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| 『夕なぎ』(Boom)['68] | |||||
| 監督 ジョセフ・ロージー
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| 先ごろロミーの『夕なぎ』['72]を観たばかりなので、それならとその四年前の作となるリズの『夕なぎ』のほうも観ておくことにしたものだ。確かに繰り返し「ドーン」という打ち寄せる波の音や大きな物音はしていたが、原題の「Boom」は、いったい何を意味していたのだろう。 揺るぎなき岩が波に洗われる姿と対照的な、ベッドに俯せになって豊満を通り越したように揺れる背中のマッサージを受けている中年夫人の姿で始まった本作は、五度の結婚を重ね遺産と思しき巨万の富を得て豪奢な島暮らしをする寡婦のシシーことフローラ・ゴーフォース(エリザベス・テイラー)が、病苦に脅えつつ、“前進”夫人との名も皮肉な停滞の極みのような日々を過ごしているさまを映し出すことで、栄華とされる虚飾の空しさを描いている作品だったように思う。 '68年作品だから、当時まだ三十路半ばのはずなのだが、リズの貫録に圧倒される。生真面目な若き寡婦の秘書ブラック(ジョアンナ・シムカス)に口述筆記させている、何のためだかも判らぬ自叙伝の御託の大仰や使用人たちに対する振舞いの尊大さに演技を超えた説得力があって恐れ入った。五度の結婚という設えがリズ当人と重ね合わされていたから、というだけのものではない、確かな演技力だ。 それにしても、若き身で寡婦となっていると知るや忽ちちょっかいを出さずにいられず、心身の弱っているフローラを緩急ないまぜの手管で籠絡していく“死の天使”たるクリス・フランダース(リチャード・バートン)は何者だったのだろう。フローラが身に纏っていた宝飾品を巧みに取り外しつつ盗んではいかなかったエンディングが、意味深長なようでいて些か取って付けたような浅薄さを覗かせていた気がしなくもない。 | |||||
| by ヤマ '26. 3.31. BD観賞 | |||||
ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―
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