お湯の冷める実験によって、温度の変化の様子に興味をもち、数学と日常生活との関連性と
単元の有用性を感じることが、この教材のねらいである。
水を温めるときの温度の変化が一次関数に近似することを調べる実験はよく行われている。
では、お湯が冷めるときの温度の変化はどうなるのであろうか?
ニュートン(イギリス1643~)の冷却の法則によると、「物体が放射によって失う熱量は、
その物体と周囲との温度差に比例する。」ということである。これを式に表すと、
温度をT、時間を t とし、初期の温度をTo、室温をTe、物質の熱容量や表面の状態・広さ
で決まる比例定数を k とすると、T=(To-Te)×e-kt+Teとなる。
ここに指数関数が現れることから、これを実験で確かめてみることにする。
以下の表は、ある生徒が「お湯の冷める時間と温度を測定する実験」をしてきた。そのデータ
である。
時間(分) | 0 | 2 | 4 | 6 | 8 | 10 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
温度(℃) | 98.5 | 91.0 | 85.0 | 80.0 | 76.0 | 72.0 | 69.0 | 67.0 | 64.0 | 62.0 | 60.5 |
時間(分) | 22 | 24 | 26 | 28 | 30 | 32 | 34 | 36 | 38 | 40 | |
温度(℃) | 59.5 | 57.5 | 56.0 | 54.0 | 52.0 | 50.0 | 49.0 | 48.0 | 47.0 | 46.0 |
これをグラフにしたのが右図である。これによる
と、このグラフは指数関数のグラフに近似
しているように見える。
この実験における初期の温度To=98.5C°,
室温Te=30C°より、このグラフに近似する指数
関数を、比例定数kを変化させて求めてみると、
e-k=0.96としたT=(98.5-30)×0.96t+30より、
T=68.5×0.96t+30という式に近似できることがわかる。
この式から計算した温度の計算値(C°)と計算値と、実験データとの差(C°)と誤差(%)
を表したのが次の表である。
時間(分) | 0 | 2 | 4 | 6 | 8 | 10 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
温度の計算値(℃) | 98.5 | 93.1 | 88.2 | 83.6 | 79.4 | 75.5 | 72.0 | 68.7 | 65.6 | 62.9 | 60.3 |
実験との差(℃) | 0.0 | -2.1 | -3.2 | -3.6 | -3.4 | -3.5 | -3.0 | -1.7 | -1.6 | -0.9 | 0.2 |
誤差(%) | 0.0 | -2.3 | -3.6 | -4.3 | -4.3 | -4.7 | -4.1 | -2.4 | -2.5 | -1.4 | 0.4 |
時間(分) | 22 | 24 | 26 | 28 | 30 | 32 | 34 | 36 | 38 | 40 | |
温度の計算値(℃) | 57.9 | 55.7 | 53.7 | 51.8 | 50.1 | 48.6 | 47.1 | 45.8 | 44.5 | 43.4 | |
実験との差(℃) | 1.6 | 1.8 | 2.3 | 2.2 | 1.9 | 1.4 | 1.9 | 2.2 | 2.5 | 2.6 | |
誤差(%) | 2.8 | 3.2 | 4.3 | 4.2 | 3.7 | 3.0 | 4.0 | 4.9 | 5.6 | 6.0 |
実験データと計算値のグラフを比較したのが
右図である。表によると誤差は6%以内であり、
グラフを見ても十分近似していると判断できる。
以上のことから、この式を利用すれば、次のような
値を求めることができる。
例えば、このお湯の60分後の温度は、
T=68.5×0.9660+30で求めることができ、
関数電卓を使うと、T≒35.9C°と予測することが
できる。また、測定しなかった1分後の温度なども
予測することができる。
(T=(68.5×0.961+30≒95.8C°) さらに、30秒後すなわち(1/2)秒後の温度といった、
連続的な感覚を身につけさせることもできる。