『ロング・ライダーズ』(The Long Riders)['80]
監督 ウォルター・ヒル

 先ごろイージー・ライダー['69]を約四十年ぶりに再見したことから、同じくライダーと題した七人の馬乗り(ジェームズ兄弟・ヤンガー三兄弟・ミラー兄弟)から始まる本作を四十五年ぶりに再見した。前回観たのは劇場公開時で、テアトル土電での『モンスター・パニック』との二本立て。言わずと知れたジェームズ=ヤンガー強盗団を描いた作品で、兄弟強盗団を兄弟俳優による配役で作り上げたところがミソのような映画作品だ。

 まずまず面白く観たのだが、やはり当時の記憶にあるとおり、ジェームズ兄弟よりもヤンガー兄弟のほうが印象深い作品だったように思う。ジェームズ兄弟というよりも、キーチ兄弟よりキャラダイン兄弟と言ったほうがいいのかもしれない。最後にジェシーを賞金目当てに背中から撃ったボブ・フォード(ニコラス・ゲスト)と違って、仲間を見捨てるようになったジェシー(ジェームズ・キーチ)に対して愛想を尽かしながも、ピンカートン探偵団に売ることはしなかった長兄コール(デヴィッド・キャラダイン)と彼が執心していた娼婦ベル(パメラ・リード)とのエピソードにしても、ミラー兄弟の弟エド(デニス・クエイド)と結婚していたベス(エイミー・ストライカー)を奪い取った次兄ジム(キース・キャラダイン)にしても、ジェシーと兄フランク(ステイシー・キーチ)のジェームズ兄弟よりも、人物像を窺わせるエピソードが豊富だったような気がする。

 もっともアメリカではつとに知られた強盗団であろうから、人物像の描出に作り手の意欲はなく、主にアクションシーンを描きたかったのではないかという気がしなくもない。その点では、いかにもウォルター・ヒルの作品らしいスローモーション撮影を多用した派手なアクション場面満載の作品だったようにも思う。

 こういう映画を再見すると、ついつい地獄への道['39]や地獄への逆襲['40]、更には無法の王者 ジェシイ・ジェイムス['57]、ミネソタ大強盗団['72]、ジェシー・ジェームズの暗殺['07]などと観合わせてみたくなるとともに、宿題のままの『アメリカン・アウトロー』['01]を片付けたくなってくる。

 本作では、ジェームズ=ヤンガー強盗団に義賊的な色付けは全くされておらず、南北戦争の遺恨が全面的に打ち出されていたように思う。'80年代ともなれば、彼らを易々とヒーロー扱いするわけにはいかなくなっていたのではないかという気がした。さればこそ、なおのこと新世紀になってからの『アメリカン・アウトロー』での描き方が気になってくる。毀誉褒貶あるジェシーの陽気さや義侠心を敢えて排し、専ら威圧と猜疑心を描いて、兄フランクが袂を分かつに至った際に呟いた“弟の異常性”が静かに伸し掛かってくる不気味さで描かれていた、'07年の『ジェシー・ジェームズの暗殺』までには至らずとも、本作以上に厳しいジェシー観が描かれているのではなかろうか。

by ヤマ

'25.12.20. BSプレミアムシネマ録画



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