尾高山( おだかやま)                              [南ア] 2212m

 

 しらびそ高原に来るのは二度目。前に来たのは1990年だから、23年前。当時はまだ三遠南信自動車道の矢筈トンネルがなくて、中央道の松川ICから大鹿村に入り、地蔵峠を経由してしらびそ高原に登ってきた。
 その時は南アルプスが新雪をまとい、カラマツの黄葉と相まって素晴らしい景色だった。(その時の様子はこれ。)
 今回もそんな黄葉を期待しつつ、しらびそ峠から、より展望の良さそうな尾高山を目指すことにする。

 昨日の雨も上がり、飯田盆地は霧の中。朝の霧はいい天気を保証してくれるものなので、気にならない。矢筈トンネルを抜け、林道を駆け上がったしらびそ峠からは予想通り南アの展望が広がる。
 しかし、雪は積もっていないし、カラマツもまだ緑がかっている。少し時期が早かったようだ。前回のときより1週間早いのだが、これ程違うものだろうか。今年は暖かい秋だから、それも影響しているのかもしれない。
 だが、すぐそばの宿泊施設「ハイランドしらびそ」まで上がってみたら、背後の眺めが素晴らしい。足元の谷間も、飯田盆地も雲海で埋まり、その向こうに恵那山から茶臼山につながる峰々が浮かんでいる。さらに右手には少し雲に隠れて はいるが、中アの空木岳や南駒ヶ岳が続いている。カラマツの黄葉が進んでいれば、もっと素晴らしいのに残念だ。
 

荒川前岳
 
大沢岳、中盛丸山

遠景右端が恵那山
 
中央アルプス。中央あたりが空木岳。


 
さて、展望を楽しんだのでしらびそ峠に戻り、尾高山に登る。
 峠には車が3台止まっていて、遠く千葉や和泉ナンバーがついている。尾高山がそんなに人気があるとは思えないので不思議だったが、登山口の案内板を見て納得した。尾高山を越えて奥茶臼山に登れるらしい。
 奥茶臼山は日本三百名山に入っているので、それを目指す人の車だろう。奥茶臼山は地蔵峠の大鹿村側から延びる林道を延々と詰めて登る道があると聞いたことがあるが、こちらからでも登れるようだ。

 

手前が前尾高山 (ハイランドしらびそ前から) 登山口
 

 登山道に入ると、いきなりカラマツ林の急登。ジグザグを切りながらゆっくり登る。黄葉にはまだ早いが、林床を笹に覆われた林は明るく、気持ちがいい。

 時々尾高山まであと○○Mという標識が現れる。この標識は500m毎に山頂まで続いている。

 右手にビューポイントの矢印があったが、取りあえず先を目指すのでパス。前尾高山の山頂近くにもまたビューポイントの案内があったので、休憩がてら立ち寄ると、木の間から荒川前岳が良く見えた。

 地形図に2089mの標高点があるのが前尾高山。山頂はコメツガなどの針葉樹で覆われ、展望はない。苔むした倒木があちこちに転がっている。
 

カラマツの斜面を登る
 


 登山道は前尾高山からは少し下った後、アップダウンを繰り返しながら少しずつ標高を上げていく。
 ここで、今回の山行で唯一出会った登山者とすれ違う。時間的には奥茶臼ではなく、尾高山への登山者だろう。自分と同様、尾高山を目的にする人もいたのだ。

 途中、登山道を塞いで何本か針葉樹が倒れていた。まだ折れ口が新しいので、先月の台風18号のせいだろうか。折れ口を見ても特に腐ったり、虫に食われたりした様子はなく、森の中で限られた木だけ倒れてしまうのは不思議だ。
 

真新しい倒木
 


 
前尾高山あたりから針葉樹林になる。最初のうちはコメツガやトウヒが多いが、だんだんシラビソが目立ってくる。しらびそ峠というくらいだから、シラビソが多いのはあたりまえか。

