光山( こごやま)曽爾高原(そにこうげん)                           [近畿・曽爾]  952m

 

 30年以上前に倶留尊山に登った時、曽爾高原のススキ原の向うに、標高はこちらより低いものの尖峰を幾つも突き上げた特異な山があった。「なんじゃ、ありゃ」と思い、家に帰って調べて初めて古光山という名を知った。
 それからいつかは登ろうと思いつつ、月日だけが流れてしまった。何で登らなかったのか今では良く分からないが、やっとその時期が来た、としか言いようがない。

 近鉄名張の駅から曽爾高原へはススキの季節に三重交通の季節バスが運行されている。バス乗り場が不案内だったので、余裕を持って30分程前に着く近鉄特急 を選んだが、駅西口のバス停はすぐわかった。
 待合所前のバス停で待っていたら、電車が着くたびに、どんどん乗客の列が長くなる。自身は先頭近くだったので座ることができたが、バスに乗り切れない者もでて、結局、平日にもかかわらず、臨時便も出ることになった。曽爾高原のススキはなかなかの人気である。

 

 バスを降りてしばし迷う。
 古光山登山を最優先に車道を真っ直ぐ長尾峠に向かおうか、とも思ったのだが、せっかくなのでススキ見物をして、亀山経由で峠に行くことにした。

 ハイカーに混じって遊歩道を歩き、青少年自然の家の前を抜けるとススキ原の端に出る。ススキの中を抜ける踏み跡は通行禁止になっていて、広い遊歩道以外は歩けないようになっているので、またハイカーの後についてお亀池に向かう。

後古光山(左)と古光山(右)

 

お亀池へ

 

お亀池と広場

 

 お亀池の側には以前は無かった広場が出来ていて、ハイカーが休むにはいいだろうが、景観的にはちょっとマイナスになっている気がする。高原にはもっとススキが多かった感じがするが、30年以上経っているのではっきりしたことは分からない。もっと、銀色の穂が密にあったような気もするが、時期的にピークを過ぎてしまっただけかもしれない。
 

亀山からお亀池への斜面

 

左から国見山、兜岳、鎧岳

 

 それでも亀山からお亀池へ落ちるスロープは伸びやかで気持ちよく、池の向うの古光山がアクセントになって高原の景観を引き締めている。亀山峠への遊歩道を登ると、ススキの原の向うに曽爾の集落とその背後の兜岳、鎧岳の岩山が競り上がって来て、晴れやかな気分になる。

 沢山の人がベンチで休んでいる亀山峠で稜線に出て、倶留尊山とは反対方向の亀山に向かう。やや岩がちの稜線を行けばすぐに亀山の山頂。こちらにも多くのハイカーが休んでいる。
 目の前には古光山が迫り、山裾を見下ろすと、緑の針葉樹林と色づき始めた広葉樹林がパッチワーク状に広がっている。

 

亀山峠 亀山からの後古光山(左側)と古光山

 

 亀山山頂からお亀池の南側に向かって急な階段を下り、途中から長尾峠への道に入る。階段道に昨日までの雨で濡れた落ち葉が敷き詰められていて、とても滑りやすい。

 長尾峠は車道が通っていて、道を横切って後古光山(うしろこごやま)への登山道に入る。高原ハイクは終わり、ここからが山歩きの本番。長い長い木製階段を登り、平らな稜線に出ると後古光山が近づいてくる。

 こちらからだと手前にあるのが後古光山になり少々おかしいが、きっと古光山はこれから下っていく山の西側の塩井の方が正面になるのだろう。

 平らな道は後古光山の北側の急斜面にぶつかり、傾斜の増した登山道を真新しい鎖の手摺りにすがりながら登る。
 ふと気になって落ち葉を拾うと特徴のあるブナの葉だった。こんな南の低山にもブナがあるのか、とちょっと驚く。
 道がやや東側に回り込むようになると山頂に飛び出す。

 

長尾峠から後古光山への階段

 

後古光山 後古光山北斜面の紅葉

 

  山頂からの眺めはなかなか良く、目の前の古光山から右手には住塚山から鎧岳に続く曽爾の山々。曽爾高原のさらに右手には尼ヶ岳と大洞山が三角と台形の対照的な形で並んでいる。

 歩き始めが遅いので、古光山の手前ではあるがここで昼食。今日はカップ焼きそば。
 NHKの「ためしてガッテン」でカップ焼きそばにインスタントコーヒーを振りかけると、香ばしくて美味しいと言っていたので試してみたが、苦みが付いただけでイマイチだった。ちょっとかけ過ぎたのかもしれない。

 反対側のフカタワから男女二人連れが登ってきて一緒に昼食。大阪から来てここは二度目ということで、大峠に車が置いてあり、フカタワから南側に降りて車に戻るとのこと。そういうコースの取り方もあるのだと感心する。

 

尼ヶ岳(左)と大洞山(右)

 

