七面山( しちめんざん) [南アルプス] 1982m |
今年の1月に青笹山に登り、南アルプスの展望を満喫したのだが、惜しむらくは少し遠い。それに荒川三山から北の山々が見えない。どこか他にいいところはないかと探した結果、七面山を見つけた。アルプスが白く輝くころが見応えがあっていいと思うのだが、七面山は2000m近い標高があるので、真冬はちょっと厳しい。まあ晩秋のこの時期ならまだ大丈夫だろうと、登ってみることにした。 |
11月27日 |
|
|
登山口の冠木門
|
白糸の滝の橋から稜線を見上げる |
登り始めてすぐに神力坊というお堂があり、それを過ぎると大きな杉木立の間をジグザグに登るようになる。そこそこ急な登りで、土留めを兼ねた階段が続くが、参道なのでよく整備されていて歩きやすい。 |
|
表参道
|
参道には一丁毎に奉納の石灯篭が建っていて、登拝の目安になる。登山口の冠木門が元丁で山上の敬慎院が五十丁になるらしい。一丁は約108mなので、正しく測られていれば5.4kmの道のりになる。ちなみに標高差は1260mもある。 参道沿いには燈籠のほかに奉納されたベンチ(ポリカーボネートの屋根付きのものもある)がたくさんあり、休憩場所には困らない。 |
|
丁目毎の灯篭と古い丁目石
|
参道には十三丁目、二十三丁目、三十六丁目のところに坊があり、それぞれ50人以上入れそうな休憩所がある。季節には飲み物やところてんなども売っているようだが、今は売店は閉まっている
十三丁目の肝心坊で休んでいたら、お坊さんが登って来て、お堂の前でお経をあげてまた登っていった。やはり信仰の山である。 |
|
十三丁目、肝心坊
|
二十九丁目の先にこの参道で唯一展望が開けたところがあり、北側に向いたベンチに腰掛けてパンを食べる。今日は南風なので、尾根の北側は風下になり、日陰でもさほど寒くはない。 |
|
展望地から見下ろす赤沢集落
|
食事を終えて再び登り始めるが、だんだん脚が上がらなくなる。歩きやすい道ではあるが、やはり1,000m超の登りはきつい。 |
|
三十六丁目の青雲坊
|
四十六丁目の和光門をくぐると両側に燈籠が立つ広い参道が真っ直ぐに伸び、山道から急に境内らしくなる。鐘楼のところで左に曲がって坂を登ると随身門前の広場に出る。 ここからは富士が真正面に見えるはずなのだが、富士の前に横たわる天子山塊の上部は、南からの風に次々湧き出る雲の中。と、思っていたら、雲が動いて山頂だけちらりと見えた。 |
|
和光門
|
|
|
富士の山頂がちらりと覗く |
随身門
|
神仏習合時代の名残なのか注連縄が懸った随身門をくぐると、階段が下っている。正面の本堂に向かって下って行くというのは珍しい。しかも石段ではなく、太い切株が埋め込んであるようなものだ。滑らないようにちょっと気を遣う。 |
|
|
階段下の本堂
|
一の池
|
本堂前に下りてきてまずはお参り。思わず手を叩きそうになるが、お寺であること言い聞かせながら自重する。本堂の右手には、回廊越しに一の池が見える。
お参りをしていたら敬慎院の建物の窓が開いて招き入れらた。引き戸を開けて中に入ると広い土間で、名乗らない先に名前を呼ばれて驚く。今日は泊まる人が少ないようだ。 |
|
敬慎院の入口
|
|
|
寺務所の上の神棚、左手廊下の左右が部屋
|
スケジュール板
|
土間つづきの部屋で宿泊の記帳をし、部屋に案内される。部屋には同室者の荷物が置いてあり、相部屋のようだ。 食事までまだ時間があるので外に出て一の池を見に行ったが、寒さが身に沁み、すぐに戻って来た。外の寒暖計は3℃を指していた。 |
部屋に戻ってしばらくすると、同室の人が入って来た。埼玉の川越から来たという60代後半と思われる信者の方で、以前は故あって毎月のようにお参りに来ていたと言われる。 |
|
夕食
|
さて、問題はこれから。6時半になると御開帳が始まるので、本堂に行く。今日の宿泊客は他に中年の女性が二人の計4人。手に数珠を持ってみえるので、こちらも信者の方のようだ。数珠の無いのは自分だけで、少々居心地が悪い。本
堂にはストーブが焚かれ、参拝者が座るところにはホットカーペットが敷かれているが、空気は目いっぱい冷えている。
それにしても寒いので、タイツやダウンベストを追加で着込み、7時からの夕勤(ゆうごん)に臨んだ。座椅子も用意されているが、座った方が脚が暖かいのでホットカーペットの上に正座した。 部屋に戻ると布団が敷いてあった。少し本を読んで時間を潰していたが、同室の方が布団に入ったので9時の消灯前に寝ることになった。服を着たまま寝たのでストーブを消してもさほど寒くはなかったが、布団がメチャクチャ重くて、安眠はできなかった。
|
|
|
日の出
|
御来光を拝んで本堂に戻るとまだ朝勤が続いていた。何やらいろいろな人の追善供養をしている。早口で次々に読み上げられるので全ては聞き取れないが、太平洋戦争や東日本大震災で亡くなった人はもちろん、毒ガスの実験台になった人、 シベリア抑留者、交通事故など不慮の事故で亡くなった人なども含まれている。対象は人だけでなく生きもの全てに及び、食料となった家畜のみならず害虫のハエや蚊、ひいてはヒアリまで出てきたのには驚いた。最新の情報が盛り込まれた追善供養だった。
朝勤が終わると部屋で朝食。夕食よりももっと質素な感じ。身支度をして出発する。外の寒暖計は−3℃を指していた。 |
七面山山頂へは隋神門を出て右に向かう。すぐに荷揚げケーブルの作業場が見えてくる。 ふと見ると左手の斜面に鹿が立っている。角の大きな雄鹿だ。何で動かないのだろうか、と思った瞬間、足元から別の鹿が飛び出した。だが、その右後しろ脚にケーブルのようなものが 絡まっていて逃げられない。残った三本の脚で逃げようと暴れるので、引っかかった細い脚が折れそうだ。自分がいると暴れ続けると思い、急いでその場を離れた。 |
|
心配そうに見守る鹿
|
はてさて、どうしたものか?
