弁護士佃克彦の事件ファイル

東電OL殺人事件の余波

検事の接見妨害事件

PARTU

事件の発端・渋谷警察署

 マイナリさんがオーバーステイで起訴された後の4月22日に事件は発生しました。
 この日私はいつものように、起訴後勾留中のマイナリさんに接見をしに渋谷警察署に行きました。私が渋谷署の受付に接見を申し入れると、マイナリさんはいま検察庁に連れていかれているとのことでした。起訴後の勾留中に検察庁がマイナリさんを呼びつける合理的な理由などありえないので、私が「何をやっているんだ」と地検に問い合わせると、なんと捜査担当の検事がマイナリさんを取り調べているらしいことがわかりました。「オーバーステイの起訴後でかつ殺人については逮捕も勾留もされていない状態で、一体どんな理由で検事はマイナリさんを取り調べているのか。」私はこの疑問を担当検事(仮にU検事と呼びましょう)にぶつけたかったのですが、この検事の得意技は、自分で言いたいことを言うと一方的に電話を切ることのようであり、まともな会話が成立する前にU検事によって電話を切られてしまいました。
 どさくさに紛れておかしな内容の調書を作られては大変なので、私は急いで東京地検に向かいました。

事件の発生・東京地検

 私が地検の受付でマイナリさんとの接見を求め、受付からU検事にその旨を伝えると、U検事の返答は「取調中でありそれはできない」とのことでした。起訴後のマイナリさんと私との接見を妨げることは法律上全く認められないのに堂々とこれを妨げようとするU検事の言葉に『何をぬかすか』と最早コーフン状態の私は、そこで何を言ったか忘れましたが、ともかくも受付の男性と一緒に、U検事の取調室のある5階に行くことになりました。
 5階に行ってもU検事が出て来るわけでもなく、私が受付の男性にクレームを付けると、私は刑事事務課に通され、「しばらくお待ち下さい」と言われました。
 刑事事務課で待っていてもU検事が出て来るわけでもなく、私が刑事事務課の職員にクレームを付けると、その職員の返答は、「係長を呼んで来る」とのことでした。
 係長が来てもU検事が出て来るわけでもなく、私が係長にクレームを付けると……と、まるでロシアの人形マトリョーシカのように、開けても開けても交渉窓口が変わるだけで、私は、いつまでたってもマイナリさんとの接見どころかU検事と話すことすらできない状態で待たされました。この間にもU検事によるマイナリさんの取り調べは進行しているはずであり、私もだんだん焦ってきました。
 約1時間待たされた私は、ここまで礼を尽くせば文句は言われないだろうと思い、刑事事務課の職員に告げて、U検事の取調室を直接訪ねることにしました。
 U検事が取調室から出てきました。U検事の肩越しに、取調室の机に向かって座らされているマイナリさんの姿が見えました。私がU検事に「マイナリさんと接見がしたい」と告げると、U検事は「取調中に取調室に来るとは何事か。常識外れだ。」と言い、私のうしろにいた検察庁の職員に向かって、私を指差しながら「守衛さんに言って出してもらってください」と告げ、ドアを閉めようとしました。この間、1分もなかったように思います。
 私は「あー俺はつまみ出されるのか」などと頭の片隅で思いながら、閉められそうなドアを押さえ、U検事に対し、「あなたのやっていることは同じ法曹として理解できない」というようなことを言うと、彼は「その言葉をそのままあなたに返します」と言い、ドアを閉め、鍵を掛けました。
 こうして結局私はこの日、マイナリさんと接見ができなかったのです。

絶対に許さん!!

 あとでマイナリさんに確認したところ、この日の取り調べはやはり殺人についての取り調べでした。マイナリさんはこの日、渋谷警察の留置場の担当官から「今日はバスに乗って外に行こう」と言われてバスに乗ったところ、検察庁に連れて来られてしまったのだそうです。捜査当局というものは平気で大嘘をつくことがあるのですが、今回もそれが起こったのです。
 繰り返しますが、起訴後のマイナリさんと弁護人である私との接見について、検事がこれを妨げることは法律上全く認められないことです。それにも拘らずU検事は堂々とそれをやってのけました。明白な不法行為です。
 オーバーステイの起訴後の勾留中にマイナリさんを地検に呼び出し、殺人事件について取り調べ、おまけに接見に行った私をマイナリさんに会わせないというのは、二重三重に違法な行為です。私たち弁護団は怒り心頭に発し、これについてはマイナリさんの刑事事件とは別にしっかりカタをつけてやる、と誓いました。

つづく

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