ホームニュース一覧2018

原発ゼロでも電気の安定供給は可能

グリーンコープ長崎が大島堅一講演会

 4月21日、長崎市内で大島堅一さん(龍谷大学教授)の講演会が開かれました(主催はグリーンコープ長崎)。以下、概要。

1.原発のコストは高い
 福島原発事故のコストは21.5兆円になると国は言う。内訳は賠償費用7.9兆円、除染費用4兆円、中間貯蔵施設1.6兆円、廃炉・汚染水対策8兆円。しかし上限ではない。これには含まれないものに、除染廃棄物の最終処分費用、帰還困難区域の除染費用、燃料デブリの処分費用がある。森林除染や復興事業などの行政費用も必要。おそらく30兆~40兆円になる。これだけの額の被害を出すのは大規模自然災害か戦争しかない。
 原発コストは運転期間だけ見てはダメ。原発が安いという人は「いま」しか考えていない。長期に見たらまちがいなくかかるし、額は不確実でわからない。いまわかっているだけで計算すると、13.3円/kWhで、火力・水力と比べて高い。安いというのは発電コスト8.5円だけで、原発には様々な補助金などの政策コスト1.7円が入ってくる。事故コストが3.1円で、増えることはあっても減ることはない。いま原発の建設費が高騰している。明らかに高いのだ。

2.進む電力自由化と託送料金の問題点
 16年度から電力の小売りが全面自由化された。20年度を目処に電力会社がなくなり発電会社・送配電会社・小売会社の子会社に分離される。発電と小売は値段や質での競争だが、送配電は共用の広域運用が必要なので同じ値段が必要。地域独占となるため送電線使用量(託送料金)にのみ総括原価方式が残ることになる。
 これまでの電気料金は原価と事業報酬(利益)と税金で成り立っていた。原価の中に使用済み燃料の再処理、放射性廃棄物の処分、廃炉、事故賠償の費用が入っている。自由化後は発電会社の裁量で算定する費目と託送料金と税金となる。売れる価格で電気料金を決定するが、採算がとれるかどうかは裁量次第。託送料金に賠償費用の一部を入れ込むことが検討されている。これは事実上の東電救済策であり、事故費用を関係者の責任を問わないまま、国民負担を増やそうとしている。

3.再稼働でも原発ゼロでも電気料金は下がる
原発を再稼働をすると確かに電気料金は下がる。逆に「原発を廃止すると電気料金は上がる」と考える人が多いが、これは間違い。
 再稼働準備状態の費用は火力の燃料費と他電力の購入費と原発維持費からなる。維持費は全電力会社合わせると1兆円になる。つまり国民1人当たり1万円ほど。再稼働すると原発の燃料費が発生するが火力の燃料費が大きく減り、確かに総額では安くなる。
 原発をゼロにした時は火力の燃料費は代わらず、原発維持費がなくなるので電気料金は下げられる。どちらが安くなるかは電力会社による。

4.原発ゼロで電気の安定供給は可能
 電力各社は長期の電力供給計画を提出しているが、原発は現在再稼働分だけで2%にも満たない。向こう10年間、8月期の予備率が常時8%を超えており、原発ゼロでも電力の安定供給が可能であることを電力会社自身が認めている。電力は足りているし原発は必要ないのだ。
 電力構成をどうするかが次の課題。日本ではまず原子力を利用して残りは他で埋めている。需要の少ない時は再生可能エネルギーが削られる。ドイツは日本のようなベースロード電源という考え方はまったくない。約35%もある主力電源の再生エネを最優先して利用する。残りは火力などで補っている。風力や太陽光は変動性電源(不安定電源ではない!)で、長期の経験から次の日の予測が十分できるので他の電力と組み合わせて安定な供給計画を決められる。

(2018年4月22日)