”だけで示す場面は、なかなかよかったですよね。意見が違うことがあっても同じ道を歩む相方同士なんだとの想いを伝え合っていました。


-------息子と夫の優先順位-------

ヤマ(管理人)
 思えば、この作品は、映画の初めのほうでリーアム・ニーソン演じる脱獄名人に言わせていた「子供を捨てられるか」との問い掛けが効いてくる展開でしたね。

(ケイケイさん)
 うまく展開させていると思いました。

ヤマ(管理人)
 ですよね。そして、状況次第では「息子が最優先ではない」父親というものと、「最優先は息子」が揺るぎない母親というものを対照させている作品だったようにも感じています。

(ケイケイさん)
 この辺は明確に感じました。小さいうちは最優先は子供ですよ。

ヤマ(管理人)
 いや、自分の過去の記憶を辿っても、男のほうは必ずしもそうではないような気がします(あは)。
 遠い日の記憶ではありますが、究極の選択として、妻の命と幼子の命と、どっちかを選べと言われたら、どちらを選ぶかという設定に対し、相方が残っていれば、子供は作り直すことができなくはないけれど、作るための相方のほうは、そうはいかないってなことを思った覚えがあります。

(ケイケイさん)
 うちも聞いてみます(笑)。

ヤマ(管理人)
 答えが楽しみでんな(笑)。

(ケイケイさん)
 やっぱり妻ですと。

ヤマ(管理人)
 ほらね(笑)。で、ケイケイさんは、違ゃうでしょ(笑)。そら、夫より子供のほうが気掛りだってのが本音だったりしません?

(ケイケイさん)
 以前はね。 今はそれほどでもないなぁ。

ヤマ(管理人)
 あ、そうなんですか。

(ケイケイさん)
 正直子供が成人しても、いつまでも自分より子供が大事というお母さんでは、私はないです。もう充分に母親はしましたから。

ヤマ(管理人)
 自分じゃない、自分じゃない。夫と子供の比較です。

(ケイケイさん)
 あぁ、失礼しました(笑)。
 息子については、確かに死ぬまで親として心配したり喜んだりはするでしょうが、今は夫のほうが大切です。大切というより、責任ですかね?

ヤマ(管理人)
 責任ですか! ふーむ。でも、今は夫のほうってのは子供さんにとっても、旦那さんにとっても、いいことですね(拍手)。

(ケイケイさん)
 まぁそうですかね? 子供からは「一日でも長くお父さんより生きて」と言われています(笑)。独りでは生きていけない父親だと思われていますから(笑)。
 責任というのは、とても感じますよ。私は熟年離婚というのは、ずるいと思っていますから。
 夫婦というのは、良くも悪くも二人で作っていくもんですから、夫の気に入らない部分も、結局は自分が加担して作ってるんだと思います。だから、子供が大きくなるまで、ず〜と我慢して、着々と離婚の準備して、学校でたら、ハイさようならというのは、何だか蛇のような冷たさと、狐のような狡猾さを感じます。別れるなら、お互いもっと若くてやり直しがきく時にするべきですよ。
 とはいえ、誰が一番大切かと言うと、心情的には自分です。

ヤマ(管理人)
 とても健全だと思います。

(ケイケイさん)
 ありがとうございます。思っていても、言えない人が多いと思いますね。母親神話に縛られて(笑)。
 私にしても、一番は自分という感情が上手く機能せず、それこそ主婦の自己犠牲の上に家庭が成り立っているのが、現在のストレスです。一人暮らししたいわ(笑)。

ヤマ(管理人)
 あらあら、そうなんですか(笑)。
 ま、先に僕がお示しした究極の選択へのこの回答って、ロジカルに過ぎるという気もしますが、元々の設定が設定ですからね(笑)。でも、その感じにあながち嘘はないように、今も思っています。

(ケイケイさん)
 これはでも、上に子供がいれば、母親でもそうじゃないですかね?

