秋葉山(あきばさん) [静岡・遠州] 865m |
私の住む地域の神社には秋葉社の社額を掲げた祠があることが多い。地域の人々は親しみを込めて「秋葉さん」と言う。本殿とは別に、境内に祠を設け、そこに秋葉神社のお札を入れて祀っている。また、集落に古くからある常夜灯の後ろに、箱を付けた柱を建て、その箱にお札を納めてお参りしているところもある。
はてさて、地域の神社に関わることになった私自身は「秋葉山」にお参りしたことがない。「秋葉山」は正式な名称を「秋葉山本宮秋葉神社」といい、南アルプスから派生した尾根の先の標高865mの山の上にある。神社の名前でもあるし、山の名前でもある。 |
新東名の浜松・浜北ICから車で一時間もかからずに下社の駐車場に到着。このあたりは、10数年ほど前にカヌーに凝っていたころ、気田川の川下りのためによくキャンプなどをしていたところだ。カヌーはシーズンオフなので見当たらないが、キャンプ場はまだあるようだ。 |
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下社参道入り口 |
下社拝殿 |
さあ、お参りを済ませたのでいよいよ上社へ。まずは東海自然歩道の標識に従って、車道を坂下の集落に向かう。 正面にこれから登る尾根が見えている。 途中、車道のそばに表参道参拝者用駐車場があった。本当は下社の参詣者の邪魔にならないように、この駐車場に止めるべきだったのだ。 |
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登る尾根を見上げる(下社駐車場から) |
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坂下の九里橋 |
石畳の道はすぐに、秋葉寺の大きな案内標識のところで土の道に変わる。ここからは杉やヒノキの植林地の間をジグザグに登っていく。古くからの表参道だけあって、道幅は2mくらいある。昔の1間というところだろうか。 道の脇に四角い火袋の変わった形の常夜灯が何基も立っている。説明板によると、江戸時代末期の嘉永五年(1850年)の御開帳の時に個人が寄進したものだそうだ。他にも丁目石や茶屋の跡などもあり、往時の賑やかさが偲ばれる。 それにしても急でしんどい道だ。徒歩の参詣の頃は、山頂の参籠所(さんろうじょ)で一泊し、翌朝5時頃、祈祷を受けて下山したそうだから、ここを登るのは午後3時〜4時くらいであったようだ。長い道のりを歩いてきて、最後にこの坂を登るのはやはり大変なことであっただろう。今とは周囲の様子は違っているだろうが、この展望のない単調な道はつらい。 信仰面の興味がないと、ハイキングコースとしては楽しいものではない。 |
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周りは植林地ばかり |
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常夜灯 |
神社まで三十丁の石碑 |
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標高300mを過ぎたあたりからやや傾斜は緩くなった。 |
登っていくバギー車 |
単調な展望のない道は相変わらずだが、道脇には崩れた鳥居の跡とか、子宝を願った子安地蔵などがあり、信仰の跡をうかがわせるものも見られる。 東海自然歩道だからコースタイムは余裕を見てあるだろうと思い、山上までコースタイム2時間10分だが1時間半くらいで着くのではないかと考えていたが、秋葉寺 (しゅうようじ)に着いた時にもう1時間半になっていた。ほぼコースタイムどおりである。 |
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子安地蔵 |
明治維新直後の神仏分離令により、 それまでの神社の中に寺があり、寺院の中に社があり、また神主と僧侶が同居しているという形態は改められた。神道、仏教の両方の要素を持つ修験道も禁止された。維新政府が天皇を担ぎ、天皇家の祖となる天照大御神などを信仰対象とした神道を国体の基にしたので、神社と寺院 に分離するときに仏教的施設を除去することが多く、それが廃仏毀釈の過激な動きにつながっていった。
秋葉山も江戸時代は「秋葉大権現」と呼ばれ、神仏混淆の信仰が行われてきた。修験道の道場でもあり、今も続く「秋葉の火まつり」は修験者の火の行
につながる感じがする。 |
はてさて、実際の秋葉寺はなんだか寂れた感じがする。山門は立派だが朽ちている部分もあるし、境内は広いが、人の気配がない。秋葉神社と同日の火まつりを知らせる看板だけが新しい。 本堂の前で少し休んだ後、秋葉神社に向かうため裏に回ったところ、意外に奥まで建物があり、道場として泊まることもできるのかもしれない。建物の裏に先ほど登っていたバギーが止まっていたが、きっとここに畳を運んできたのだろう。火まつりが近いので畳を替えたのだろう。ここの寺には車道が来ていないようだ。 |
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秋葉寺山門 |
少し登ると秋葉神社の神門に着く。この神門は昭和18年の火事の時に類焼を免れたので、江戸時代の繁栄を偲ばせる唯一の建物となっている。彫刻が施された立派なもので、門内には神主姿の武神が収まっている。江戸時代後期に建てられたようだ。 |
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秋葉神社の神門 |
山門から少しの登りで秋葉神社上社に到着。結局下社から2時間かかってしまった。 |
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上社拝殿 |
それでも神仕えの身ではあるので、ちゃんとお参りをし、お札も頂いてきた。ウィークデイではあるが、駐車場の方から個人や会社での参拝者が三々五々上がってくる。 鳥居下の手水舎のあたりからは南の方角の展望が開け、浜松方面が見える。逆光で混然となっているが、空と同じ大きさで遠州灘も広がっている。 |
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金の鳥居と開ける展望 |
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帰りは同じ道を下る。登りには気が付かなかったが神社近くは杉の大木が多く、森としても見ごたえがある。林床のコアジサイが黄葉して彩りを添えている。 道がいいので下山は早いがそれでも、コースタイムの1時間半とあまり変わらなかった。 登り下りですれ違ったハイカーは十名くらいだった。 |
コアジサイの黄葉 |
[山行日] | 2013/12/3(火) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[天気] | 快晴 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[アプローチ] | 新東名・浜松浜北IC →(R152、
R362号)→ 秋葉神社下社(浜松市天竜区春野町領家) [約20km] ・下社前の駐車場利用。公衆トイレあり。 ・東海自然歩道を少し歩いたところに表参道参拝者用の駐車場あり。こちらにもトイレあり。 |
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[コースタイム] |
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[地図] | 犬居、秋葉山 (1/25000) |