氷ノ山(ひょうのせん)                        [近畿] 1510m 

  

 駐車場奥のトイレの横を抜けると芝生広場があり、炊事棟も建っている。ここが福定親水公園のメイン施設らしく、キャンプもできるようだ。芝生広場の隅にソロテントが立っているが、昨日トイレで出くわした女性のものだろうか。
 早朝、車でやってきた男性は既に登っていったので、取りあえず本日の登山者は3人はいることになる。
 芝生広場の横が登山口になっている。

登山口

 

 しばらく谷川の河原の中を歩き、小さな木橋で流れを渡って山道に入る。
 少し行くと布滝の標識があり、登山道から分かれて右に進むと狭くなった谷にコンクリートの橋が架かっていて、そこから滝を眺めることができる。岩肌を一筋の流れが滑り落ちていて、確かに布が掛かっているように見える。木の枝に遮られて上の方は見えないが、落差はかなりありそうだ。

 登山道に戻ると28曲りが始まる。明るい広葉樹の急斜面をジグザグを切りながら高度を上げていく。
 途中、道の脇に何本もの木が絡み合った木が現れる。説明板が立っていて、「7種類の木が支えあっている連樹」とある。木に番号札が掛かっていて樹種が分かるようになっている。メインの木はホオノキとコシアブラで間に挟まれたミズメは枯れそう。リョウブは寄り添って生えていて、あとのネジキ、ナナカマドは寄生している感じで、マツブサは蔓で絡みついている。 
 

布滝

 

28曲りを見下ろす

 

連樹

 

 28曲りが終わると傾斜が緩やかになり、手入れの行き届いた杉林に変わる。ずっと落葉樹の中を歩いてきたので、植林地が珍しく感じる。その中に青く塗られたトタン造りの地蔵堂が現れる。
 ガイドブックによれば、かつて氷ノ山山頂には御手洗権現、蔵王権現、地蔵権現が祀られていたが、江戸時代の初期(慶長11年)に地元の三集落で三体を分けることになり、その一体がこの地蔵さんらしい。
 江戸時代前に既に信仰の山であったという、この山の歴史の古さが分かる話だ。 

地蔵堂の中

 

 登山道は再び登りになる。周りはブナが目立つようになる。細めのブナが多いので二次林だと思うが、白い幹と眩しい新緑が美しい。

 この道は因幡と但馬を結ぶ街道で、伊勢道とも呼ばれていたらしい。こんな険しい峠を越えて伊勢詣りをしていたのだろうか。道の部分が両側よりもえぐられたように低くなっているの が、古くから歩かれている証拠のように思える。
 道沿いに旅人が喉を潤しただろう湧き水がいくつかあるが、「ひえの水」も「弘法の水」も、ほんのわずかしか流れていなかった。

ヤブデマリ

 

やっと山頂が見えた

 

氷ノ山越の石仏

 

 左手の樹間にチラチラと氷ノ山の山頂が見えてくると峠の氷ノ山越に着く。石仏が立ち、ベンチや避難小屋もある。ここからは兵庫県と鳥取県の県境の稜線を歩くことになる。

 峠までもブナの中の道だったが、稜線上もブナに覆われている。先ほどよりも太いブナが多く、こちらは自然林のようだ。氷ノ山がこんなにブナの多い山だとは思っていなかった。伯耆大山ほどではないが、ここのブナ林も西日本としてはなかなかのものだ。山腹のブナ林は林床がすっきりしていたが、稜線の方は笹がびっしり生えているのはどうしてだろう。

 

稜線のブナ林

 

ユキザサ

 

ツボスミレ

 

 ブナ林は美しいが、足元の花はあまり多くない。早春の花の時期はもう過ぎてしまったようで、イワカガミ、ツボスミレ、ユキザサくらいしか目に入らない。

 鳥取県側からの仙谷口の登山道が合流し、コシキ岩の根元を回り、笹原のジグザグ登りきると兵庫県の最高峰の山頂に到着。

ハチ高原俯瞰

 

 山頂には途中からも見えていた避難小屋がどーんと建っていて、その前に一等三角点がある。山頂一帯は一面の笹原で360度の展望が効く。もっとも雲が多くて大山など遠くの山は見えない。東側眼下に関西屈指のスキー場であるハチ高原が広がる。

 

氷ノ山山頂避難小屋

 

山頂休憩所から三の丸を望む

 

