羊蹄山( ようていざん                                                [北海道]  1898m 

 

ジャガイモ畑と羊蹄山)

 昨年、幌尻岳に登った後、うまくいけば羊蹄山にも登って北海道の百名山は終わりにできたのだが、さすがに余力がなくて残ってしまった。という訳で、今年は羊蹄山。
 「北海道なら私も行きたい。」と女房が言うので、久しぶりに夫婦で出かける。もっとも、かつては一緒に登ったものの目が悪くなってしまった女房はニセコ高原でホテルステイ。汗だくで登る自分と優雅な一日を過ごす女房とどちらが楽しいか・・・

 羊蹄山に登るコースは4つあり、一番利用されているのは比較的楽に登れるという南からの真狩コースのようだが、今回は登山口がホテルから一番近い比羅夫コースにする。

 登山口の駐車場まで女房に送ってもらう。駐車場には10台程の車がとまっており、奥の草地には5〜6張りのテントもある。すでに何組かは登っているようだ。

比羅夫コース登山口

 

エゾアジサイ

 

ウバユリ

 登山道はエゾマツやカラマツ、ミズナラ、シナノキなどの森の中を緩やかに登っていく。いつ倒れたのかは分からないが、倒木が多く、くぐったり乗り越えたりでエネルギーを使う。
 比羅夫コースは山の西側を登るので、朝陽が当たらず日陰を歩けるのでありがたい。北海道は数日前までは曇りがちの日が続いていたようだが、昨日は晴れてかなり暑かった。今日は曇りの予報だが、青空が広がり陽射しはたっぷり。今日も暑くなりそうだ。

 

  一合目の標識を過ぎると急に傾斜がきつくなり、高度が上がっていく。二合目の手前に風穴の看板があり、左手の山腹にそれらしき穴がある。少し登ってそばまで行ってみるがあまり涼しくはない。手をかざしてみると岩の隙間からかすかに冷気が流れ出ているようで、量が少ないので斜面に沿って下ってしまっているようだ。

 そういえば、5月末に登った祖母山にも風穴があった。あちらの方が規模が大きいが、ここと同様、あまり涼しくなかった。

風穴

 

 登山道には合目を表す標識が設置されていて、単調な登りでも目安がついてありがたい。
 DETA欄のコースタイム表に記した合目ごとの標高はヤマレコに記載されていたもので、登山口にあった案内図の数字とは違っている。どれが正しいかは分からないが、歩いた感じは割に合っているように思われる。

 

四合目

 

 四合目で朝食代わりの助六を食べる。カラ類の混群が賑やかに鳴き交わしながら頭上を過ぎていく。
 同じ頃出発した若い女性3人組が「暑いですね。」と声を掛けて追い抜いていく。山ガールの見本のようなスタイルで、姿が見えなくなっても、時々山中に若々しい嬌声と笑い声が響く。 賑やかではあるが、何となく山おばさんたちのしゃべり声よりも心地よい。(あくまでも個人の感想です。)

 

 登山道はずっと森の中を行くのだが、 所々視界が開け、倶知安の町や四角く区画された畑などが見下ろせる。隣のニセコアンヌプリは少しずつ低くなっていく。
 五合目あたりから所々登山道が溝状になるところもある。
 六合目附近からだんだん樹木の背が低くなり、灌木状のダケカンバが多くなってくる。傾斜もきつくなり、ひたすら登る。少しずつ増えてくる足元の花が慰めになる。
 途中で追い越した山ガールたちの声がいつの間にか聞こえなくなった。

ニセコアンヌプリ (六合目手前から)

 

ヤマブキショウマ ハイオトギリ

 

 九合目は避難小屋への分岐。ここで森林限界を超え、一気に視界が開けて高山の雰囲気になる。岩場とハイマツが パッチワーク状に広がり、花も種類がぐっと増える。

 九合目とは言うものの標高は1680m。山頂までの標高差は200mだが、火口まで登り、その縁を巡っていかなければならないので、まだ距離は長い。
 花を眺めながら取りあえず火口縁を目指して登る。

チシマアザミ
 

九合目分岐

 

ウラジロタデ

クルマユリ

 

チシマフウロ

火口縁を目指して登る、左のピークは北山

 

オオカサモチ

コケモモ

 

エゾノマルバシモツケ

 

 今回の山行の楽しみの一つがエゾノツガザクラに再会することだった。エゾノツガザクラは本州のアオノツガザクラを紫色にしたような花が咲き、学生時代に大雪・十勝を縦走した時以来、お目にかかっていない。
 羊蹄山の高山植物帯にも、ほぼ北海道にしかないこのツガザクラが生えているはずなのだが、見当たらない。火口縁まで登ったけれどそこまでのコースでは見つからなかった。残念だが東の斜面から雲が湧き始めたので先に進む。
(後で調べたら、どうやら最初に登りついた母釜(小さい火口)の縁に群落があるらしかった。)

母釜

 

イワギキョウ

 

ヒメイワタデ

 

 火口の縁を左手に回り北山を越えるとはるかに大きな火口の縁に立つ。こちらがメインの火口で父釜とも言われる。すり鉢状という言葉のとおりの形状で、こちら側の縁は割合なだらかだが、反対側は鋸の歯のように ギザギザしている。山頂はその歯のうちのひとつで、比較的手前に近いところにある。
 北東側の山腹から雲が湧き始めているが、山裾にきっちり区画されたいかにも開拓地という感じの畑が広がっているのが見える。

 

