土倉岳(はぜくらだけ)1049m、御池岳2(おいけだけ)1247m                 [鈴鹿]  

  

 先月は藤原岳。2週間前は銚子ヶ口。アプローチが楽な割には自然度の高い山歩きができる鈴鹿の良さを改めて認識し、3回連続の鈴鹿となった。今回は以前から温めていた土倉岳から御池 岳に登り、T字尾根を下る周回コース。
 土倉岳も銚子ヶ口同様、国土地理院の地形図に名前がない山だが、一部のガイドブックには掲載されていて、山頂から見上げる御池のボタンブチの眺めがいいらしい。また、下山に使うT字尾根は落葉樹林の気持ちのいい尾根らしいが、踏み跡程度で遭難騒ぎも起きている。少々不安な面もあるので、藤原に一緒に登ったKawさんNom君を誘って出かけた。

 石榑トンネルを抜け、銚子ヶ口の登山口を通り過ぎ、国道を右折して県道とは思えない一車線の道に入る。途中で御池林道に入り、木地師の里の君ヶ畑を抜けて小又谷林道分岐まで進む。御池林道は舗装されている。

 ウィークデイにも関わらず先客が数台。最近はこのコースをたどるツアーもあるようで、ずいぶんポピュラーになってきたらしい。
 T字尾根を登り、御池から土倉岳を経て下山する場合が多いようだが、今回は道が不案内なので取りあえず目標となる土倉岳を目指し、余力があれば御池に向かうことにする。

御池林道と小又谷林道分岐の駐車スペース

 

 駐車スペースのすぐ横に小又谷林道の分岐があるが、林道には車止めがしてあった。入口にはこの先の御池林道の工事案内が掲示してあり、歩行者も通行止めとある。T字尾根を下ってくると御池林道に出るので、それが通れないと周回コースが取れないことになる。
 歩行者も完全通行止めということはまず無いので、どうするかは下山時に決めることにして出発。

右が小又谷林道

 

 小又谷林道は所々崩壊していて車が通れるような状況ではなかった。小又谷を渡るところが一か所あるが橋がなく、昨日の雨で増水していて飛び石伝いに渡る。

 20分程で「ノタノ坂、茨川」の標識に導かれて山道に入る。砂防堰堤の下ですぐに小又谷を渡るが、ここには赤い鉄の橋が架かっていた。エキスパンドメタルの床板が2か所ほど抜けていて、いつまでもつか分からないような橋だ。

渡った鉄の橋を振り返る

 

 橋を渡り、右手に尾根を回り込み、小又谷の支流に沿って杉の植林地を登っていく。少し崩れたところもあるが、踏み跡はしっかりしている。
 細い流れが途絶えたころ傾斜がきつくなり、つづら折れを登りきるとノタノ坂の乗越に到着。茨川側は落葉樹林で明るい陽射しが対照的だ。

 茨川への分岐を右に分け、ここからは尾根歩きになるが、やや左に巻き加減でのぼっていく。

ノタノ坂の分岐。右は茨川へ下る道。

 

 ひと登りで高圧鉄塔の下に出る。眺望が開けて藤原岳の天狗岩の方が見える。杉林の上に御池岳の平らな姿が見えているが、土倉岳は特徴がないので良く分からない。

 ここからは緩やかな尾根歩きが続く。左手は相変わらず植林してあるところが多い。二基目の鉄塔を過ぎ、869mのピークで高圧線沿いから離れる。942mのピークは左から巻き、やや急な坂を登りきると土倉岳に真っ直ぐ続く尾根の上に出る。

レンゲツツジ

 

 御池岳が近くなってきていて、木々の上に東ボタンブチの岩壁が迫っている。

 この尾根は周りがカエデ、ブナ、ミズナラ林の落葉樹で明るく気持ちがいい。足元も一面にイワカガミが広がり、地面も緑に見える。緩やかなアップダウンもかえって心地よく感じる。いや〜、いいところだなあ。
 踏み跡も予想外にしっかりしている。

東ボタンブチを見上げる

 

明るい尾根

 

ブナもある

 

 土倉岳の三角点の周りは切り開きがされていて、あっけらかんとしている。もっと木々に囲まれた落ち着いたところかと思っていたので少々期待外れ。ただ、平らな山頂の北側からは御池岳が迫力のある姿を見せている。右手は東ボタンブチ、左手はボタンブチの白い岩肌が 、周りの新緑と眩しさを競い合っている。
 ちなみに三角点の基準点名は「河倉峠」。銚子ヶ口と同じ三等三角点である。
 まだ、11時前なので御池岳に向かうことにする。

 

 

ボタンブチ

 

土倉岳から御池を見上げる

 

