樽前山( たるまえさん                                                [北海道]  1022m 

 

 幌尻岳から


 
幌尻岳から下山後、予約電話をかけるがビジネスホテルはどこも満員。最後にかけた苫小牧の郊外にある素泊まり宿が空いていて、21時に転がり込む。工業団地が近くにあり、ビジネスマン用の宿のような感じだが、オーナーが親切で居心地がよかった。久しぶりに周りを気にせず眠ることができ、疲れを取ることができた。

 北海道旅行の最終日は5日間のうちで最も天気が良く、空気も爽やかで気持ちがいい。緊張した幌尻登山の後では、天気の心配がなく、気楽に歩けるのが何とも嬉しい。

 樽前山の七合目の駐車場はウィークデイにもかかわらず8割以上埋まっており、しかもまだ車が上がってくる。人気の山なのである。
 
登山口のノートに名前を書いて出発。ナナカマドやミヤマハンノキの木陰を登っていく。

登山口

 

登山道

 

展望台から支笏湖

 展望台と名付けられたところまで来ると林が切れ、展望が開ける。支笏湖の湖面も見える。
 さらに登るとじきに森林限界を抜けてしまい、見上げると山頂がすぐそこに見え、広大な砂礫地の斜面が続いている。眼下に広がる森はその果てが地平線の霞まで続いているようで、北海道の雄大さをつくづくと思い知らされる。苫小牧から車で30分ほどなのに、こんな景色が見られるのだ。
 

シラタマノキの実

 

モウセンゴケ

 砂礫地にはシラタマノキが多く、既に白い実をたくさん付けている。コメバツガザクラらしきものも多いが、花がないので目立たない。
 樽前山に多いことからタルマイソウ別名を持つイワブクロがわずかに咲き残っていた。もう花期には遅く、見られないと思っていたので嬉しかった。
 砂礫の中にモウセンゴケが生えているのに気が付いた時には驚いた。湿地に生えるものだと思っていたが、こんな乾いたところでも生きられるのだ。

 

咲き残りのイワブクロ(タルマイソウ)

 

 登山道は砂礫の斜面を巻くように登っていて、だんだん山の 東側に回り込んでいく。東斜面には砂礫地にタデ科の植物(おそらくオンタデ)が点々と広がり、山裾からは森が続いている。その先は太平洋であるが、海岸線あたりから霞んでぼんやりしている。
 風が強くなり、長袖シャツを羽織る。

東斜面
 

 外輪山の縁に着くと一気に景色が変わる。
 眼前には奇怪な溶岩ドーム。その周りは広く何もない火口原。溶岩ドームからは噴煙が上がり、現在も活動中であるため、火口原は立入禁止だ。
 右手は外輪山最高地点の東山。左手にも外輪山が続き、西山ピークを経てぐるりと一周できるが、今日は時間がないので東山ピークを目指す。

溶岩ドーム
 
東山ピークからのパノラマ。 溶岩ドームの左手に西山ピークが見える。

 

 10分ほどの登りで東山ピークに到着。ここからは火口原が一層広く見え、溶岩ドーム の噴煙もよく見える。振り返ると山裾には七合目の駐車場や帰り道の北東斜面お花畑がジオラマのように見える。
 北には風不死岳。その両側に支笏湖の水面がはみ出している。恵庭岳は風不死岳のちょうど真後ろになるようで、山頂付近がわずかに覗いている。
 山頂には入れ替わりハイカーが訪れ、賑やかだ。ウィークデイのためか中高年の夫婦連れが多いが、賑やかな山ガールの一団もやってくる。駐車場の車は地元ナンバーが多かったが、レンタカーも混じっていたので、北海道外のハイカーもかなりいるようだ。

 

溶岩ドームの脇から噴煙が上がる

 

風不死岳。その左手前が932m峰.