 尾高山への稜線は右側(東側)が急な斜面で、左側(西側)が緩やか。そんな緩やかな斜面は一面のシラビソの森で、林床は苔で見通しがいい。倒木の上も苔で覆われている。そんな森の中を登っていく。

 針葉樹の松脂の匂いが心地よい。静かさと松脂の匂いが落ち着いた気分にさせてくれる。この匂いははるか昔の学生時代に、南アルプスの南部の大無間山から悪沢岳を縦走した時のことを思い出させる。歩いても歩いても続く大無間山の針葉樹と苔の森を、踏み跡を探しながら彷徨った夏合宿のことを。
 それにしても、本当に静かな山だ。
 

シラビソの道
 
光岳、加加森岳、池口岳


   少々変化のない風景に飽き始めたころ、稜線が狭くなり、山道に岩が出てきて、急に山頂の標識が現れた。三等三角点があるものの、周りに展望はなく、稜線上の高みといった程度の山頂だ。
 

倒木の多いシラビソの森
 
尾高山山頂
 

 山頂の先の右手に少し開けたところがあり、ここから赤石岳などが見えるはずなのだが、いつの間にかガスが湧いてしまっていて、何も見えない。登ってくる途中で南アの稜線に雲が増えてきたのは分かっていたが、まさか、こちらの稜線までガスが湧いてしまうとは思っていなかった。せっかく登ってきたのに、骨折り損だった。がっくし。
 もっとも、切り開きの周りの木が大きくなってきていて、ガイドブックにあるような展望が望めるようには思えない。晴れていてもどこまで見えたことか。

ガスで何も見えず
 


 
奥茶臼山に続く稜線を先に少したどり、もうひとつの展望地まで行ってみたが、こちらも樹木が邪魔していて、あまり展望が利きそうにもない。仕方なく、山頂に戻ってラーメンを作って食べる。
 

 帰りは来た道を戻る。苔の写真を撮りながら、のんびり下る。

 登山口まで戻って、ふと見ると「熊出没注意」の看板が立っていた。唯一すれ違った登山者が熊鈴を鳴らしていたので気にはなっていたのだが、やはり出るのだ。
 自分も熊鈴は持ってきているのだが、登るときは全く標識に気が付かず、ずっとザックの中にしまったままだった。登るときは気が急いているので注意が散漫になっているのだ。気を付けねば。

苔の上の植物
 

 尾高山の後、御池山にも登るつもりだったのだが、展望が利かなくなってしまったので、やめて下栗の里に寄ることにした。途中の紅葉、黄葉もまだイマイチではあったけれど、それなりに楽しむことができた。

 下栗の里では、ジャガイモを焼いていて、珍しいので食べてみた。下栗の里の急斜面の畑でとれるものだが、日本にジャガイモが伝わった頃のものが山奥に残ったということで、ジャガイモの原産地であるアンデスの原種に近いものだそうだ。甘みがあってうまかった。

紅葉の
 
ダケカンバの多い山腹
 
下栗の里 (天空の里ビューポイントから)
 

 

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[山行日] 2013/10/21(月)
[天気] 晴れのち曇り
[アプローチ] 飯田IC (R153、県道18号)→ 弁天橋 →(県道83号、矢筈トンネル)→ 飯田市程野 →(林道)→ しらびそ峠     [約40km]
      
・10台程の駐車スペースあり。近くのハイランドしらびそには屋外トイレもある。
[コースタイム]
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
0:30 9:40 しらびそ峠出発 (1833m)    
10:10 前尾高山ビューポイント 0:10  
1:00 10:20  
10:25 前尾高山 (2089m)    
11:20 尾高山山頂 (2212m) 0:55  
0:50 12:15  
13:05 前尾高山 0:10  
0:25 13:15  
13:40 しらびそ峠到着 (670m)   全行動時間
2:45     1:15 4:00
登り 1:30        
下り 1:15        
[地図] 大沢岳 (1/25000)
[ガイドブック] マイカー登山ベストコース[名古屋周辺]  山と渓谷社