円以外でマンホールになるような図形を探し、円や定幅図形について考察することで、
平面図形の単元に興味をもつことがこの教材のねらいである。
マンホールのふたの多くは円であるが、なぜ丸いのだろうか?
円はどこから測っても、差し渡しの最大幅が同じ定幅図形であるから、
穴にマンホールが落ちないのである。例えば長方形のマンホールは、ふたを立てて、
ななめ(対角線)の向きで穴に入れると落ちてしまう。実際に確かめてもおもしろい。
自動販売機に入れるコインが円であるのも同じ理由である。
コインが定幅図形でないと、コインがどこかで引っかかってしまうことが
ありえるのである。
このような定幅図形には、他にも図1のようなルーローの三角形がある。
これは正三角形の各頂点から辺の長さを半径とした円弧を描いた図形
で、ドイツのルーロー(1829~)が発見したことからこの名がついたといわ
れている。同様の作図を正奇数角形におこなうとルーローの多角形に
なる。図2がルーローの五角形である。正偶数角形では同様の作
図をすることができないので、ルーローの四角形は存在しない。
図3はイギリスの50ペンスコインで、ルーローの七角形である。
自動販売機に入れるコインは定幅図形である方がよいので、
普通は円形のコインが多いが、ルーローの七角形を使って
いるところがおしゃれだと思いませんか。
差し渡し幅が1のルーローの三角形はどの方向からみても
幅が1なので、図4のように、辺の長さ1の正方形の中で内接
しながら回転することができる。よって、ルーローの三角形の形
をしたドリルを使うとほぼ正方形の穴をあけることができる。
ただし、ルーローの三角形の内角は正方形の内角より広いので、
角は削りきれず楕円形になってしまう。
ルーローの三角形は、ロータリーエンジンにも使われている。
ルーローの五角形を回転させると正六角形の穴ができる。
また、差し渡し幅が同じ定幅図形の周の長さはすべて同じである。
差し渡し幅が1の図形に対して周の長さはπ である。例えば、差し渡し幅が1の
ルーローの三角形の場合、周の長さは2π×1×(60/360)×3=π となる。また、差し
渡し幅が1の円の場合は半径(1/2)の円なので、周の長さは2π×(1/2)=π である。
差し渡し幅が同じ定幅図形の面積は異なるが、それぞれ計算してみるとおもしろい。
例えば、差し渡し幅が1のルーローの三角形の面積Sは、
3つの扇形から正三角形2つ分を引けばよいので、
S=(π×12×(60/360)×3)-2×(1/2)×1×(√3/2)=(1/2)(π-√3) となる。
円の方程式を学習した後は、ルーローの三角形の方程式を、場合分けで書くとおもしろい。
① x2+y2=1,(1/2)≦x≦1,0≦y≦(√3/2)
② (x-1)2+y2=1,0≦x≦(1/2),0≦y≦(√3/2)
③ (x-(1/2))2+(y-(√3/2))2=1,0≦x≦1,(√3/2)-1≦y≦0
と、3つに場合分けして表すことができる。