 東山ピークからは外輪山を北に932m峰に向かう。最初のうちは外輪山の上を歩いている感じだが、だんだん縁が低くなり、単なる火口原と山腹の境目を歩いているような感じになる。
 火口原側にはオンタデが、山腹側にはシラタマノキが多いような気がする。それにしてもこんなにたくさんのシラタマノキの実は見たことがない。山腹一面に白い玉がばらまかれているようだ。

東山ピークを振り返る
(縁の上を登山道が通っている)

 

砂礫地の沢底に集まるオンタデ

 

斜面一面にシラタマノキの群落

 

 左から西山ピークからの道を合わせ、少し下った鞍部では右からお花畑からの道が登ってくる。932m峰へはここからまた岩がちの道を登る。別に鞍部からお花畑へ下ってもいいのだが、登ってみたら登ってみただけの価値はあった。少し離れたことで、樽前山が複式火山であることがよく分かる。東山、西山の外輪山のピークと真ん中のプリンのような溶岩ドームが一目で見渡せる。なかなか面白い。
 支笏湖の向うには遠く羊蹄山と尻別岳が裏返しの夫婦岩のように並んでいる。羊蹄山の山頂が雲の中なのが少し残念。

 

932m峰から樽前山
 
支笏湖越しに羊蹄山

 932m峰から下りてきて北東斜面お花畑に差し掛かると、道の両側にハイマツやイソツツジが多くなる。花の季節ではないのでお花畑というより、低木を植えこんだ自然風の庭といった感じだ。
 イソツツジはすっかり実になってしまっているが、これだけたくさんあると、花の時期はさぞかし見事なことだろう。

 

イソツツジの実

 

北東斜面お花畑

 

色づき始めたオオイタドリ

 

エゾリンドウ

 

 気分の良い山腹の道は灌木や草原から、再びミヤマハンノキなどの樹林の道に戻る。気分の良いまま林間を進めば、七合目の駐車場の入口の横に飛び出す。
 駐車場の車は少なくなったが、まだ半分くらいは残っていた。

 下山後は支笏湖畔でのんびり。湖畔の園地の木々を抜けてくる風が実に爽やかで気持ちがいい。「ああ、家に帰るとまだ暑いんだろうなあ。」と、特に湿気の多い今年の夏を思い出す。

支笏湖畔からの樽前山

 

 

樽前山ルートマップ


[山行日] 2017/9/1(金)   2017年9月の天気図(気象庁)
[天気] 晴れ
[アプローチ]

9/1 苫小牧市勇払 8:10 →(レンタカー/日高道・沼ノ端西IC⇒道央道・苫小牧西IC、道道141号)→ 9:05 樽前山七合目駐車場

・トイレあり。70台ほど駐車可。
・満車になると林道入口の五合目のゲートで通行止めになるらしい。
・五合目と七合目の間は未舗装。

[コースタイム]
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
0:55 9:30 七合目駐車場 (660m)    
10:15 外輪山分岐通過    
10:25 樽前山山頂 (1021.9m) 0:30  
0:50 10:55  
11:45 932m峰山頂 0:15  
0:55 12:00  
12:55 七合目駐車場 (660m)   全行動時間
2:40     0:45 3:25
     <コースタイム2:50>
 
[帰り道]

支笏湖畔 16:10 →(レンタカー/道道16号)→ 16:55 新千歳空港 19:15 →(JAL)→ 21:20 中部国際空港 →(送迎バス)→ 空港ジャンボ駐車場 → 22:50 自宅

[ガイドブック] 「日本二百名山登山ガイド 上」(山と渓谷社)

 

[宿]

おやど 翔馬館
・苫小牧市勇払の宿。素泊まり3,800円。
・風呂、トイレは共同だが、居心地は非常に良い。オーナーが親切で感じが良い。
・コンビニがすぐ目の前で便利。
・お湯や食器も使える。

[風景印] 支笏湖(しこつこ)局
 (千歳市支笏湖温泉番外地)

・図案
 樽前山、風不死岳、支笏湖