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日向小次郎と若島津健はライバルだった。
些か少年マンガのノリのようで申し訳ない。
しかし、とにかく、二人はライバル同士だった。
と、周囲には思われていた。
ライバルと言っても、互いの能力を伸ばし合う良い仲間的なニュアンスのあるそれではなく、もっと殺伐としたイメージの、つまり二人の間には憎悪さえ存在しているかのような関係だった。
と、彼らを取り巻く人々には思われていた。
まずは、お互いが通う高校というのが問題だった。
日向小次郎が通う東邦学園、そして若島津健のいる明和東高校。
それは高校サッカー界において、過去何度となく因縁の対決を繰り返し、様々な歓喜と絶望の渦巻くドラマを繰り広げ、いつしかその二校は宿敵と呼ばれるまでに至った。近いところで去年の冬の対決では東邦が、夏のインターハイでは延長戦までもつれ込んで明和東が勝利した。戦力的には五分五分と言って差し支えない。
その二校のキャプテン同士、しかもかたやFW、かたやGKともなれば、そこには誰にとっても判り易い構図が簡単に出来上がる。
しかしここに、当の本人たちの思惑は欠片ほども入っていないのが問題だった。

事件は、そんな時にやってきた。
Uー17日本代表というチケットを持って。




大体さ、俺らは3人じゃん? で、あいつらは4人。何で東邦から4人も来るんだよ?」
もう何度聞いたか判らない反町の言葉に、若島津は適当に相槌を打った。
電車の揺れが眠気をそそる。窓から見えるのはずっと変わらぬ田園風景で、面白いものは何一つないのもそれを増幅させている。
「しかも向こう、日向がいるじゃん。 何か一番気に入らないって、それなんだよな」
そりゃそうだろ。だって、こないだのインターハイ得点王。メンバーに入ってて当たり前じゃないか。
と、軽く流した若島津に、反町は甚く憤慨したように声を荒げた。
「だから気に入らないっての! あいつがいると俺が控えに回るかもしれないだろ」
「あー……、そうね…」
「そうねッ? お前な、友達ならここで、そんなことないよ、反町がスタメンで当然だろ、くらい言えよ」
「あー……、ごめん」
このやりとりは、これで一体何回目になるのだろう。代表選出が決まってから数えれば、少なくとも3回は確実だ。
「お前はいいよ、お前はさ。誰がどう考えたって第一キーパーはお前じゃん」
溜息と共に吐き出された言葉に、若島津はようやく反町に視線を向けた。
「何だよ? 何も奢ってやんねぇぞ」
「違うっつーの! 大体な、何か奢って欲しくったって、あんなとこ店も何もねェんだよ」
反町の言う『あんなとこ』とは、今彼らが向かっているUー17代表選手強化合宿に使われる宿舎を指す。
日本代表も使用する由緒正しい合宿所。恵まれた環境で存分にサッカーに勤しむことの出来るその場所は、言い換えると周囲にはサッカーコートとフェンス、そして海につながる遊歩道以外何もなかった。周囲2キロ以内には、ファミレスどころかコンビニの一軒すらなかった。
ちなみに、明和東からは他にもう一人選出されていたが、彼は一足先に到着しているはずだった。
優勝で締めくくったインターハイが終わり、先輩の引退と共に満場一致でキャプテンとサブキャプテンに昇格した若島津と反町には、今回の合宿メンバー選出に合わせて、校長やOB会への挨拶に始まり、その他諸々の雑務が待っていた。来年の卒業と同時にJリーグ入りが決まっている先輩は、めんどくさいとばかりに無情にもそれらに追われる二人を置いて先に行ってしまったのだ。
「……ジュースの自販機はあったぞ、確か」
「ボケかましてんじゃねぇよ。大体どうでもいいんだ、そんな事は!」
車窓に広がる緑の田んぼとすっきりと晴れ渡った高い空。極めて牧歌的なその光景とは裏腹に、反町の心中は未だ荒れているようだった。
伝統的に明和東サッカー部は、東邦学園が気に入らないのだ。それは若島津も分からないでもない。若島津だって、去年の冬の大会では彼らに殺意のようなものまで抱いた記憶はある。
しかし、昨日も選出報告会なるもので大勢のOB連中に囲まれ、やたらと東邦学園、東邦学園言われ、しまいには対戦して破れたウン十年前の試合の話なんぞ持ち出されては、多少引いてしまう部分があっても致し方ないとも言えないか?
