穂高縦走 北穂高岳(3106m)、涸沢岳(3110m)、奥穂高岳(3190m)、前穂高岳(3090m) [北アルプス] |
8月20日
平湯バスターミナルの駐車場で一夜を明かし、早朝、あかんだな駐車場へ車を移動させる。意外に寒くてよく寝られなかった。 |
|
河童橋の上から焼岳
|
穂高に登るのは初めてであるが、上高地に来るのも数えるほどしかない。最初は確か1980年の夏だったと思う。グループで常念に登るつもりだったが、天候が悪く、まだ宿の前に吊橋がある頃の渡合温泉に泊まり、翌日上高地を散策した。当然、穂高の眺めはなく、傘を差して明神池まで来た覚えがある。 ちなみに、上高地に来たのは1985年9月に槍ヶ岳に登った時、1992年9月に常念岳に登った時、1996年3月にXCスキーで入った時の合わせて4回だけであり、今回は22年ぶり5回目ということになる。つまるところ、穂高が後回しになったのは、混雑するところが嫌いなだけである。 |
|
明神池(一之池)
|
もちろん穂高には岐阜県側の新穂高温泉から白出沢を詰めて登ることも出来る。しかし穂高と言えばやはり涸沢カールである。涸沢カールを知らずして穂高を語ることは出来ない。そのくらいのわきまえはあるのである。 |
|
右手一番奥が前穂 (徳沢の手前から)
|
横尾山荘前
|
屏風岩 |
徳沢園の周りも、横尾山荘の前もハイカーや登山者でいっぱい。まるで林道のような幅広の単調な登山道も横尾までで、槍沢に架かる橋を渡るとだんだん山道らしくなってくる。左手の屏風岩が進むにつれて岩壁の表情を変える。
|
|
|
吊橋と板橋の二本架かっている新村橋
|
オオカメノキの実 |
横尾谷に架かる吊橋の新村橋を渡ると、登山道の傾斜が急になる。岩を積んで階段状に整備してあるが、ずいぶん手間の掛かる仕事がしてある。大変な労力だ。 屏風の頭を回り込むようにして高度を上げていくと、右手の谷の奥に涸沢のカールが見えてくる。かすかに涸沢ヒュッテの赤い屋根も見える。しかし、見えている目標物はなかなか 近付かないもので、ヒュッテ直前の急登でまたひと汗かかされた。 |
|
涸沢の奥にカールが見えてくる
|
涸沢ヒュッテは180人も収容できる大きな小屋で、新館で宿泊の受付をしてもらい、本館の部屋を割り当てられる。 |
|
涸沢ヒュッテの展望デッキ
|
8月21日
朝食前に起きてモルゲンロートを見るために展望デッキに上がったが、今日もガスが出ていて、赤くは染まらなかった。 |
|
涸沢の朝、正面が北穂南稜。
|
|
|
ヒョウタンボクの実
|
南稜に取り付く鎖場 |
賑やかなキャンプ指定地の中を抜け涸沢小屋の横を通り、北穂沢を登っていく。小屋から沢沿いにかけてはトリカブトやアキノキリンソウなどのお花畑が広がっている。 |
涸沢カールを見下ろす
|
北穂南稜を登るNom君
|
涸沢ヒュッテから見上げた時に、あんなに急傾斜のところを登れるだろうか、と思っていた南稜だが、登ってみるとさほどでもない。岩がちのジグザグ道で、こけると大変だが気を付けて歩けば普通の道である。ひたすら登り、さらに急なところを乗り越えると、緩やかな南稜テラスに着く。こんなところに泊まるのか、と思われる吹きっさらしの稜線にテント指定地がある。 |
|
|
滝谷ドームから涸沢岳への稜線 (南稜テラス附近から)
|
北穂山頂から大キレットを見下ろす
|
北穂南峰直下の分岐を右に折れ、トラバース気味に進むと北穂山頂(北峰)に到着。予想外に平らな広い山頂である。すぐ下に北穂高小屋の屋根がある。ガスの切れ間におどろおどろしい滝谷ドームがちらりと見え、反対側を覗き込むと遥か下に大キレットの稜線が見える。飛騨泣きあたりの鞍部で登山者が渋滞しているようにも見える。
穂高に登ったというならば奥穂を直接目指せばいいのだが、やはりせっかくだから北穂も登りたい。となると北穂から涸沢岳を越えて奥穂へ縦走することになる。ところが、この間が難所である。コースのグレードで言うと、西穂〜奥穂間は別格として、大キレット越えに次いでグレードが高い。特に最低鞍部から涸沢岳への登り返しが難度が高い。
北穂南峰の分岐まで戻ってもまだ迷っていた。このまま進むか、一旦涸沢に下りてザイテングラードを登り返すか?
