片対数グラフ用紙やそれを使ってデータを分析することに興味をもち、数学と社会の関連性と
単元の有用性を感じることが、この教材のねらいである。
社会の現象では、物価指数や経済成長率など、もとの数値の何倍
になっているかを問題にすることが多い。よって、まず図1のような
片対数グラフ用紙を使ってy=2xのグラフを書き、そのグラフが
直線になることなどからそのグラフ用紙のしくみを考える。
そして、片対数グラフ用紙に「日本の自動車の所有台数の推移」
のグラフを書き、歴史的背景もふまえてデータを考察する。
横のめもりが等間隔で、たてのめもりが指数的な間隔をもつグラフ用紙を「片対数グラフ用紙」
という。このグラフ用紙にy=2xのグラフを書く。普通のグラフ用紙ならば、このグラフを
x=0からx=10まで書くことは困難だが、この片対数グラフ用紙にならば書くことができる。
さらにy=2xのグラフをこの片対数グラフ用紙に書くと、直線になることがわかる。
このしくみは、片対数という名があるとおり、y軸のめもりが、下表および図2、図3が示すとおり対数になっているのである。図2、図3のようにいちいち対数を計算してグラフをかくのは
大変なので、あらかじめ
作ってあるのが
「片対数グラフ用紙」
である。
下の表は、戦後の日本における自動車の所有台数の推移である。この表のグラフを、
片対数グラフ用紙に書き、日本の戦後の自動車の所有の移り変わりについて考えてみよう。
年 | 1945 | 50 | 55 | 60 | 65 | 70 | 75 | 80 | 85 | 90 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
所有台数(万台) | 14.2 | 33.7 | 90.1 | 217.6 | 698.3 | 1872.6 | 2813.9 | 3787.4 | 4616.3 | 5770.2 |
①上の表のグラフを片対数グラフ用紙に折れ線グラフ
で書く。
②y=2xと同じ傾きのグラフをその上に書く。
つまり、14.2万台(1945年)から順調に5年おきに2倍に
伸びたとした時のグラフ(y=14.2×2x)を赤線で書く。
(1950年14.2×2=28.4万台、1955年28.4×2=
56.8万台…をプロットする。)
③2つのグラフを比べて、戦後の日本の自動車の所有
台数の伸び率について、歴史的背景を考慮に入れて
考察する。
「自動車の所有台数」を片対数グラフにとると図4のようになり、
1970年までは2倍以上の増加率で急激に伸びているが、
それ以降の増加率は2倍以下になっていることが一目瞭然でわかる。
これには高度経済成長の収束やオイルショックなど様々な歴史的背景があると考えられる。