どうして、こうも過熱してんのかね。
明和東キャプテンという身でありながら、実は若島津は、さほど彼らを悪く思ってはいなかった。
中でも日向小次郎。
彼とは、初めて会ってからもうかれこれ5年は経つ。その間、ジュニアユース初め全国選抜で2度ばかり同じチームになったことはあったが、『友達』は、おろか『知り合い』とも呼べない状況は未だ続いていた。何せ過去に遡っても、彼とまともに会話らしいことをした記憶さえない。
これには、当時からライバルと言われていた二人が余計な争い事をしでかさないようにという周囲の気遣いが絡んでいたのだが、当の本人は知らなかった。
そんな微妙な経緯もあり、日向のことは試合中の姿以外、ほとんど何も知らないと言ってもいい。
同じ年にしては体もでかくて強くて、ちょっとのチャージじゃ倒れるどころか揺らぎもしない。そして、あのどっか偉そうな雰囲気。外見的には、あまり良い印象とは言い難い。
しかし対峙すると、あそこまでわくわくさせてくれるFWに、若島津は今まで出会ったことがない。シュートを入れられれば死ぬほど悔しくて、人目さえなければゴールポストを蹴り倒すくらいしたい気分になるけれど、サッカーの面白味を、彼以上に感じさせてくれる相手に今まで出会ったことがないというのは事実だった。
初めて対戦した時から、すでに感じていたのだ。
すげー奴、と素直に関心できた相手。反町も昔から頼りになる味方ではあるけれど、あそこまで自分の内に眠る闘争本能をかき立ててくれる相手はいなかった。
良い機会だから、今回の合宿で一回くらいちゃんとしゃべってみたい気もするんだよね。
明和東に帰れば部室の空気までもが『打倒・東邦』のあの環境では誰にも言えなかったが、実は若島津は密かにそんな期待を抱いていた。
「とにかく、俺は絶対あいつには負けねぇ! スタメン取ってやる!」
「うん、その意気だ。がんばれ反町、お前なら出来るよ」
なんて、折角ノッてやったってのに。
そう言った若島津の顔を、何を思ったのか不意に反町はしげしげと眺め、そしてしみじみとこう呟いた。
「お前のその顔で言われると、マジで大丈夫な気になってくんのが不思議だよな」
「……反町」
「いいじゃんかよー。お前、絶対に顔で得してるよ? なんたって雪の王子様だよ?」
「……お前、スタメン取る前に殺されたいらしいな」
雪の王子様。
若島津に、その噴飯もののあだ名が付けられた経緯は去年の冬の大会に遡る。
件の東邦学園との決勝戦。その日、東京は何年振りかの大雪が降った。そして、もちろん国立競技場にも。
あの日は本当に寒かった。朝から降り続いている雪にも関わらず、予定通り試合が行われると聞いて、えぇっ、マジかよ?!と、一同唖然としたものだ。いつものサッカーボールでは周囲に同化して見えにくいので、急遽、蛍光の黄色のボールが用意され、雪とのコントラストで少々目がチカチカした。あれが決勝戦。負けたからというわけでもないが、今でもちょっと納得がいかない。
後日、『一応』と、注釈を付けずにはいられない某サッカー雑誌の高校生大会特集なるものに、その決勝戦の様子が載った。
まぁいい。そこまではいい。どうもアイドル雑誌紛いな雰囲気を醸し出しているが、『一応』はサッカー雑誌だからな。
だけど、これはねェだろう。
 『王子様』
その文字は、若島津の写真の横にでかでかと書かれていた。しかも、『雪の』って付くとこが、イッちゃってる度を更に醸し出している。
学食での昼食中、同じクラスの女子達にそれを見せられ、若島津は文字通り食っていた飯を噴き出しそうになった。
――でもさ、若島津。これ結構ハマってるよ。
――そうだよね、王子様って感じだったもん、あの時の若島津。
――そうそう、応援席寒くってあの時はそれどころじゃなかったけど、あとで夜のニュースとかで見た若島津、かなり王子だったよ。
――雪で周り白くってさ、髪が風になびいちゃったくらいにして、試合終わってこう、項垂れた感じの若島津がねー、あれは王子だったわ。
――これが小池とかだったらさ…
――ありえないー!
