上臈岩(じょうろういわ)                                  [奥三河] 430m

 

 先週、遠見山と納古山に行ったところだが、遅れている梅雨入りもそろそろという感じなので、もう一山登りたいと選んだのは上臈岩。
 上臈岩の存在を知ったのは最近で、愛知県民の森の近くに展望の素晴らしい岩場があるらしい。しかもそこから見下ろす鳳来湖の形が猫の顔に見えると言うことで、通称ニャン湖と言われて人気になっているようだ。
 知り合いの娘さんたちが猫好きなので、ぜひともニャン湖を撮りたいと出かけることにした。

 愛知県民の森を訪れるのは久しぶり。前回来たのは2017年の夏。幌尻岳に登るために沢シューズを買い、その試し履きに沢を歩きに来たのだ。 その時は浅い沢の中をジャブジャブと歩いただけなので、県民の森の中を歩くのは初めてと言ってもいい。

 

不動橋から不動滝を見下ろす

 

 駐車場からメイン園路を歩き、不動滝を見て、第一キャンプファイアー場から木和田林道に入る。園路沿いにはカエデがたくさん植えられていて、紅葉の頃はいいかもしれない。

 

木和田林道

 

風穴

 林道沿いには風穴があり、涼しい風がしみ出してくる。そばの標識に依れば11℃くらいだそうな。風穴があると言うことは地下に空洞があるのだろうが、石灰質の地盤なのだろうか?
 

 沢沿いに見慣れない花を付けた樹があり、写真に撮って帰ってから調べたら「リュウキュウマメガキ」らしい。琉球と名前が付いているが関東以西に自生しているとのこと。そう言われてみれば柿の花に似ている。

 

リュウキュウマメガキ

 

おしどり池

 おしどり池と名付けられた何の変哲もない溜め池を過ぎると林道が終わり山道になる。周りは植林されているようだが広葉樹もかなり混じっている。混交林としての林業施行がされているのかもしれない。

 

苔むした登山道

 

 沢沿いの道は湿気が多いらしく、登山道も谷も石の上は全て苔に覆われている。登山道自体は岩がゴロゴロしていて歩きにくい上に湿気で滑りそう。
 県民の森の中の登山道はよく整備されているが、全体に岩がちで岩屑が路面を覆っていたり、露岩が出ているところも多く、あまり周りの景色を見ていられない。

 

振り返ると鳳来寺山

 

 沢の源頭部をジグザグを切って喘ぎながら 登る。今日は暑くて、前回の納古山よりもしっかり汗が出る。暑熱馴化も充分できそうだ。大汗かいて、中尾根の上部に登り着く。
 ここからは右手に露岩の続く尾根道を少し登ると東尾根に合流する。

 合流点のピークには小さな東屋風の東尾根展望台が立っている。展望台だけあって眺めがよく、振り返ると鳳来寺山、その尾根伝いには宇連山が大きくどっしりと聳えている。奥三河の山々は1000mに満たない山がほとんどだが、ここから見上げると宇連山は高い。東海自然歩道がそれらの峰を結んでいるが、 この付近の稜線歩きは東海自然歩道の難所のひとつとして認識されている。

 

東尾根展望台

 

宇連山

 一休みしてここからは東尾根を北上する。露岩の多い尾根を少し下り、三角点のある471.6m峰に登り返す。そこから少し進むと上臈岩の分岐が現れる。ここで今日初めて単独行のハイカーとすれ違った。
 分岐にはここからは民有地になり、県民の森の外であることが記されている。

 

471.6m峰

 

 分岐の先もしっかりした踏み跡が続いていて迷うことはない。踏み跡の周りにはホソバシャクナゲが多く見られ、花の時期に来られれば良かったと思う。第一展望所からは鳳来湖と宇連ダムが初めて見られる。
 右手に90度曲がるところには大曲の標識がぶら下がっているが、このピークが地形図では標高約500mで、今日の最高地点になるようだ。ここから上臈岩へは尾根道を下って行くことになる。

 

馬の背

 

 第二展望所からは鳳来湖の上流の方と三ツ瀬明神山が眺められる。その先の馬の背を過ぎると踏み跡は二手に分かれ木の枝に小さな案内図が掛かっている。
 この案内図は上臈岩付近の踏み跡の分岐の各所に掛かっていて、現在地が分かり非常にありがたかった。案内図に従って右に曲がり上臈岩を目指す。