 御池岳へは目の前の斜面を登る。ちょうど東ボタンブチの岩場と樹林の間あたりを狙って踏み跡が登っていく。

 取付き当たりの斜面の灌木は膝くらいの高さで刈り払われたようになっている。枝が斜めに刃物で切られているようになっているのは鹿に食べられた証拠だ。

 振り返ると土倉岳の山頂部を真上から見下ろすような感じになる。

御池への登りから振り返る。背後は土倉岳。

 

土倉岳の山頂越しに、左から釈迦、御在所、雨乞、綿向

 

天狗堂

 

 登りは意外に短くて、20分程で御池のテーブルランドの一角に登り着いた。土倉岳の降り口を示すまだ新しそうな立派な標識が立っていた。ルートとしてはかなり一般的になっているようだ。

 そばの東ボタンブチの岩場からは延々と続く緑の山並みの向うに御在所岳、雨乞岳、綿向山などが並んでいる。すぐそばにある三角の山頂は鈴鹿十座の天狗堂だろう。
 今日も眺めがいい。

土倉岳への下降点を示す標識

 

ボタンブチを目指す

 

幸助池

 

 とてつもなく広いテーブルランドの上を取りあえずボタンブチを目指して歩く。踏み跡もあるが、一面背の低い草地で、どこでも歩けるような感じだ。所々樹林が残り景色に変化を与えてくれている。
 進むに連れて、白い石灰岩がむき出しになったカルスト状のところや、漏斗状の窪みになったドリーネなどが現れる。ドリーネに水が溜まった池もある。遠くでカッコウが鳴いている。足元にはミツバオウレンやテンナンショウが咲いている。

ミツバオウレン

 

ボタンブチからT字尾根を見下ろす

 

ボタンブチから琵琶湖方面

 

 これまで他の登山者には合わなかったが、御池に上がってからは遠くに歩く人などが見えるようになり、ボタンブチに着くとたくさんのグループが休んでいた。皆、澄んだ大気を突き抜けてくる強い陽射しを避けて木立の下に集まっているので、僕らはボタンブチの崖の上を占めてランチにすることにした。
 崖は鋭く切り立っていて天空に吊るされているような感じだ。崖から吹きあげて来る風が気持ちいい。もやってしまうことが多いこの時期には珍しく琵琶湖の水面が見える。真下には落葉樹に覆われた明るい緑のT字尾根が、いかにも気持ちいいい尾根道ですよ、と訴えるように伸びている。

 17年前の2001年の秋に御池に登った時には山頂の丸山からボタンブチまで、かなり背の高い笹を掻き分けてきた覚えがあるが、ボタンブチから丸山の方向を振り返ってみても、今は低い草地が広がっているばかりだ。昔と比べると随分見通しが効くようになってしまっているが、これも鹿の食害だろうか。遠くにはフェンスのようなものも見えるので、植生を保護しようとしているのかもしれない。

 

 同行の二人に打診すると丸山までは行かなくていいと言うので、下山にかかる。
 歩いてきた方に戻りながらなるべく崖近くを歩き、T字尾根の下降点を探す。下降点の標識は分かりにくいという情報だったが、ここにも新しい標識がしっかり立っていた。
 しかし、標識の下には林道入口と同じように工事による通行止めの案内が掲示してあった。う〜ん、山の上にも警告があるということは登山者もあまり通したくないということなんだろう。無理を通すのも何なので、仕方なく来た道を下ることにする。

しかし・・・

御池岳の端部

 

 土倉岳の山頂を越えて942mのピークの巻き道あたりで、5、6人の若いグループに追いついた。どこから登ったか聞くとT字尾根からとの返事。工事の林道も通してもらえたらしい。あ〜あ、まあそんなもんだよね。残念。次回はT字尾根から回ることにしよう。
 同じ道を下るのは早く、予定よりもずいぶん早く車に帰り着いてしまった。

ヤマツツジ

ミズキまだつぼみ

 

 

土倉岳、御池岳2 ルートマップ


[山行日] 2018/5/15(火)
[天気] 快晴     2018年5月の天気図(気象庁)
[アプローチ]

新名神・東員IC (R365号、R421号、石榑トンネル ) → 道の駅「奥永源寺渓流の里」 (県道34号 ) → 御池林道入口 (林道 ) → 御池林道・小又谷林道分岐     [約36km]
 ・分岐に8台程の駐車スペースあり。

[コースタイム]  
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
0:40 8:45 小又谷林道分岐(約520m) 出発    
9:25 ノタノ坂(約730m) 0:05  
1:15 9:30  
10:45 土倉岳(1049.4m)山頂 0:10  
0:20 10:55  
11:15 御池岳東ボタンブチ 0:05  
0:20 11:20  
11:40 ボタンブチ 0:45  
1:25 12:25  
12:45 T字尾根下降点    
13:50 ノタノ坂 0:05  
0:30 13:55  
14:10 小又谷林道    
14:25 小又谷林道分岐 到着   全行動時間
4:30     1:10 5:40
 
[地図] 篠立、竜ヶ岳(1/25000)