項垂れてたのは負けたからだ。うるせェっての。
本人を他所に勝手に盛り上がる女子連中に、若島津は本気で眩暈に襲われた。そこに反町まで参入した日には、もう誰にも止められない。
全国版でTV中継されたその試合、そしてこの記事。各地から届くファンレターとでも言うべきものにもそのあだ名の登場回数は多く、マスメディアというものに脅威さえ感じた。
「みんなの前ではそれ、絶対言うなよ。いいな!」
「えー、つうかさ、みんな知ってると思うけど」
「それでもだ! いいな? 反町」
例え知っていたとしても、みんなもう忘れているはずだ。そうだ、そうじゃなきゃ、俺はやっていけない。
「東邦の奴らの前で、明和東のキャプテンがバカにされるようなもんなんだぞ。それでもいいのか?」
そう言うと反町は表情を改めた。東邦の二文字は効果はあったらしい。
自分で言っておきながら、若島津はその言葉の影響力の大きさに面食らった。オイオイ、それで黙っちゃうってどうよ? そこまでマジなんだー、などと、人事のように感心せずにはいられなかった。




「よう、遅いぞ」
「勘弁してくださいよ、井関先輩。やっとOB会から抜け出してきたんですから」
玄関ロビーで先に着いていた先輩と出くわし、反町はうんざりしたような顔を作って、抱えていたスポーツバッグをドサリと降ろした。
「もう来てんですか? 東邦の連中」
「あぁ、いるぞ」
苦々しげに吐き捨てられたその言葉を聞いて、若島津は何となく嫌な予感に襲われた。余計な揉め事はごめんだぞ、俺は。まさか、もうしでかしたなんて言うんじゃないだろうな。
しかしそんな心中など知る由もない先輩は、若島津に人差し指をビシッと突きつけ、そして呑気にもこう言い放った。
「若島津、お前、こんなとこ来てまで日向とケンカするなよ」
「しませんって。俺、今まで試合中でもそんなのしたことないでしょ」
そりゃ、こっちの台詞だっての。何で俺が日向とケンカなんてせにゃならんのだ。俺はあんたたちよりずっと穏健派なんだ。
そりゃ時々、サッカーが絡むと、豹変する自覚はありますけどね、時々ね。
「試合中は退場になるから抑えてただけだろ。でもここじゃケンカしたからって、よっぽどのことじゃなきゃ強制送還されるわけでもないし」
「…しません。先輩こそ気を付けてくださいよ。俺、校長からもそう言われてきたんですからね」
滅多に入ることなどない校長室。揃って頭が薄くなりかけている校長と教頭は、大して暑くもないのに落ち着きなくハンカチを額に当てながらこう言った。
――まぁ、君たちの気持ちも分からんでもないですよ。私としても、長年の伝統として東邦学園には負けたくないというのは正直あります。でも若島津くん、今回君達は栄えある日本代表に選ばれて彼らと一緒のチームになるわけですから、ここは一つ、今までの感情は抑えてなるべく穏便に、穏便にね。
――いいですか。余計な諍いは起こさないよう、明和東キャプテンとして、それは覚えておいてくださいよ。学校の評判というものを君たちが背負っているのも忘れずに。
それに対して若島津は、はぁ、という少々間の抜けた返事をすることしか出来なかった。
いや、だからね、学校の評判云々は置いといても、俺としても余計な揉め事は避けたいところ。そんなご注意を、いちいち、もとい、わざわざ、いただくほどの事はありません。
ただし、あとの二人の心情は知らないけど。
しかし、『キャプテンとして』とまで言われたからには、井関先輩や反町の行動にも目を配っておかないといけないのだろうか。