 灌木の間を5分ほど進むとぽっかりと岩の上に出た。4、5mほど下にも岩場があり二人連れのハイカーが立っている。どうやらそこが上臈岩らしい。 上臈岩に下りるには鎖を頼りにするしかなく、わずかな距離ではあるが周りが切り立った崖であることが充分察知されるので、少々腰が引ける。

 

上臈岩から中の上臈、背後は三ツ瀬明神山

 

中の上臈の上の登山者

 上臈岩に降り立ち、さてニャン湖は?と見ると猫の形をしていない。ネットに繋いで確認してみるとどうやらお隣の「中の上臈」からの眺めらしい。事前調査不足であった。
 まあ、とりあえず上臈岩に着いたのだからとカップヌードルの昼飯にする。お隣の中の上臈の岩場の眺めが凄く、こちらも同じような崖の上だと思うと、なにやらむずむずして落ち着かない。
 中の上臈の岩場の上にもハイカーがいて、よくあんなところに立っているなあ、と見ている方が怖くなる。
 しかし、眼下の眺めは素晴らしい。愛知県にこんなところがあったのかと感慨深い。かつて県の観光課にいた身としては不明を恥じるばかりだ。一体いつごろから登られるようになったのだろう。

 食事を終えて、中の上臈へ移動。先ほどの案内図に導かれ、バイパス路と書かれている樹林の中のトラバース道を進む。馬の背からの踏み跡と合流すると松の疎林になり、中の上臈の岩の上に出た。

 

中の上臈の上

 

ニャン湖

 こちらの方が上臈岩よりも広いが、先ほど隣から周りがすごい崖であるのを見ているので、やはり岩の上に立つと腰が引ける。岩の端から鳳来湖を覗くと「おー、猫がいた。」
 ダム湖は左右にも続いているので、ちょうど良く手前の樹木で湖面が遮られて猫の顔にみえるところを探さなければならないが、ピンと猫耳が立って猫だなあ。と納得させられる。最初に見つけた人はたいしたものだ。 右耳のところに架かる橋はリボンらしい。
 もっとも、いろいろネットを調べてみると、猫ではなく「トトロ」に見立てる人もいるようで、そっちの方が主流かもしれない。でもネーミングはニャン湖の方に軍配が上がる。

 

上臈岩

 

こんな岩壁が続いている

 先ほどいた上臈岩が右手に見えるが、あんなところで昼飯を食べていたのかと思うと、股間が縮み上がる。
 こことの間はずっと岩壁が続いていて、きっと岩壁全体を上臈岩と言うのだろう。先ほどの案内図によれば岩場巡りのルートもあるようだが、想像しただけで怖いのでとても足を踏み入れる勇気はない。

 

ウラジロ

 

 帰りは上臈岩分岐まで戻り、北尾根を少し西に進んでシュートン沢沿いの道を下る。この辺りはスギの植林地で、林床をウラジロが覆っている。
 ここも歩きにくい岩の山道だが、じきに細い林道に降り立ち、明治百年記念広場まで出るとあとはメイン園路を下るだけ。暑い中を途中の休憩所で休みながら歩く。
 駐車場近くの宿泊棟モリトピアに日帰り入浴の案内が立っていたので、400円の入浴料を払って汗を流す。他に誰も入っておらず一人で広い風呂を使う。久々に下山後の入浴ができ、満足であった。

 

上臈岩ルートマップ


[山行日] 2024/6/14(金)
[天気] 快晴            
[アプローチ] 新東名・新城IC (R151) 愛知県民の森P    [約15km]

・開門時間7:00。無料。トイレあり。
 
[コースタイム]  
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
1:05 8:35 愛知県民の森駐車場 発    
8:45 第一キャンプファイアー場    
9:00 おしどり池    
9:35 中尾根分岐    
9:40 東尾根展望台 0:10 24℃
0:55 9:50  
10:10 471.6m三角点    
10:15 上臈岩分岐    
10:45 上臈岩(430m) 0:30 30℃
0:15 11:15  
11:30 中の上臈(394m) 0:10  
0:35 11:40  
12:15 上臈岩分岐 0:10  
0:50 12:25  
12:35 シュートン沢分岐    
12:50 林道    
13:00 百年記念広場    
13:15 せきれい橋休憩所(トイレあり) 0:20  
0:20 13:35  
13:55 愛知県民の森駐車場 着   全行動時間
4:00     1:20 5:20

   (コースタイム 4:45)