地底のラビリンス
坑道にはレールが這っている。
軌間は500mm程度である。
酸素濃度は20.2%と問題が無い。
この濃度は坑道の奥まで維持される。
坑道には待避所があり、
そこには木箱が朽ちている。
坑内分岐がある。
枕木は残るものの、レールは無い。
アセンダーを利用して上の階層まで登る。
しかしトップバッターはザイルなしでの登坂となる。
上部の平場には自然の柱のような部分が残る。
これは『鉱柱』と呼ばれる。
鉱柱はわざと残された天盤を支えるための柱だ。
採掘せずに残すこのような柱は、
比較的低位品位の部分を残すことが多い。
鉱柱は「竜頭」とか「残柱」などと呼ばれる場合もある。
坑道や切羽を安全に維持するために残される。
坑道の高い部分にはコウモリがいる。
こうもりの脚はラチェットのように、体重が掛かると締まる構造だ。
そのため筋肉と関係なくぶら下がることができる。
左側から鉱石を流すシューターがある。
鉱山用語の俗語で『褌板(ふんどし板)』という。
坑道を跨ぐように棚を設置して、
上から採鉱した鉱石を棚下にある鉱車に積み込む。
残る坑木の奥には再びレールが続く。
坑木は重圧で軋み音が出るため、
落盤の前兆を知るきっかけとなる。
内部は複数の分岐が縦横にある。
別ルートから同じ場所にで出くわす場合もある。
大きく崩れている個所もある。
坑木の上部には『くさび』が差し込まれている。
くさびが打たれていない坑木は『坊主柱』と呼ばれ、
基本細い方を下側に設置される。
鋼製のバケツ状のものがある。
これはキブルかもしれない。
立坑を掘削する際に下部の破砕した土砂を、
すくい出すためのバケットである。
下の階層に続く立坑には、
流れた緑青の跡がある。
緑青は銅が空気中の酸素や湿気などと反応することで自然に生じる。
「炭酸銅」と呼ばれる化合物で、銅が酸化することで生成する。
緑青は長年、有害な毒という認識であったが、
昭和56年から59年の調査で無害であることが立証された。
厚生省(現厚生労働省)の調査では、
毒物・劇物取締法において(1)毒物、(2)劇物、(3)普通物の分類中、
「緑青は普通物」に相当すると判定がなされている。
古いブレーカーボックスが残っている。
電気を遮断するスイッチ、
ここまで電気が来ていたのだ。
迷路でも坑道でも「左手の法則」が有効だ。
かならず左手を壁に沿わせて進む方法だ。
こうすれば閉塞していても一筆書きで通過できる。
鮮やかなブルーの坑道である。
経年変化の味わいという意味の「パティーヌ」は、
フランス語の緑青が語源となっている。
戻る