若島津は軽い頭痛を覚えながら、校長室を辞したのだった。
「何? あのオッサン、そんな事まで言ったの?」
初耳、と反町は大げさに驚いている。
「そりゃやっぱ、今年はお前らがいるからな。お前と日向。そりゃ校長たちも心配もするわな」
「えぇッ?」
じゃ、何か? 彼らが一番に釘を刺しておきたかったのは俺なわけ? マジで? 俺ってそんな凶暴なイメージなわけ? そりゃ王子様ってのもどうかと思うけど、それもそれでちょっとショックかも。
自分への世間の認識を目の当たりにして、若島津はかなりの衝撃を受けた。
しかしその時、視界に入ってきた人影に何気なく目を向けた若島津は、一瞬にしてそのショックも忘れ、思わず身構えた。
今まで話題に登っていた東邦学園の4人が、エレベーターを降りてロビーにやってきたのだ。もうすでに学生服からジャージに着替え、何やら話しながら近づいてくる。こちらにはまだ気付いていないようだった。
三年生二人を筆頭に、後ろにDFの島野、そしてその更に後ろに日向の姿が見える。
あぁ、このままいくと、あと5秒後には戦いのゴングが鳴るのだろうか。
――なるべく穏便に、穏便にね。
若島津たちがいるのに気付いて、おい、とか何とか言い合いながら彼らが近づいてくる。
先制パンチは、前を歩いていた東邦3年の二人からだった。
「おっ、これはこれは。明和東の…」
「随分ごゆっくりな到着だな。そちらのキャプテンの方々は」
それに対する応酬は、これまたいきなりのケンカ腰。
「関係ねェだろ。集合時間に遅れたじゃねェし。お前らと違って、忙しいもんでね」
だーから先輩! 余計な揉め事はやめてくださいって言ったばっかじゃないスか!
「まぁ仕方ないか。あんな田舎からわざわざ出てきたんだ、時間もかかるってもんだな」
「あぁ、そうだよな。そりゃご苦労さん」
一発触発の空気を遮るように、そこで、先輩、と口を挟んだのは、何と日向だった。
「行きましょう。外見たいって言ったの先輩でしょ」
「…あぁ」
鼻白んだような、微妙な沈黙。
「じゃあな。2週間せいぜいよろしく」
結局、そう言い捨てるようにして彼らはその場を去っていった。
第一ラウンド、取りあえず終了。
つ、疲れた。ただでさえ、長い時間電車に乗ってて疲れたってのに、着いてみりゃしょっぱなからコレかよ。校長先生ごめんなさい。俺もう自信ありません。いや、俺はいいけど、他の奴らの行動にまで責任持てません。
「…んだよ、ムカつく。あいつら」
「そうですよね。何だよあれ。馬鹿にしやがって」
穏便に、穏便にね。
言うのも馬鹿らしくなって、若島津はさっさとこの場を去ることに決めた。
部屋割りとスケジュールを早いとこ確認しておかないと。こんな騒ぎのせいで後で慌てるはめに陥るのはごめんだぞ、俺は。
未だエキサイトしている彼らを放って、取るべき行動に移ろうと若島津はフロントに向かった。
カウンターに置かれている紙を一枚取ってそれらを確認していると、不意に後ろから声をかけられる。
振り返るとそこには昔からの知り合い、代表仲間の岬が立っていた。
「若島津、久しぶり」
「よぉ、岬」
「元気? そう言えば、インターハイ優勝おめでとう」
「あぁ、サンキュー。お前も元気そうだな」
「うん。取りあえず、4時からミーティングだってさ」
手元の紙を一緒に覗き込み、岬はにっこりと笑って言った。
現在3時25分。おっと、これは本当に早く荷物を部屋に入れねば。ふんふん、同室は森崎ね。やっぱりポジション別にされてるのか。