ヤマ(管理人)
 いや、母親は違うような気がしますねぇ。角田光代の小説『八日目の蝉』の秋山恵津子には、下の子ができたけれども、上の子の喪失をそれで埋め合わせられる部分ってほとんどないのが母親というものだという母親観があったんじゃないかという気がしています。

(ケイケイさん)
 子供はどの子も違いますからね。上の子が死んで、次の子が出来ても、死んだ子は忘れられないですよ。子供を亡くした人に、次の子を作ろうでは、無神経過ぎます。
 私が書いた意味は、上に子供がいて、母体が悪いのに子供が出来て、なのに命懸けで次の子を産むというドラマがあったんですね。

ヤマ(管理人)
 少なからずあるような気がしますが、最近ではFlowersで、仲間由紀恵が演じた戦後生まれの慧がそうでしたね。

(ケイケイさん)
 その思考が不思議でね。私なら今いる子を育てるほうが大事なので、お腹の子は堕ろします。育てる責任がありますから。

ヤマ(管理人)
 『Flowers』も、慧の遺された夫(平田満)に長女 奏の高齢出産に際して“母体優先”を言わせる場面を配していました。

(ケイケイさん)
 そのドラマに限らず、女性はお腹の中の子も同等に扱うように描き、美談仕立てにする場合が多いですが、それはケースバイケースだと思いますね。

ヤマ(管理人)
 同感です。

(ケイケイさん)
 それにしても、最近は「小さいうちは子供が最優先」でないお母さんが多いのが、本当に嘆かわしい。そんなところまで男性化する必要はありません。

ヤマ(管理人)
 そーですねー。男と楽しむために邪魔だからってな理由での虐待や放棄が目立ってきたように感じますよね。過度に自己犠牲を強いるものではありませんが、それで邪魔邪険にするってのは呆れますね。


-------親子ものとしても観応えのあった『スリーデイズ』-------

ヤマ(管理人)
 ある意味、僕には“夫婦もの”ではなかったのかも。メインを“親子もの”として僕は観ていたのかもしれません。

(ケイケイさん)
 わかります。私もメインテーマではなく、サブテーマで感激することが多々ありますから。

ヤマ(管理人)
 豊かな作品ほど、そうですよね。アート系、エンタ系に限らず。

(ケイケイさん)
 それが作品の格をぐっと上げますよね。

ヤマ(管理人)
 そのとおりです。でもって、行間が豊かだと、その部分を介して、同好の士の受け止め方の交換をする楽しみも大きくなりますねー。

(ケイケイさん)
 最近は思い悩むのが段々しんどくなって、適当にわかり易い作品が好きですが(笑)。

ヤマ(管理人)
 あら、そうなんですか?(笑) 僕は、今年は数のほうを少し減そうと思ってます(あは)。

(ケイケイさん)
 私はまだまだ自己犠牲中なので、潤沢に映画が見られない、書く時間がないのが悩みの種です。いや〜、家族も以前よりは気を使ってくれているんですけどね、それが的外れが多い(笑)。悪いので気持ちは貰ってますけど(^^ゞ

ヤマ(管理人)
 それでいいんじゃないですか? 一人慣れしていない人の一人暮らしはキツいですよ、きっと。

(ケイケイさん)
 いや〜、土曜日出勤の時なんか、このまま難波で降りて映画観てファストフードで晩ご飯に出来たら、なんて幸せかしら〜と思いながら、最寄駅に着きスーパーに寄り、疲れた体で家族分の夕食作るのでは、雲泥の差でしょう?(笑) やっぱり一人暮らししたいわ(笑)。

ヤマ(管理人)
 テーマの豊かさという意味では、メインを“夫婦もの”として堪能しつつ、あるのとないのでは、鑑賞後のコクが断然違いますとして疎遠である父とジョン」「なかなか心を紡げないララと息子の様子をご覧になる視座の違いによって、ケイケイさんと僕では映り方が違ってくるのは、むしろ自然なことだったのかもしれませんね。

(ケイケイさん)
 そうですね〜。
 今回はお孫さんのいるヤマさんの感想のほうがウェットで、ちょっと感激しています(笑)。

ヤマ(管理人)
 あら?ウェットかしらん?(笑) ま、加齢というのは、そうしたものかも(笑)。

(ケイケイさん)
 そしたらこれから、お互い泣きながら感想書きそうですね(笑)。



推薦テクスト:「映画通信」より
http://www.enpitu.ne.jp/usr1/bin/day?id=10442&pg=20110926
推薦テクスト:「TAOさんmixi」より
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1782083148&owner_id=3700229
編集採録 by ヤマ

'12. 2. 6. あたご劇場



ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―

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