福地山( ふくじやま)                                         [飛騨] 1672m

 

 月曜日から山へ出かけるのは、土日が仕事の身には少々しんどくて、 「きっと水曜日の方が天気がいいはずだ」と、ネットの予報を睨みながら都合のいい判断をしたのだが、やはり希望的観測は外れた。
 火曜日の出発時点ですでに水曜日の飛騨高山の天気予報は曇り。福地山は展望が命の山のなので延期も考えたのだが、12月から山に行けてないので覚悟を決めて出かける。
 明日がダメなら天気が良いうちに山を見ておこう、と新穂高温泉まで車をとばし、ロープウェイで上まで上がった。笠ヶ岳や西穂の山頂近くには薄い雲が湧いていたが、同じ便で登ってきた観光客が展望台から引き上げる頃には次第に雲が取れてきた。槍ヶ岳方面の雲は最後までかかり続けたが、意外に立派な西穂の姿には大満足。体が冷えるまで眺め続けた。

笠ヶ岳

 

西穂高岳

 

 翌、水曜日。栃尾温泉の民宿から福地温泉の登山口へ車で移動。登山口の駐車場には他の車は止まっていない。
 身支度を整え出発。ネットの情報で雪は締まっているようなのでスノーシューは持たず、アイゼンだけザックに入れる。
 空は一面雲に覆われているが、福地山と思われる山の頂き付近だけ朝陽が当たっている。

登山口の駐車場
(陽の当たっている山が福地山?)

 

朝市の売店

青だる

 

 古いホーロー看板が目立つ売店の横を通り抜けると真向かいにコンクリートの階段があり 、これが登山口のようだ。大きな案内板も立っている。
 登山口からすぐの林の中にイベント用の人工氷瀑の「青だる」があり、それを少し見物して登りにかかる。登り始めは杉の植林地でそれがカラマツ林になり、高度が上がるとミズナラの自然林に変わる。
 登山道は雪に覆われているが表面がザラメ状で、登山靴がまだ新しいためフリクションが良く効く。ジグザグに道が付けられ、勾配が緩やかなのでアイゼンなしでも楽に登っていける。今年は雪が少ないようで日当たりの良いところはかなり雪が溶けていて、陽射しがあるとまるで春山のようだ。風もないので次第に 暑くなり、ジャケットを脱ぎ、オーバー手袋を取り、マスクを外してだんだん軽装になる。
 静かな山道で、はるか下の高原川の流れの音が良く聞こえる。ツピッ、ツピッと小さく鳴きながらコガラが梢を渡っていく。

 

始めは杉林を登る

ミズナラ林に変わる

 

  次第に高度を上げると背後の山の向うから焼岳が競り上がってくる。昨日良く見えなかった槍ヶ岳も、落葉樹の梢越しに見えるようになり、雲に隠れないうちに一枚写真を撮っておく。これで一安心。

 登山道は二ヶ所で谷川コースと尾根コースに分れ、登りは取りあえず展望が望めそうな尾根コースを採る。
 谷川コースと合流する無然平の手前の第一展望台で、やっと小枝に邪魔されず展望が開ける。槍ヶ岳から西穂への稜線が良く見える。

梢越しに槍ヶ岳

 

第一展望台からの槍ヶ岳、大食岳、中岳、南岳

無然平の篠原無然の石像

 

  第一展望台からわずかに進むと無然平。地元の教育者である篠原無然の石像が真面目そうに正座している。
 無然平の先で再びルートが分かれ、こちらも尾根コースを選択する。しかし、この尾根道はコースの中で最も急で、しっかり汗をかくことになった。落葉樹の中にヒノキやシラビソが混じって展望も効かず、あまりお勧めではない。
 谷川コースとの合流点附近からは十石山の方角の眺めがあり、少し進むと第二展望台で、ここからは初めて笠ヶ岳も見える。第二展望台は笠から焼岳までワイドに展望が開け、特に西穂の姿がいい。昨日もロープウェイの山頂駅から眺めて西穂の評価は上がり、次のターゲットに昇格した。

 

十石山から四ツ岳方面

第二展望台からの穂高連峰

 

 第二展望台のすぐ上の小ピークが第三展望台。ここからは槍の方は見えないが、 山裾まで見えてきた焼岳が大きい。
 この辺りからミズナラにダケカンバが混じり始め、やや広い稜線に上がるとブナ林に変わっていく。新緑の頃も気持ちの良さそうな道だ。第四展望台である乗鞍岳展望台からは四ツ岳の右奥に、わずかに乗鞍岳の山頂の幾つかのコブが見える。
 乗鞍岳展望台からなだらかな稜線を進むと、福地山の広い山頂に到着する。

