Dracula
 ドラキュラ

 ブラム・ストーカーの恐怖小説『吸血鬼ドラキュラ』に登場するヴァンパイアで、その強烈な印象から、後にヴァンパイアという種族の代表格のような存在となった人物である。
 吸血鬼ドラキュラは幾度となく映画化されており、黒の夜会服に身を包んだ、オールバックの髪型のいかにも貴族然とした人物という印象があるが、これは後世の舞台や映画の影響によるものが強い。原作においては黒ずくめの格好という以外は特に服装は定められておらず、口ひげを蓄えた、力強い鷲のような精悍な顔立ちの、しかしながら蒼白い顔色をした人物として描かれている。
 トランシルヴァニア地方に住む貴族であり、ドラキュラ伯爵と呼称されることもあるが、実際に伯爵の地位にあるかどうかは不明である。トランシルヴァニア地方においては、幾多の戦いで勝利してきたドラキュラ将軍として称えられてきた人物であるが、その後悪魔と取引を行いヴァンパイアとなったとされている。
 長きにわたりトランシルヴァニアの古城で暮らしていたものの、いかなる経緯からか、自身の持つ強大な力を試してみたいと考えるようになり、手始めにトランシルヴァニアを離れてロンドンへの侵出を企てる。イギリスに住む弁護士のジョナサン・ハーカーを利用して、首尾よくトランシルヴァニアを出ることに成功したドラキュラは、ジョナサンの婚約者であるミーナ・マリーの親友である、ルーシー・ウェンステラをその毒牙にかけるが、その一件によって、ルーシーの婚約者であるアーサー・ホルムウッド、その友人であるクインシー・P・モリスとジョン・セワード、そしてセワードの恩師である大学教授のヴァン・ヘルシングらを敵に回すこととなる。ドラキュラはロンドンにおいて、ヘルシング教授らと様々な駆け引きや頭脳戦を展開することとなる。
 ヴァンパイアであるため、人の生き血を吸うことで数百年もの長きにわたって生き続けている。凄まじい怪力を持ち、嵐や霧、雷といった自然の力を操る能力や、体の大きさを自在に変化させる能力、ある範囲内であれば自由に姿を現す能力、狼やコウモリ、霧などに変身する能力、ネズミやフクロウといった下等な生物を操る能力など、様々な超常的な力を持ち合わせている。降霊術の使い手でもあり、これの応用で死体を操ることもできる。またヴァンパイアゆえに、その牙で生き血を吸われた相手も、適切な処置を施さなければ、いずれドラキュラと同じヴァンパイアとなってしまう。鏡に映らないという特徴もある。
 これらの驚異的な力を持っているものの、反面ヴァンパイアゆえの弱点も多い。太陽の光は天敵であるため、日中は棺の中で「眠り」につかなければならないのだが、その際自身の故郷の土が入っている棺でなければならない。また自らに縁のある土地でなければ、正午もしくは日の出と日の入りの瞬間でなければ姿を変えることができない。ニンニクや野薔薇といった特定の植物や、十字架や聖餅といった神聖なものには極端に弱く、これらが近くにあるだけで無力化されてしまう。流れる水を渡ることができず、また他人の家に入るときは、その家の住人に招かれなければならないなど、数多くの制約があり、これがドラキュラが長年トランシルヴァニアから出ることができなかった原因となっている。
 ドラキュラを滅ぼすには、心臓に杭を打ち、首を切り落とさなければならない。ゆえにドラキュラが起きている時には、人間の力でそれを成し遂げることは不可能であるため、ドラキュラが棺に入って「眠っている」時でなければ勝ち目はない。またドラキュラの毒牙にかけられた者を救うためには、ドラキュラ自身を滅ぼさなければならない。
 貴族としての高いプライドや、ヴァンパイアとしての強大な力ゆえに、自己中心的で他者を見下す傾向がある。自らの配下として3人の女ヴァンパイアを従えているが、その関係もあまり良好とはいえない。しかしながら、ジョナサンを城に招いた時は、食事の支度やベッドメイクなどを自ら行うなど、気に入った相手に対しては面倒見がいい一面もある。長い時を生きてきたため、様々な知識を持っており、彼が進出することとなるイギリスについての知識も豊富である。だが、反面自身の力に対するうぬぼれも強く、ヘルシング教授らにはそのスキを突かれることも多い。

 なおドラキュラのモデルになったのは、15世紀のワラキア公国に実在したヴラド3世であるとされているが、このヴラド公が用いた通称がドラキュラもしくはドラクリヤだったこと以外に共通点はなく、性格やエピソードに関しては全く関連性がないものである。実在したヴラド3世については君主(ヨーロッパ)に記述。