日本コバ(にほんこば)                               [鈴鹿] 934m

 

 「日本コバ」。ちょっと変わった名前の山。山名の由来には諸説あり。「日本一のコバ(木場)」とか、「コバを二本立てる(休憩する)間に登れるから」とか。

 道の駅「奥永源寺渓流の里」の国道をはさんだ反対側にある登山者用駐車場に車を止めて出発。既に10台ほどの車が止まっていたが、下山後も全く同じ車が止まっていたので、ひょっとしたら登山者の車ではなく、地元の人の車かもしれない。
 
国道を少し進み、愛知川本流、御池川の二つの橋を渡り、如来堂登山口から山道へ。登山口には登山届のポストがある

丸太橋

 

 暗い植林地の道を進み、右手に神社跡地を見て藤谷川の流れに出る。ここで最初の丸太橋を渡る。谷の狭さの割には水量が多い。
左岸側に渡った登山道はかなり高く山腹を巻いていき、何本も小さな支流を渡る。
 再び谷筋に下りたところに大きなカツラの木があり、そこで徒渉をして右岸に移る。

 

カツラの黄葉

 

藤谷川の流れ

 スギやヒノキの植林地の中に所々石積みが残っている。こんな暗い山中なので段々畑ではない。ガイドブックによれば木地師に関わる「藤川千軒」という集落があったらしい。このあたりは木地師発祥の地である。

 

石積み

 

 なおも進むと「ヒョウの穴」の標識があった。ネット情報ではコウモリの住む岩穴があるらしいが、標識に片道7分とあるのでパスする。

 昨日から冬型の気圧配置になって、日本海に近い鈴鹿北部では強い北風によって稜線に雲が湧いていて、時々こまかい時雨が降ってくる。気になるほどの雨ではないが、暗い谷間では気が滅入る。

 

苔岩の道

 

  植林地から落葉樹林に変わると林地内の転石や登山道脇の岩にびっしりと苔が生えている。谷を沿いだけあって湿度が高いようだ。春から夏にかけてはヒルだらけになりそうだ。
 今年の秋は気温が記録的に高いためか紅葉にはまだ早く、全体的には黄緑色といった感じだ。

  

沢の合流点の滑滝

 

  藤川谷が二股に分かれるところで一休み。明るく開けていて気持ちがいい場所だ。まだまだ沢の水量が多い。
  ここからしばらく左俣に沿って登っていく。こんな奥地でも炭焼き窯の跡がある。

 一旦流れから離れて斜面を登っていくが、間もなく左に沢をのぞき込むトラバース道になる。なおも登ると石灰岩の岩場になりロープが取り付けられている。岩場をよじ登ると岩棚があり、初めて展望が開けた。
 眼下の藤川谷の向こうに尾根が一本横たわり、その先に鈴鹿の主稜線の山が見える。藤原岳かと思ったが、スマホの展望アプリで調べると竜ヶ岳だった。

 

ロープの張られた岩場

 

竜ヶ岳

 

 岩棚に面した岩壁の端に「岩屋」と書かれた小さな木の札が下がっていて、石灰岩の隙間に穴が開いている。中に入ってみると4畳半くらいの広さがある。岩の隙間から光が入ってくるので真っ暗ではない。雨宿りくらいはできそうだが、片側の天井が低くなっていてかなり圧迫感があり、正直なところあまり長居はしたくない。 この岩屋は「奇人の窟」とも言われるようだ。

 

岩屋の入り口

 

 岩屋の先は一変してなだらかな登山道になり、山上台地の上に乗ったのが分かる。足元にはアセビの木が目立つ。
 しばらく行くと政所道の分岐でそこを左折する。下り気味の道を進んでいくと湿地のようなところを横切り、その先は落葉樹林の間を小川が流れる日本庭園のようなところになった。山上の景色とは思えず、意外な展開にテンションが上がる。

 

台地上の流れ

 

なおも樹林帯を登る

 

 二、三度流れを渡り、右手の斜面に取付いたらもう山頂は近いのかと思ったら、まだまだ登りがあった。左手から緩やかな稜線を合わせ、落ち葉を踏んで進んでいくとやっと少し開けた山頂に着いた。

 

日本コバ山頂

 

 山頂には三等三角点があったが展望は効かない。こんなことなら先ほどの岩棚のところでもっとゆっくり展望を楽しめば良かったと後悔する。
 家に帰ってから昭文社発行の「2001年度版山と高原地図 霊山・伊吹・藤原」の日本コバのコースガイドを見たら、当時は西側の展望が開けて眼下に田んぼが開けた山間の風景が見られたそうだ。今では木が生い茂ってしまい、わずかに 東側の樹間に竜ヶ岳と思われるピークが見えるだけだ。

 山頂の西側に踏み跡が続いているので少し進んでみると、落ち葉が敷き詰められた気持ちのいい落葉樹林の尾根が続いていた。樹林の一本に木札が取り付けられていてそこには
「外輪山周回コース 政所道出合いまで約1H程度要す」
と書かれていた。
 国土地理院の地形図にはそれらしい破線が藤川谷の源頭部分をぐるりと取り囲むように描かれている。登る前は「この破線は何だろう、昔の植林用の作業道だろうか?」と思っていたが、どうやら踏み跡が生きているらしい。火山でもないのに外輪山とは大げさなとは思うが、ちょっとそそられるネーミングだ。機会があったら踏み込んでみたいものだ。

 

外輪山周回コースの入り口

 

 カップヌードルの昼食を済ませて下山に掛かる。食事中に2組3人が登ってきたが、本日出会った登山者はこれだけだった。

 分岐まで戻り、政所道を下る。こちらはずっと尾根道だがこちらも展望は効かない。樹間からちらちら鈴鹿の主稜線が見える程度。
 唯一、衣掛山山頂の手前に北側の植林地の切れ間があり、山並みの向こうに彦根あたりの街並みが見える。一見すると平野が広がっているだけのように見えたが、よく見ると街並みの先の広がりは琵琶湖だった。カメラの望遠を効かすとぼんやりと竹生島まで見えた。
 

琵琶湖

 

政所道

 政所道は明るい落葉樹林や暗いスギ、ヒノキ植林地などが取り混ざった尾根をひたすら下る。途中モミの大木が何本も見られたのが特徴的か。
 下り立った政所は茅葺き屋根の残る山間の小さな集落で、すっかり晴れて日射しの戻った空の下、舗装道路を歩いて道の駅に戻る。
 
 

政所の集落から
下りてきた尾根を見上げる

 

道の駅近くから日本コバの方向を振り返る

日本コバルートマップ


[山行日] 2024/11/6(水)
[天気] 曇りのち晴れ            
[アプローチ] 東海環状自動車道大安IC (R421号)→  道の駅「奥永源寺渓流の里」    [約19km]

・道の駅の道路をはさんだ反対側に登山者用駐車場あり。約16〜17台。
 
[コースタイム]  
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
1:30 8:25 道の駅「奥永源寺渓流里」発    
8:35 如来堂登山口    
9:55 滑滝(3q地点、沢合流点) 0:05  
0:20 10:00  
10:20 岩屋 0:05  
0:45 10:25  
10:40 分岐    
11:10 日本コバ山頂(934.2m) 0:45 12℃
2:05 11:55  
12:20 分岐    
12:30 衣掛山(870m)    
12:50 尾根下降点    
13:40 政所登山口    
14:00 道の駅「奥永源寺渓流里」着   全行動時間
4:40     0:55 5:35
登り 2:35      
下り 2:05