 

第三展望台からの焼岳(左)と白谷山(右)

乗鞍岳展望台から乗鞍岳山頂アップ

 

 

山頂からのパノラマ
左から笠ヶ岳、大木場ノ辻、槍ヶ岳、南岳、涸沢岳、奥穂高岳、前穂高岳、焼岳

 

  山頂からはこれまで見え隠れしていた山々が全てパノラマに広がる。これは素晴らしい。曇り空で雪の輝きがないのが残念だが、まあこれだけ見えれば満足できる。
 北アルプスの東側では松本の近くの光城山や大町の山岳博物館などいくつかのビューポイントが思い浮かぶのだが、西側からアルプスをじっくり眺めるのは、これまであまり足を運ばなかったこともあり、笠ヶ岳からを除けば初めてのような気がする。

福地山山頂

 

左から涸沢岳、奥穂、前穂、明神岳

 

 広い山頂には登山者が作ったベンチ状の雪の段があちこちに残されていて、その一つに腰掛けて山を眺めながら少し早い昼飯にする。カップヌードルを食べながら、改めて贅沢な眺めだと感じる。
 ふと、詳細な山座同定をしてみようと思い、スマホの展望アプリを立ち上げてみて驚いた。登ってくる間、ずっと西穂だと思っていたピークは何と奥穂だった。カッコいい山だと感心していたのは奥穂で、しかも山頂の岩峰はジャンダルムだった。カッコいいはずである。よくよく見れば右側には前穂も見えていて奥穂に間違いはないのだが、左側の涸沢岳を奥穂だと勘違いし、昨日の印象もあってカッコいいのは西穂だと思い込んでいた。
 それでは西穂はどこにあるかと探せば、独標から奥穂に向かう左上がりの稜線の中に紛れてしまっているらしい。影の出来ない曇り空も ピークを分かりにくくしている要因のひとつかもしれない。
 先ほどの西穂への気持ちの盛り上がりが行き場所を失ってしまった感じだが、独標から西穂へのギザギザの稜線は魅力的なので、やはり近いうちに登ることになるだろう。

 

笠ヶ岳

焼岳

 

 下山は登りに使わなかった谷川のコースで下る。総じてこちらの方が歩きやすい。登山道は全体に緩やかな勾配で造られていて、結局、最後までアイゼンを着けることなく下ってしまった。

谷川コース(標高の低い方)の休憩所

 

 


 福地山ルートマップ


[山行日]   2019/2/27(水)
[天気] 曇り     2019年2月の天気図(気象庁)
[アプローチ] 26日  中部縦貫道 高山I.C. →(R158、R471、県道475)→ 新穂高温泉(ロープウェイで

   アルプスの眺望を楽しむ)新穂高温泉. →(県道475)→ 栃尾温泉

   *高山ICから直行すれば[約48km]

27日 栃尾温泉 →(R471)→ 福地温泉・福地山登山口P  [約4km]

・登山者用駐車場あり。15台くらい。トイレなし。
 

[コースタイム]
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
1:25 6:55 福地山登山口P発(940m)   0℃
8:10 下の分岐(谷川コース分岐)    
8:20 無然平(1375m) 0:05  
0:20 8:25  
8:45 上の分岐合流点(第二展望台下) 0:05  
0:40 8:50  
9:30 福地山山頂(1671.7m) 0:55 昼食
0:30 10:25 2℃
10:55 無然平(1375m) 0:05  
0:55 11:00  
11:55 涸沢ヒュッテ着 (2300m)   全行動時間
3:50     1:10 5:00
登り 2:25        
下り 1:25        
 
[地図] 焼岳(1/25000)
[装備] ダブルストック、アイゼン(使用せず)

 

[温泉] 荒神の湯
・栃尾温泉の歓迎アーチの正面にある、蒲田川の河川敷の露天風呂。
・湯舟と脱衣所しかない。
・入浴料200円。(管理協力金)
・開放的で気分がいい。
[風景印] 栃尾局
 (高山市奥飛騨温泉郷栃尾339−41)

・図案
  新穂高ロープウェイ、穂高連峰、無形文化財・鶏芸の舞