宝くじの期待値を考え、1枚300円の宝くじの1枚当たりの価値を計算することから、
確率の期待値に興味をもち、単元の有用性を感じるのが、この教材のねらいである。
年末ジャンボ宝くじは1枚300円で売られているが、その宝くじの1枚当たりの価値つまり
期待値は本当はいくらなのだろうか?
まず計算する前に予想してみる。ある授業での18人の予想の平均額は132円で、
分布は20円~280円と幅広かった。
2009年の第573回の年末ジャンボ宝くじは以下の表である。
等 | 1等 | 前後賞 | 組違い賞 | 2等 | 3等 |
---|---|---|---|---|---|
本数 | 1本 | 2本 | 99本 | 2本 | 10本 |
賞金 | 200,000,000(2億)円 | 50,000,000(5000万)円 | 100,000(10万)円 | 100,000,000(1億)円 | 5,000,000(500万)円 |
確率 | 1/10,000,000 | 2/10,000,000 | 99/10,000,000 | 2/10,000,000 | 10/10,000,000 |
等 | 4等 | 5等 | 6等 | 7等 | 元気に2010年賞 |
---|---|---|---|---|---|
本数 | 600本 | 10,000本 | 100,000本 | 1,000,000本 | 10,000本 |
賞金 | 100,000(10万)円 | 10,000円 | 3,000円 | 300円 | 10,000円 |
確率 | 600/10,000,000 | 10,000/10,000,000 | 100,000/10,000,000 | 1,000,000/10,000,000 | 10,000/10,000,000 |
ここから期待値を計算すると、以下のようになる。
E=200,000,000×(1/10,000,000)+50,000,000×(2/10,000,000)+100,000×(99/10,000,000)
+100,000,000×(2/10,000,000)+5,000,000×(10/10,000,000)+100,000×(600/10,000,000)
+10,000×(10,000/10,000,000)+3,000×(100,000/10,000,000)+300×(1,000,000/10,000,000)
+10,000×(10,000/10,000,000)=20+10+0.99+20+5+6+10+30+30+10=141.99円
よって、1枚300円で買う宝くじの価値は約142円なので、還元率は約47%しかないことがわかる。
公営ギャンブル(競馬等)が75%、パチンコも70%前後らしい(店による)ので、儲けようと考える
には率が悪く、いかに宝くじに「夢を買う!」という言葉があてはまるかがわかる。
20年位前の年末ジャンボ宝くじは1等が6000万円で、前後賞あわせて1億円であった。
1枚の値段は変わっていないのに、現在は1等が2億円、前後賞あわせて3億円になった。
さらに2等でも1億円と、20年位前の1等よりも高い賞金である。
これは買う側にとってお得になっているのだろうか?
実は期待値はほとんど変わっていないのである。
その頃の年末ジャンボ宝くじのデータがないので、代わりに17年前、1993年の第318回の
サマージャンボ宝くじのデータを見て、現在の年末ジャンボ宝くじと比較してみよう。
等 | 1等 | 前後賞 | 組違い賞 | 2等 | 3等 |
---|---|---|---|---|---|
本数 | 4本 | 8本 | 396本 | 4本 | 30本 |
賞金 | 60,000,000(6千万)円 | 30,000,000(3千万)円 | 100,000(10万)円 | 10,000,000(1千万)円 | 1,000,000(100万)円 |
確率 | 4/10,000,000 | 8/10,000,000 | 396/10,000,000 | 4/10,000,000 | 30/10,000,000 |
等 | 4等 | 5等 | 6等 | 7等 | ビックレジャー賞 |
---|---|---|---|---|---|
本数 | 1,000本 | 10,000本 | 30,000本 | 1,000,000本 | 50本 |
賞金 | 100,000(10万)円 | 10,000円 | 3,000円 | 300円 | 5,000,000円 |
確率 | 1,000/10,000,000 | 10,000/10,000,000 | 30,000/10,000,000 | 1,000,000/10,000,000 | 50/10,000,000 |
E=60,000,000×(4/10,000,000)+30,000,000×(8/10,000,000)+100,000×(396/10,000,000)
+10,000,000×(4/10,000,000)+1,000,000×(30/10,000,000)+100,000×(1,000/10,000,000)
+10,000×(10,000/10,000,000)+3,000×(30,000/10,000,000)+300×(1,000,000/10,000,000)
+5,000,000×(50/10,000,000)=24+24+3.96+4+3+10+10+9+30+25=142.96円
まず期待値は、17年前のサマージャンボ宝くじ142.96円から、2009年の年末ジャンボ宝くじは
141.99円と、約1円安くなっている。
次に各等について比較してみよう。E=20+10+0.99+20+5+6+10+30+30+10の部分
に注目してみる。最初の20は、200,000,000×(1/10,000,000)で、1等に対する期待値が20円という
ことである。表に並べて比較してみると以下のようになる。
1993年サマージャンボ宝くじ | 2009年年末ジャンボ宝くじ | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
賞金 | 本数 | 期待値 | 賞金 | 本数 | 期待値 | |
1等 | 6000万円 | 4本 | 24 | 2億円 | 1本 | 20 |
前後賞 | 3000万円 | 8本 | 24 | 5000万円 | 2本 | 10 |
組違い賞 | 10万円 | 396本 | 3.96 | 10万円 | 99本 | 0.99 |
2等 | 1000万円 | 4本 | 4 | 1億円 | 2本 | 20 |
3等 | 100万円 | 30本 | 3 | 500万円 | 10本 | 5 |
4等 | 10万円 | 1000本 | 10 | 10万円 | 600本 | 6 |
5等 | 1万円 | 1万本 | 10 | 1万円 | 1万本 | 10 |
6等 | 3000円 | 3万本 | 9 | 3000円 | 10万本 | 30 |
7等 | 300円 | 100万本 | 30 | 300円 | 100万本 | 30 |
特別賞 | 500万円 | 50本 | 25 | 1万円 | 1万本 | 10 |
計 | 142.96 | 141.99 |
2009年年末ジャンボ宝くじの数字の赤色が上がった部分、青色が下がった部分、緑色が変わら
ない部分である。これを見ると1等の賞金が2億円、2等の賞金が1億円に上がるにあたって、
1,2等の当たる本数を減らしたり、4等や特別賞の部分の期待値を減らしたりして、期待値が
同じになるように調整していることがわかる。
つまり最近の宝くじは、賞金が高額になった代わりに、4等以上は当たりづらくなり、
ギャンブル性が高まったと考察することができる。