Jリーグユース育ちの森崎は、高校サッカー界の事情にちと疎い分、若島津としてはやりやすい。彼も昔馴染みな相手なだけに、気を使わずに済みそうなのは有り難かった。
ちなみに、と視線を下げて目的の名前を探す。反町の同室は日向ではなく、これまたユース育ちのFW選手だった。
関係者の間で、二校の対立は周知の事実。まぁ、血気盛んな、もとい、多感な年頃の彼らを、その状況でまさか二人部屋の同室にはするまいて。
反町を急かすべく振り返った若島津の視界に、岬の何か言いたそうな顔が入った。
「なに?」
「明和と東邦って、ほんとに仲悪いんだ?」
突然、直球で投げられた質問に、若島津は返事に詰まって思わず視線を泳がせた。
「いや、悪いって言うか……、まぁ悪いんだろうな」
「さっきも何か緊迫してたね」
「見てたのか? …何かなぁ、どうやら積年の恨みがあるらしいよ」
ふーん、強豪は大変だ。などと呟いた岬だったが、彼の高校もいつもベスト8には入っている。こないだのインターハイではベスト4。
「若島津、小次郎とも仲悪いの?」
小次郎? あぁ、日向の事ね。
そういえば彼は小学生の頃、日向と同じ学校にいたことがあったと聞いた気がする。しかし、彼は全国各地住んでいないところはない、ってくらいにあちこち転校していたようで、いつの年にどこにいたかは本人さえもしっかり覚えていないようだった。
「ライバルとかって言われて、みんなが勝手にそう思ってるみたいだけどね。でも仲悪くなるほど俺、日向のこと知らないんだけど」
だから世間の誤解なんだって、誤解。
と、言いかけて、若島津はふと日向のことを考えた。
俺はともかくとして、あいつは一体どう思っているのだろう。
やっぱり俺のこと嫌いなんだろうか。さっきも一応先輩を止めてたけど、でもあれはあいつも東邦キャプテンという立場上やむなくそうしただけに過ぎないのかもしれないし。
「そっか、若島津もいろいろと大変だね」
しみじみと呟かれた言葉に、若島津は何だか情けなくなってきた。
「でも、またそれが君の話題性の一つになってるんじゃない? 有名税ってやつでさ、仕方ないかもね」
ただでさえきみはルックスで人目を引くんだしさと、岬はあっけらかんと言って若島津をげんなりと項垂れさせた。
ここでもまたそういう話か。ここ数年サッカー以外、顔の事まで言われて、いい加減うんざりしてきたぞ。
容姿で言ったら、それこそ日向みたいなのが若島津の理想だった。無愛想と言えば無愛想だけど、ああいう男らしい雰囲気こそなりたい姿なのだ。
そもそもそんな税金取られるほど、自分の懐に収入が入ったとは思えねェっての。
「あれ? もしかして怒った?」
「…いや、もういい加減、言われ飽きた」
余裕を見せたつもりで言い返した言葉も、逆に岬にカウンターパンチを食らうハメになった。
「そうだよね、王子様だもんね」
「……岬」
「巧いネーミングだよね。さすがはプロだよ」
時々怖くなる、岬の満面の笑顔。
言い返す気力のストックが見当たらず、まだ何か言いたげな岬を置いて若島津はフロントを後にした。部屋に入った後で、反町を忘れてきたことに気付いたが、迎えに戻る元気も出なかった。どうせきっと彼はまだ、先輩と打倒東邦に燃えていることだろう。
あぁ、先が思いやられる。





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