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〝集団的自衛権は現在でも違憲〟

元内閣法制局長官の宮﨑礼壹さん語る

 4月14日、宮﨑礼壹さんの講演会がありました。主催は安保法制違憲国賠訴訟事件長崎弁護団と同訴訟を支える会。
 宮﨑さんは第1次安倍内閣から鳩山由紀夫内閣にかけて内閣法制局長官を努めた方。15年6月の国会で参考人として「安保法制は憲法違反」と証言しました。宮崎さんは講演で、「憲法は9条を中心にすべての骨格。法律が国会を通ったからといって合憲とはならない。憲法に違反する法律は無効となる。現行憲法が有る限り安保法制は違憲だという声を上げていこう」と呼びかけました。以下、概要。

【内閣法制局とは】
 内閣法制局は規模は小さいが格がかなり上の「局」である。主な仕事は内閣提案の法律の最終審査(審査をしないと閣議にかけられないという権威がある)と内閣の統一見解を述べる(国会に呼ばれることも)こと。内閣の補佐機関だが一定の距離を置いている。PKO法の主任を務めて以降、安保関連の法律に関与してきた。

【集団的自衛権とは】
 「国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利」のことで歴代政府による定義で、現政権も踏襲している。
 しかし「混乱」が蔓延している。日米安保条約では在日米軍基地への攻撃では米国の個別自衛権行使となる。基地以外への攻撃は日本の個別自衛権行使と米軍による集団的自衛権行使という共同行動となる。米軍への自衛隊後方支援問題でも、戦闘行為ではないので集団的自衛権行使とはならない。

【集団的自衛権の問題性】
 国連憲章では武力攻撃が発生した際に国連が必要な措置をとるまでの間、「個別的又は集団的自衛の固有の権利」を行使できるとされた。「武力による威嚇又は武力の行使」を事実上禁止しているので、5大国の「拒否権」がある下での、一種の妥協ともいえる。
 国際法的には海外展開部隊が攻撃されても行使要件を満たす。「友好国」が先に手をだした場合の反撃も「武力攻撃」となるか? 安倍政権は「違法でなければ要件を満たす」としている。米国はいつも自己を正当化している。

【9条と自衛隊と集団的自衛権】
 自衛隊は前文と13条をわずかな根拠に最小限度の個別的自衛権は合憲と解釈されてきた。集団的自衛権は9条の下では一切行使不可とされてきた。自国が武力攻撃を受けているかどうかが判断基準なので集団的自衛権は他国防衛ゆえ違憲。つまり「国際紛争解決の手段としての武力行使」であり、行使する自衛隊は「戦力」そのものとなってしまう。

【戦後一貫していた政府解釈】
 政府の集団的自衛権行使「違憲」解釈は戦後一貫していた。それは内閣法制局長官の答弁だけでなく、歴代首相の意見答弁や政府答弁書の閣議決定、国会審議における確認の積み重ねで憲法解釈として確立していた。フルスペックの集団的自衛権だけを問題にしていたのではない。それを安倍内閣は日本と「密接な関係にある他国に対する武力攻撃」が発生し、これによって日本の存立が脅かされる場合は武力行使できると閣議決定してしまった。

【集団的自衛権を行使は「選択肢」か】
 他国に対する外部からの「武力攻撃の発生」を日本がチェックできない。「他の方法では解決できない」かどうか独自に判断できない。「武力行使を必要最小限度にすること」を独自にできない。米国の要請を断り集団的自衛権行使を見合わせる選択肢が現実問題としてあるだろうか。結局、対米軍事支援は「権利行使」や「選択肢」ではなく、事実上の「義務」になる。

【質問に答えて】
・自民党の9条加憲案で「最小限度の実力」を削ったのは…「今後の取引材料に使うため?」
・安倍首相が9条改憲で自衛隊は何も変わらないという主張は…「世論操作的印象がする。国民投票で否定されても自衛隊の合憲性は変わらないと言うのならば、する必要はない。否決された場合の覚悟をもつべきだ」
・周辺の安全保障環境は激変したのか…「論証されていない。米ソ対立の時代の方が深刻だった。中国が進出しているが自衛隊が南シナ海に出て行く必要性はない」

(2018年4月15日)