後古光山から臨む古光山の稜線

 

 フカタワへの下りはとても急で、まるでフィールドアスレチックスのようにロープが張り巡らされている。女性の二人連れが登ってきたが、ほとんど真下にいるように見える。

 フカタワとは何だろうと思っていたが、後で「深撓(たわ)」だと気が付いた。深く切れ込み撓んだ鞍部のことなのだろう。降り着いたフカタワは杉林の中の暗い鞍部。まさしく「深撓」だ。

後古光山からフカタワへの下り

 

 フカタワから古光山への登り返しもこれまた同じような急傾斜。設置されているロープや梯子がないと登れないような斜面。一番きついところは60度以上はありそう。

 後古光山の山頂で一時間近く休んでしまったので脚に力が入らなくなってしまっている上に、しっかり食べたので焼きそばやおにぎりが口から出そう。またまた喘ぎながら古光山の山頂にたどり着く。
 山頂は樹木に囲まれていて、わずかに後古光山の方面が樹間から見える程度。一休みして展望がきくとされる南峰に向かう。

古光山山頂

 

 古光山は幾つかの尖峰からなっていて、三角点のある古光山山頂は一番北の峰になる。そこから、狭い稜線をアップダウンを繰り返しながら南下する。アセビやツツジ、リョウブなどが生えているので高度感はないが、稜線の両側はかなり切り立っている。どの峰も樹木に覆われているが、南峰とその手前のピークは露岩の峰になっている。
 南峰からは曽爾の村が見下ろせるだけでなく、これまで見えなかった高見山などの南側の展望が開ける。

 

南峰から古光山の稜線を振り返る 曽爾の村を見下ろす

 

 南峰から大峠への下りもまだ急な道が続く。一部尾根が広くなっていて迷いそうになるが、テープを探しながら下る。

 大峠近くで樹林が切れてススキの斜面になる。ここも道は真っ直ぐ下っていて、ロープが張ってある。下が土なので滑りやすく、危ないなあ、と思ったとたんに滑ってしまった。
 片手でロープを握っていたので、滑り落ちることはなかったが、仰向けに転び、左腕をしたたか打ち付けた。なぜか右胸にも激痛が走ったが、後から思えば、肩から掛けていたカメラが弾んで胸に落ちたらしい。
 険しい道が続いていたので気を付けていたのだが、最後の最後に怪我をしてしまった。

ツルリンドウの実

 

 ススキの斜面から再び杉林に入ると、左手にふきあげ斎場の建物が見え、すぐに大峠の車道に出た。

 ホッとしてザックを下ろし、見ると左腕は袖に土がベットリと付き、二の腕を擦りむいていた。傷には大型のバンドエイドを貼る。救急用具を持ってきていてよかった。

ふきあげ斎場の入口の横が登山口

 

 峠からは車道を曽爾の役場を目指して下るだけ。針葉樹の暗い道を抜け、塩井の集落を川沿いに下る。
 険しい稜線歩きでかなり脚にガタが来ていて、舗装道路からの衝撃で足首や膝が痛い。低山ながらハードな道だった。
 下り一方の道だがやっとのことで役場前のバス停にたどり着いた。
 見上げる鎧岳は既に暗く沈んでいた。

塩井の集落から古光山を振り返る

 

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[山行日] 2015/11/16(月)
[天気] 晴れのち曇り             2015年11月の天気図(気象庁)
[アプローチ] JR岡崎 6:41 →(特別快速)→ 7:10 名古屋 7:30 →(近鉄特急)→ 8:58 名張(西口) 9:35 →(三重交通バス)→ 10:22 曽爾高原
    
・名張駅西口⇒曽爾高原のバスは季節運行。だいたい10〜11月の2か月間。

・曽爾高原のバス停は青少年自然の家手前の駐車場。トイレ、休憩所あり。
 
[帰り道] 曽爾村役場前 16:59( 三重交通バス)→ 名張 18:03  →(近鉄特急)→ 18:31 伊勢中川 18:37 →(近鉄特急)→ 19:37 名古屋 19:43  →(新快速)→ 20:17 JR岡崎
 
[コースタイム]
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
0:50 10:25 曽爾高原バス停発    
10:40 青少年自然の家前    
11:05 亀山峠    
11:15 亀山(849m) 0:05  
0:20 11:20  
11:40 長尾峠 0:05  
0:40 11:45  
12:25 後古光山(892m) 0:55  
0:45 13:20  
13:35 フタカワ    
14:05 古光山(952.4m) 0:10  
0:20 14:15  
14:35 古光山南峰(960m) 0:10  
0:25 14:45  
15:10 大峠、ふきあげ斎場 0:10  
1:00 15:20  
16:20 曽爾役場前バス停着   全行動時間
4:20     1:35 5:55

 

[地図] 俱留尊山、菅野 (1/25000)
[ガイドブック] 「大阪周辺の山250」 山と渓谷社