 山頂の少し南に二階建ての建物があり、一階はトイレ、二階は休憩所になっている。二階に上がると一段と展望が開け、南の三の丸に向かってなだらかな稜線が伸びていて、気持ちの良さそうな道が続いている。
 ちょうど先行者が降りて行ったので、休憩所を独り占め。吹き抜けていく風が気持ちいい。ガスコンロで湯を沸かし、朝食べられなかったインスタントのワンタンとおにぎり、昨夜は飲まずに眠たので残ってしまったおつまみの生ハムという寄せ集めの昼飯をとる。
 日陰になる屋根と腰掛けるところがあると、やはり落ち着いて食事ができる。コーヒーも飲んで久しぶりに山頂で1時間もゆっくりしてしまった。それにしても風が爽やかだ。

 

古生沼 (こせぬま)

 

古千本

 

 下山は稜線を東に下る。山頂から少し下り、標識に導かれて右手の藪に分けると、立入りを防ぐ網に囲まれた古生沼が現れる。沼と名付けられているが高層湿原で池塘はない。スゲのような湿生植物が生えているが花はなく、静かな空間が開けているだけだ。
 なおも下ると古千本という芦生杉の森が現れる。少し下には細めの杉が生えた杉千本というところもある。芦生杉は湿ったところを好む植物で、こんな稜線上に生育しているのは珍しいと思う。先ほどの湿地も古千本の杉も、きっと大量に降り積もる雪によって育まれているのだろう。

 神大ヒュッテはブナ林の中にあり、そばにはパイプで水が引かれていて、ここでの泊まりは快適そうだ。ヒュッテ前で左手に折れ、主稜線を離れて東尾根に入る。この辺りもブナを主体にした落葉樹林で、幾つか横切る小さな沢には、登りの伊勢道とは違って豊かに水が流れている。

 

ベニドウダン

 

ガマズミ

 

  特に建物があるわけではない一の谷休憩所を過ぎると、尾根が細くなり、養父市の天然記念物に指定されているドウダンツツジの自生地に入る。確かに登山道わきにベニドウダンがピンクの鈴のように下がっていて、木漏れ陽に揺れているが、5〜6本しか見当たらない。せっかく花の時期に合わせてやってきたのに、少々拍子抜け。これなら木曽の山の方が見応えがある。

 

 さらに下ると東尾根避難小屋。小屋の前にベンチがあったので、ここでも大休止。ブナ林を吹き抜けてくる涼しい風を浴びながら、枇杷のゼリーを食べる。
 高度が下がるとやはり伐採の手が入っているようで、このあたりのブナの幹も細い。

 歩いているときからホトトギスの鳴き声が聞こえていたが、下のスキー場の方からカッコウ、遠くにツツドリの声も加わり、珍しくホトトギス類3種が入り混じって聞こえる。

東尾根避難小屋附近のブナ林

 

  ここからは少しの下りで東尾根登山口の林道に降り立つ。あとは氷ノ山国際スキー場のゲレンデを抜けて福定親水公園に戻るだけ。
 林道わきに咲いているのはなぜか白い花ばかりだった。

氷ノ山国際スキー場

 

タンナサワフタギ

 

サワフタギ

 

ハクウンボク

 

クジャクシダ

 

氷ノ山ルートマップ


[山行日] 2019/6/4( 火)
[天気] 薄曇りのち晴れ     2019年6月の天気図(気象庁)    
[アプローチ]

北近畿豊岡自動車道・八鹿氷ノ山IC (R9号、県道87号)→  福定親水公園駐車場     [約23km]
      
・20台ほど駐車可能、登山届のポストがある。
・駐車場の奥に芝生広場、炊事棟などがありキャンプもできる。
・朝、アカショウビンが鳴く。

[コースタイム]  
        15℃
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
0:55 5:45 福定親水公園駐車場(660m) 発    
6:40 地蔵堂 0:05  
0:55 6:45  
7:40 氷ノ山越(1250m) 0:10  
1:05 7:50  
8:55 氷ノ山山頂(1510m) 1:00  
1:30 9:55  
10:20 神大ヒュッテ    
11:25 東尾根避難小屋 0:15  
0:55 11:40  
12:00 東尾根登山口    
12:35 福定親水公園駐車場 着   全行動時間
5:20     1:30 6:50
登り 2:55        
下り 2:25        
 
[ガイドブック] 大きな地図で見やすいガイド「関西北部」 山と渓谷社
[地図] 氷ノ山(1/25000)

 

[温 泉]

とがやま温泉「天女の湯」  <兵庫県養父市八鹿町高柳488-1>
・道の駅「ようか但馬蔵」近くの日帰り温泉施設。700円。
・炭酸水素塩泉
・1Fと2Fに浴室があり、毎日男湯と女湯が交代する。
・1Fの方が露天風呂が広い。青石張りの浴槽が気持ちいい。

[風景印] 関宮外野(せきのみやとの)局
   (兵庫県養父市外野392−1)

・図案  
  ハチ高原、スキー、キャンプ、飯盒炊飯