|
|
|
北穂南峰直下
|
滝谷ドーム脇を鎖で下る
|
分岐から南峰を回り込んで涸沢岳への稜線に突入する。ここからはいきなりグレードが上がる。滝谷ドームの鎖の下降は距離が長く、岩が滑りやすくて嫌だった。恐れていた滝谷側の奥壁バンドのトラバースはガスのおかげで下が見えず、あまり怖さを感じずに通過することができた。ペンキの○印もしっかり付いている。これを見失わないようにしなければならない。
最低鞍部で小休止。ちょっと土が見える平地で、ここくらいしか休憩場所はない。ここからの登り返しが今回のコースで最も危険な箇所になる。涸沢カール側も飛騨側もガスで下は見えない。 |
|
|
涸沢岳へ登り返す
|
梯子、鎖、鉄杭が続く難所
|
さらに鎖の架かる急な岩場の登りが続く。鞍部から少し登ったところで突然Nom君が「・・・さん、弱音を吐かしてもらっていいですか?」と言い出す。
涸沢槍の付近で、梯子を登り、鎖で少しトラバースして、鉄杭で岩を越えるところが一番怖かった。鉄杭を握るのはいいが、足を乗せるのが滑りそうで怖かった。 なだらかな稜線を少し歩き、涸沢岳の山頂。ガスで期待した奥穂の姿は見えないが、ホッとして大休止。やったーという達成感よりも、何とかなった〜という安心感の方が強い。時間感覚がなく、時計を見る余裕もなかったが、北穂から2時間20分。コースタイム+10分で通過することができた。
|
|
|
穂高岳山荘前から涸沢岳
|
常念岳 (手前は屏風の頭)
|
涸沢岳からは普通の登山道を、穂高岳山荘の建つ白出沢のコルに下りる。宿泊手続きを済ませて缶ビールを買い、外の石畳の上でNom君と健闘を称えあう。 |
|
|
穂高岳山荘裏から奥穂高岳 (右奥はジャンダルム)
|
笠ヶ岳夕景 (山荘のロビーの窓から)
|
8月22日
|
|
|
小屋横の岩壁
|
バックは涸沢岳
|
|
|
槍ヶ岳にガスがかかり始める
|
左が奥穂山頂
|
登るにつれて背後に涸沢岳、北穂がせりあがり、その向こうに槍が見えてきたけれど、飛騨側からどんどんガスが流れてきた。しかしガスは槍を覆いつくすことなく、何となくいい位置でベールを掛けてくれている。
|
山頂に近づきザックを置いて展望盤の横に立つ。他にも登山者がいっぱいだ。 |
|
奥穂山頂の穂高岳嶺宮
|
山頂からの眺めは素晴らしい。 いつまでもこの気持ちのいい景色を眺めていたいが、まだ先がある。吊り尾根も重太郎新道も危険箇所が多い。まだ気を抜くわけにはいかない。 |
|
涸沢岳、北穂の稜線越しに槍ヶ岳、南岳 (奥穂山頂から)
|
|
|
鷲羽岳(左)、黒岳(中央)
|
北穂の向うに遠く旭岳、白馬岳、右手に鹿島槍
|
|
|
富士と鳳凰三山
|
ジャンダルム |
奥穂からはややザレた下り道。途中長い鎖が2本あり、両親に連れられた中学生くらいの女の子が難渋している。ただ、吊り尾根の嫌らしいところはここくらいで、後は狭いものの岳沢側にしっかり道は付いている。
|
|
|
前穂に向かう |
荷揚げヘリが吊り尾根を越える
|
|
|
北穂
|
奥穂を振り返る
|
紀美子平は前穂から岳沢に伸びる尾根のわずかな弛みで、狭いところに登山者がたくさん休んでいた。奥穂から吊り尾根を下ってくる人と重太郎新道を登ってくる人と混ざっているのだろう。 ここに荷物を置いて前穂をピストンする。前穂の登りも急な岩場で相変わらず気が抜けない。すれ違いも多いので神経を使う。見た目が厳しい割には鎖場はあまりない。空身なので楽とは言わないが、何とか登れる。 |
|
左から西穂、間ノ岳、天狗ノ頭 (紀美子平から)
|
|
|
前穂の登りから紀美子平を見下ろす
|
前穂山頂から奥穂
|
登り着いた前穂の山頂は意外に広い。どこから見ても尖った印象があるが、山頂は南北に長く、三角点は南端に近いところにある。岩の積み重なったところを少し北に行くと奥穂の方が良く見える。残念ながら涸沢カールはガスで埋まっていて、覗き見ることができない。特徴的な北尾根もガスの中だ。反対側の南の方は鋭い岩稜が明神岳の方へ続いている。
前穂は北から見ても南から見ても、吊り尾根を介して奥穂と絶妙なバランスを保ち、槍を思わせるようなシャープな山体が魅力的で、以前から奥穂よりも登りたい山だった。その頂に立てて実に嬉しい。