左端のピークが山頂
 
区画された畑と蛇行する川

 三角点のピークを過ぎ、歩きにくい岩場を少し行くとやっと山頂に到着。夫婦連れと思われる一組だけが休憩している。山頂は尖った岩の集まりで、最高点には立ちにくい。
 湿度が高く、遠くは霞んでしまっているが、かすかに中島を浮かべたドーナツ状の洞爺湖が見えるのがうれしい。昨日、支笏湖から来る道中で、羊蹄山の子供のように見えた尻別岳も見下ろせる。
 パンを食べている間にだんだん登山者が増えてきた。火口壁の北から来る人と、南から来る人と同じくらいに思われる。どのコースも同じようなコースタイムなので、早朝から登り始めるとちょうどこの時間帯になるのかもしれない。

 

羊蹄山山頂
 
山頂から火口を見下ろす

 火口を一周して戻るために、火口壁を時計回りに南にたどる。いきなりザレ場で転んで腰と肘を打つ。気を付けなければ。

 南側の火口壁は岩場続きでこちらの方が時間がかかる。大きなイワブクロの群落がある。

岩場が続く火口壁
 

イワブクロ群落

 

イワブクロ

 

避難小屋を見下ろす

 

真ん中のピークが山頂 (真狩コース分岐から)

 

 火口を1/3ほど回ると岩場は終わり真狩に下るコースの分岐。左手下に新しい避難小屋が見える。分岐を直進し、少し登ると旧避難小屋の基礎が残っている。かなり大きな小屋だったようだ。錆びた井戸ポンプが転がっているが、こんな山頂に水が出たのだろうか。

旧避難小屋跡

 

ノゴマ

 

 小屋跡から火口壁を外れてハイマツの斜面を下る。ハイマツが踏み跡にかぶさっていて、半袖の腕に松葉が痛い。
 ハイマツの陰にイソツツジの花が咲き残っていた。この花も東北以北でないとみられない。

 登山道に戻ったところで周回は終わり。下山にかかるが、九合目の手前で左手の踏み跡に入る。エゾノツガザクラを探すためだったが、エゾゼンテイカの咲くお花畑の上に出ることができた。ここのお花畑が一番大きかった。
 

イソツツジ

 

九合目のお花畑

 

エゾゼンテイカ

 

  九合目の分岐に戻り、後はひたすら下るだけ。しかし、暑い。登りは日陰だったが、下りは陽が回ってもろに当たる。
 六合目で一度休んだ後、なるべく風通しの良い日陰で休みたいと思うのだが、適当なところがない。灌木帯から樹林に入った方が涼しいかと思ったが、風は笹薮の上を抜けて行くだけで、道の上まで下りてくれない。五合目、四合目、三合目も風がなく、休めずに下り続ける。ふと思い出して、風穴まで下ったら、ほんのり涼しい。わずかな冷気が山肌を登山道まで這い下りてくる 。何とか生き返った。
 

 不覚にも羊蹄山の標高を登り始めるまではっきり認識していなかった。イメージとしては利尻山と同じくらいで1700mくらいだと思っていが、地図を確認して1900m近くあることに気が付いた。登山口の標高は約350mなので、標高差は1650mもある。利尻山は海抜0mから登るのできついと言われているが、羊蹄山の標高差もほとんど変わらないではないか。
 登り始めてからこの事実に気が付き、感情を抑え、ひたすら登り、ひたすら下った羊蹄山登山だった。

シナノキの花
 

羊蹄山ルートマップ


[山行日] 2018/7/25(水)
[天気] 晴れ時々曇り       2018年7月の天気図(気象庁)
[アプローチ] 7/24 自宅 7:05 →(自家用車)→ 8:35 空港ジャンボ駐車場 8:50 →(送迎バス)→  中部国際空港 9:45 →(ANA)→ 11:40 新千歳空港 12:30 →(レンタカー、支笏湖観光)→  16:30 ホテル「木ニセコ」

7/25  ホテル「木ニセコ」 5:20  →(レンタカー)5:30 登山口

・トイレ、水場あり。30台程駐車可。

[コースタイム]  
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
1:20 5:40 比羅夫コース登山口(350m)発    
6:15 一合目    
6:20 風穴 (540m)    
6:40 二合目 (620m)    
7:00 三合目 (750m) 0:10  
1:10 7:10  
7:25 四合目 (850m)    
7:55 五合目 (1030m)    
8:20 六合目 (1210m) 0:05  
1:20 8:25  
8:55 七合目 (1400m)    
9:25 八合目 (1590m)    
9:45 九号目 (1680m) 0:05  
0:50 9:50  
10:15 母釜の縁    
10:40 羊蹄山山頂 (1898m) 0:35  
0:40 11:15  
11:55 真狩コース分岐 0:05  
0:55 12:00  
12:10 避難小屋跡    
12:40 九合目    
12:55 八合目 0:05  
0:40 13:00  
13:20 七合目    
13:40 六合目 0:15  
1:25 13:55  
14:10 五号目    
14:35 四合目    
14:50 三合目    
15:05 二合目    
15:20 風穴 0:10  
0:25 15:30  
15:55 比羅夫コース登山口着   全行動時間
8:45     1:30 10:15

     <コースタイム8:40>

[ガイドブック] 百名山登山ガイド 上」 山と渓谷社

 

[宿]

ホテル「木ニセコ」
・ニセコグランヒラフスキー場の下にあるリゾートホテル。
・一泊一人約10,000円(朝食付き)
・ダイニングバー杏の食事は高いが美味しい。
・温泉はあまり広くない。

[風景印] 京極(きょうごく)局
 (虻田郡京極町京極669)

・図案
 羊蹄山、ふきだし公園の名水プラザ、噴き出し口