ある条件で積み木を積むことについて考察することで、極限の感覚を磨き、
無限級数の理解を深め、興味をもつことが、この教材のねらいである。
ずらして積み木を積むと、横にどこまでも遠くまで積んでいくことができるだろうか?
「木はどこまで伸びる」と比べて考えさせて予想させるとおもしろい。
積み方は、重心の下に積み木があればくずれないので、
積み木の幅を1とすると、図のように積むとよい。
一番上の積み木の左端の位置を 0 とすると、
上から2つ目の積み木の左端を一番上の積み木の重心
である (1/2) に置けばよいので、
積み木をずらす量は、(1/2)-0=(1/2)
2つの積み木の重心の位置は (1/2)[(1/2)+{(1/2)+(1/2)}]=(3/4)
上から3つ目の積み木の左端は2つの積み木の重心である (3/4) に置けばよいので、
積み木をずらす量は、(3/4)-(1/2)=(1/4)
3つの積み木の重心の位置は (1/3)[(3/4)×2+{(3/4)+(1/2)}]=(11/12)
上から4つ目の積み木の左端は3つの積み木の重心である (11/12) に置けばよいので、
積み木をずらす量は、(11/12)-(3/4)=(1/6)
4つの積み木の重心の位置は (1/4)[(11/12)×3+{(11/12)+(1/2)}]=(25/24)
上から5つ目の積み木の左端は4つの積み木の重心である (25/24) に置けばよいので、
積み木をずらす量は、(25/24)-(11/12)=(1/8)
よって、nつの積み木の重心の位置 an =(1/n)[an-1×(n-1)+{an-1+(1/2)}]=an-1+(1/2n)
積み木をずらす量は、an -an-1=(1/2n) となる。
ゆえに、上からnつ積み木を積んだときにずらす量の合計は、
(1/2)+(1/4)+(1/6)+(1/8)+…=(1/2)(k=1Σ∞)(1/k) となる。
ここで、(k=1Σ∞)(1/k)
=1+(1/2)+{(1/3)+(1/4)}+{(1/5)+(1/6)+(1/7)+(1/8)}+…+{(1/(2n-1+1)) +(1/2n)}
>1+(1/2)+{(1/4)+(1/4)}+{(1/8)+(1/8)+(1/8)+(1/8)}+…+{(1/2n) +(1/2n)}
=1+(n/2)より、lim(n→∞){1+(n/2)}=∞ から
はさみうちの定理より、(k=1Σ∞)(1/k)=∞ となる。
よって、積み木をこのように積むと、横にどこまでも遠くまで積んでいくことができる。 ただし、高さはそれ以上に高くなるので、現実的には不可能である。