関数の極限や微分、極方程式を用いて台風を分析することで、数学Ⅲの内容を総合的に使っ
て身近な現象を分析することに興味をもち、単元の有用性を感じることが、この教材のねらい
である。数学A「いろいろな等角らせん」や数学Ⅲ「渦巻と極方程式」の続きで扱ってもよい。
台風の風は等圧線に対して一定の角度を保ちながら吹き込む
といわれている。
ここで等圧線を円と仮定すると、図1のようなモデルとなる。
このとき台風の渦巻が等角らせんになることを証明する。
風が等圧線となす角をφとする。Δθ だけ微小回転したときの
半径の増分をΔr とすると、
∠OBA=(π/2)+φ 、∠OAB=(π/2)-(Δθ+φ)より、
図2の三角形OABについて正弦定理を使って、
(r+Δr)/sin{(π/2)+φ}=r/sin{(π/2)-(Δθ+φ)}
(r+Δr)/cosφ=r/cos(Δθ+φ)
r+Δr=rcosφ/cos(Δθ+φ)
Δr=rcosφ/cos(Δθ+φ)-r
=r×{cosφ-cos(Δθ+φ)}/cos(Δθ+φ)
lim(Δθ→0)(Δr/Δθ)=r・lim(Δθ→0)(1/Δθ)×{cosφ-cos(Δθ+φ)}/cos(Δθ+φ)
=r・lim(Δθ→0)(1/Δθ)・{2(sin(Δθ+2φ)/2)(sinΔθ/2)}/cos(Δθ+φ)
=r・lim((Δθ/2)→0){(sinΔθ/2)/(Δθ/2)}{sin((Δθ/2)+φ)/cos(Δθ+φ)}
=r・(sinφ/cosφ)=rtanφ
よって、(dr/dθ)=rtanφより、r=ke(tanφ)θ(kは定数)となり、
台風の風は等角らせんに近似できることがわかる。
ここで、図3の台風の写真によると、
台風の雲を近似した渦巻の極方程式が、
r=ke(-18/25π)θ となることから、
回転方向をそろえて比較してみると、
e(tanφ)θ=e(-18/25π)θより、
tanφ=18/25π≒0.23から、φ≒12.9°と、
この台風の吹き込む風の角度を求めることができる。
また、もし等圧線に吹き込む角度 φ が0°のときを考えたら、
r=ke(tan0°)θ=ke0=k となり、
半径 k の円になるため、円状をぐるぐるまわる運動になってしまうことがわかる。