日本シリーズの球場利用回数の期待値を考え、利益の予測や運営システムを分析すること
から、確率に興味をもち、単元の有用性を感じるのが、この教材のねらいである。
プロ野球では、本拠地の球場で試合をしたときの入場料等はホームチームの収益となるため、
できる限り多くの試合数を本拠地の球場で行いたい。
野球の日本シリーズでは、セリーグの球場をC、パリーグの球場をPとすると、
偶数年(2010年など)はセリーグのC球場から始めて、CCPPPCCの順で球場を利用する。
逆に奇数年(2011年など)はパリーグのP球場から始めて、PPCCCPPの順で球場を利用する。
日本シリーズは先にどちらかが4勝した時点で試合は打ちきりであるが、球場利用回数の
期待値は平等だろうか?
例えば偶数年のとき、第4戦で終わった場合はC球場とP球場の利用回数は2回ずつで平等で
あるが、第5戦で終わった場合はC球場は2回に対してP球場は3回利用していて、Pチームの
方が収益が多いことになる。
逆に第7戦までいった場合はC球場は4回でP球場は3回なので、Cチームの方が収益が多く
なる。それぞれのチームの1試合の勝敗の確率を1/2としたとき、第何戦まで試合が行われる
かは、数学Aの「野球の日本シリーズ」のページで紹介したので、それをふまえてまとめたのが
以下の表である。
確率 | C球場 | P球場 | |
---|---|---|---|
第7戦まで | 5/16 | 4回 | 3回 |
第6戦まで | 5/16 | 3回 | 3回 |
第5戦まで | 1/4 | 2回 | 3回 |
第4戦まで | 1/8 | 2回 | 2回 |
上の表を利用して、C球場とP球場のそれぞれの球場利用の期待値を計算してみると、
C球場は、4×(5/16)+3×(5/16)+2×(1/4)+2×(1/8)=47/16(≒2.93回)
P球場は、3×(5/16)+3×(5/16)+3×(1/4)+2×(1/8)=46/16(≒2.875回)
ということで、ほぼ平等になっていることがわかる。
(交互に行う方法もあるが、それだと球場の移動回数が多くなり大変である。)
先に始めるC球場の方がほんの少しだけ期待値が高いが、その分、後に行うP球場の方が3試
合できる確率が高いため、安定した収益が得られるからよいという考え方もできる。
この計算によって、例えばC球場の1試合での入場料収益が1億円だとすると、日本シリーズで
の総収益は1億×2.93=2億9300万円と予測することができ、シリーズ前から予算を立てること
ができるのである。