|
登山道はカラマツ林をゆるゆると登っていく。カラマツの枝にサルオガセがたくさん着いている。乾燥に耐えるカラマツと空中の湿気を好むサルオガセの組み合わせは、ちょっと変な感じがする。
カラマツ林の先はナナイタガレの崖になっている。危険なのでロープが張ってあるが、気を付けながら覗くと遥か下まで崖が続いている。絶えず小石が落ちる音がカラカラと不気味で、崩壊が進むと稜線の登山道が削られて無くなりそうだ。 |
|
サルオガセ
|
|
|
ナナイタガレの崩壊地
|
光る富士川の先は駿河湾
|
|
|
シラビソの中を登る
|
山名盤
|
ナナイタガレの横の急登を過ぎると道は緩やかになり、周りはシラビソに変わる。そして、そのシラビソの森が切れたところが七面山の山頂だった。 三角点の横に山名盤が据えられているが、展望は全くない。山名盤には1982年8月と彫られていて、標高と同じ年を記念して設置されたのだろうが、当時は周りの木がまだ低くて、展望が利いたのだろうか? |
少し先の1980m標高点は喜望峰と名付けられ、展望が開けるということなので、山頂では休まず先に進む。 七面山山頂付近は地形が複雑で、二重稜線や窪地などがあって分かりにくい。V字谷に削り残された準平原が残る幼年期地形、なんていう地理用語が思い出されるが、当たっているかどうかは分からない。 一旦かなり下って登り返したところで今まで見えなかった西側の展望が一気に開ける。ここが喜望峰らしい。 |
|
喜望峰へ向かう道
|
|
喜望峰からの南アルプスのパノラマ
|
眼前には南アルプスのパノラマが広がり、満足感も広がるが、すぐに赤石岳が見えないのに気付く。笊ヶ岳が赤石を隠しているのだ。ありゃ〜!
笊ヶ岳は「赤石隠し山」だったのか。 |
|
布引山(左)と笊ヶ岳(右)
|
|
|
塩見岳
|
白根三山(右端が北岳)
|
聖岳の左には上河内岳の三角が前衛の稜線の上に覗き、さらに左には光岳も見える。そのまま左に視線をやれば、大無間、小無間も見える。 |
|
聖岳
|
|
|
下山途中で赤岳が見えるポイントが一ヶ所ある
|
ナナイタガレからの富士山
|
下山は同じルートを戻る。山頂を越えてナナイタガレまで来ると、正面に富士山が大きい。美しさに呆けて眺めていたら、ナナイタガレの崖下から風が吹きあがってきて砂塵が舞い上がった。お茶でも飲もうかと思っていたが、残念ながらゆっくりできなかった。 |
荷揚げケーブルまで戻ってきて、さて鹿はどうなったかと斜面を覗いてみると、立ち尽くしていた雄鹿はいなくなったが、ケーブルが絡まった鹿はまだ座り込んでいた。よく見ると角が小さい若い雄のようだ。近付くとまた逃げようとして、まだ外れていないことが分かった。 |
|
隋神門前からの奥秩父連峰
|
|
|
展望地から望む白根三山
|
左手奥に鳳凰三山も見える
|
二十九丁半の展望地で今日も昼飯にする。今日は晴れていて最後の眺望を楽しむ。ここからも左手端に北岳が見えて驚いた。八ヶ岳は鳳凰三山の後ろになるようだ。富士も見えているが、だいぶ雲が懸って来た。昨日と同様に午後には雲に覆われてしまうのかもしれない。 今日は天気が良いせいか、登ってくる人が多い。信仰の山という理由だけではないが、お年寄りが多いような気がする。まあ、こんな山には山ガールは来ないわなあ、と思っていたが、登山口で若い女性4人組に出会って驚いた。意外に間口の広い山なのかもしれない。 |
[山行日] | 2017/11/27(月)〜28(火) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[天気] | 11/27:晴れのち時々曇り 11/28:快晴 2017年11月の天気図(気象庁) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[アプローチ] |
新東名・新
清水IC → (R52号) →
身延町下山 →(県道37号)→ 羽衣(七面山登山口駐車場) [約50km] |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[コースタイム] |
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[地図] | 七面山 (1/25000) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[ガイドブック] | 身延山久遠寺のHP(七面山登拝案内) |
[風景印] |
七面山口局 (山梨県南巨摩郡早川町高住645-24) ・図案 |