スキーの最速降下曲線

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サイクロイド

身の回りにあるサイクロイド曲線について考察することで、

単元の有用性を感じ、興味をもつことが、この教材のねらいである。

スキー場で、下図のように、A,B,C,D の4つのコースがある。

Aコースはまっすぐ降りる最短距離で、コースは直線である。

Bコースは円弧の一部、Cコースはサイクロイド曲線で、Dコースは楕円である。

さてどのコースが上から下までの所要時間が短い最速コースだろうか?



答えはCコースである。サイクロイドは最速降下曲線なのである。

Aは距離が短いものの、なかなかトップスピードにならず、BもCに比べて加速が少ない。

Dは最初は速いものの最後の緩斜面の距離が長すぎるため遅いのである。

法隆寺の五重塔の屋根はサイクロイド曲線に近く、このため雨が降っても早く地上に

流れ落ちるしくみになっている。

また、東京から大阪まで、地下にサイクロイド曲線のトンネルを掘って列車を走らせれば、

東京駅を出発した列車は重力によって潜り、真中で最高速を記録し、摩擦がなければ

大阪駅で時速0kmとなって停車するエネルギー不要の画期的な交通システムができる。

実際は摩擦があるので、最後は少し自力で走ればよい。

なお、大阪駅で素早く列車をつかまえないと、列車は再び東京に向かって逆戻りしてしまう。

計算上は東京―大阪間の直線距離を400kmとすると、T=√(400×2π/0.0098)≒506(秒)で、

なんと東京―大阪間を約9分弱で走れる計算になるそうである。

ただし現実的には、東京―大阪間に1本のサイクロイド曲線のトンネルを作るには、

2πr=400kmより、2r≒127kmとなり、最深部で127kmの深さのトンネル

を掘らなくてはならず不可能である。いくつものサイクロイド曲線をつなげれば可能だろうか?

考察してみるとおもしろい。

<参考文献>
[1]中宮寺薫(1994),『数学通になる本』,オーエス出版社,pp.144-145.