|
|
|
明神岳への稜線を見下ろす
|
下り始めて北穂の稜線が見えてきた
|
紀美子平に戻り、重太郎新道を下る。いきなり鎖が架かっていて、この道も険しい。奥穂の方から眺めても、この尾根に道が付いているとは信じられないほど傾斜がきつい。浮いた岩が多く、落石を起こさないように気を付けなければならない。 高度が下がるにつれて、だんだん暑くなってくる。なぜか軽装の外人さんのカップルも登ってくる。 |
|
紀美子平から重太郎新道を下る
|
|
|
重太郎新道を振り返る
|
カモシカの立場下の最後の12mの梯子
|
カモシカの立場を過ぎてもしばらくは急降下が続き、最後の12m38段の階段を下りるとあとはジグザグに斜面を下って行く。眼下に岳沢小屋が見えているが、見えてからがなかなか遠い。 ダケカンバ林が切れると、茎 草原のお花畑が広がっている。セリの仲間、ホソバトリカブト、アキノキリンソウ、サラシナショウマなどが咲き誇り、面積もかなりある。上高地周辺では屈指の規模ではなかろうか。花の種類は既に秋を感じさせる。 |
|
岳沢のお花畑
|
キャンプ指定地を抜け、岳沢の河原を渡るとやっと岳沢小屋に到着。上まで笑い声が響いていたのは若い看護師さんのグループだった。外人さんも登ってきている。 |
|
岳沢小屋前から前穂を見上げる
|
岳沢小屋前からは河原に沿った灌木林の中を下る。陽射しが遮れず暑い。針葉樹林になるところもあるが、すぐに河原に戻ってしまって、日向を歩くことになる。途中の風穴で少し涼み、後はひたすら下る。単調な道を歩き
に疲れたころ、岳沢湿原横の車道に出る。 |
|
岳沢湿原から六百山
|
さて、これで百名山は完登できた。混む山がきらいなので、穂高は退職後にとは思っていたが、まさか最後になるとは思わなかった。昨年
、難関の幌尻岳を済ませ、残りが4座になった時に、何となく最後は穂高にしよう思った。へそ曲がりな自分らしくていいし、登ってみて、達成感、満足感があって良かったと思う。 |
[山行日] | 2018/8/20(月)〜8/22(水) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[天気] |
20日(月) 晴れのち曇り、夕方雨 2018年8月の天気図(気象庁) 21日(火) 曇りのちガス、夕方晴 22日(水) 晴れ時々ガス |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[アプローチ] |
19日 高山IC
→ (県道89号、R158号) → 平湯バスターミナル駐車場 [約38km] |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[コースタイム] |
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[ガイドブック] | 「ワンダーフォーゲル<特集:スリルと展望の岩稜案内>」2018年8月号 (山と渓谷社) |
|
||
[山小屋] | 涸沢ヒュッテ ・180名収容。1泊2食9,500円。 ・水無料。お湯、お茶無料だが、別棟の食堂まで行かなければならない。 ・食事の量が多い。味はまずまず。 ・トイレ棟に乾燥室あるが、あまり乾かず。 ・トイレが臭う。 ・携帯の充電無料。 ・最盛期は布団1枚に2名になるらしい。 |
|
穂高岳山荘 ・350名収容。1泊2食9,800円。 ・宿泊者は水無料。お湯、お茶有料。 ・食事は適量。御飯がおいしい。朝食に朴葉味噌がでる。 ・乾燥室あり。 ・パブリックスペースが広くて気持ちい。 ・Wi−Fiあり。携帯充電は有料。 |
||
[温泉] | スカイガーデン露天風呂 <平湯バスターミナル3階> ・入浴料600円。 ・露天風呂から笠ヶ岳が眺められる。 ・石鹸、シャンプー、ドライヤーあり。 ・コインリターン式の貴重品入れあり。 ・営業終了間際だったので、空いていてのんびり入浴できた。隣の「平湯の森」は駐車場が一杯だったので、こちらにした。 |