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『火の華』['24]
監督・企画・脚本 小島央大

 防衛大臣だった稲田朋美が2017年に辞任を余儀なくされるに至った自衛隊日報問題に材を得た、日本のPKO参加とは何だったのかを問い掛ける、なかなかの力作だったように思う。筋立ても運びも余りこなれていない気がしてならなかったが、何と言っても題材に力がある。

 「少年兵に殺されそうになったら、お前なら先に殺せるか」との台詞が印象深い。圧倒的抑止力などという言葉も出て来ていたが、そんなものありはしないと思う。必要なのは抑止努力であって、それは圧倒するような形では決して果たせない地道な積み重ねでしか花開かせることの出来ないものだと思う。

 ちょうど、入隊前から友人だった同僚を南スーダンでの銃撃で失い、自身は少年兵を射殺してPTSDを抱えた元自衛隊員の島田東介(山本一賢)が、親方の藤井与一(伊武雅刀)の下で修業していた花火製作にも似た作業なのだ。小さな火薬玉の丹念な作業の積み上げがあってこそ大きく華開くものの、永続性の期待できない儚いもので、次々と地道な積み重ねの繰り返しが求められるものなのだ。本作のタイトルは、おそらくそういう趣旨に違いないと思った。

 軍事作戦による実戦とは言えない抗争の如き銃撃戦ながら、死傷者が幾人も出た現場で島田たちが負ったPTSDの深さやら帰国後の居場所のなさには、遠き日の『ディア・ハンター』['78]を思わせるところがあった。よもや戦後日本を舞台にした映画で、実話からインスパイアされる物語として、そういうものを観ることがあるとは思い掛けなかった。武装勢力がいて戦闘が行われても直ちに戦闘地域とまでは言い切れない様相のなかで“起こるべくして起こった出来事”として描く慎重さが施されていて、さればこそ却って、平和維持活動への参加とは何だったのかとの思いが湧いてくる形になっていたような気がする。

 手元にあるチラシによれば、島田を演じた山本一賢が共同企画・脚本にも名を連ねているようだ。全く名も知らない役者だったが、印象深い演技をしていた。一部現役も含む元自衛隊員たちによるテロとその鎮圧に臨む傭兵の戦闘へと展開していった後半に随分と失速し、安っぽくなった気もするが、ある種、画期的な作品だったように思う。
by ヤマ

'26.10.27. Netflix配信動画



ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―

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