EF86 NF型フォノイコライザ 2号機 (2019年)
対応カートリッジ MM型、MV型など出力3mV〜7mVのカートリッジ
対応録音特性 RIAAカーブ
イコライジング偏差 23Hz〜35kHzで±0.15dB
1kHz増幅率 78倍(38dB)
SN比 70dB(Aフィルタ補正後)
回路図 電気的特性
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 「ラジオ技術」2019年5月号で発表した真空管式フォノイコライザ2号機です。レコードプレーヤ内蔵のオペアンプ式フォノイコライザに飽き足らず、往年のLPレコード全盛時代の音を聴くために製作しました。

 パソコンに接続してLPレコードをデジタル化することが想定された設計なので入力セレクタの機能はありません。RIAAカーブのイコライジングと軽い電圧増幅のみを行います。
 製作記事の発表後に音質の微調整を行い、よりダイナミックに鳴るようになりました。残留ノイズもほとんど目立たず(タマ個体のできに影響されます)、十分に実用的なフォノイコライザに仕上がりました。

 真空管式フォノイコライザの回路方式には「NF型」と「CR型」がありますが、本機は「NF型」です。5極管の電圧増幅管EF86(6267)にNFBを掛けてイコライジングします。低域はNFB量を減らし、高域は増幅度の減衰とNFB量の増加を組み合わせることによって高域と低域の出力電圧を加減する方式です。
 「NF型」の場合、日本では米国製名機にならって12AX7を使う2段構成が一般的なようです。一方、本機が採用したEF86を使う単段構成のイコライジング回路は昔の英国製プリアンプによく見られたものだそうです。
 本機の回路構成は基本中の基本と呼べる2段構成になっています。雑音防止のカバーがかぶさっている真空管はMT管のEF86で、RIAAイコライジングを行います。その後ろはいわゆる「フラットアンプ」で、電圧増幅を行います。フラットアンプに使う6C5というタマは電圧増幅管ですが、本機では電力増幅に近い使い方をしており、低域を力強く再生します。6C5のほかに6J5というタマも使えます。
 ダルマ型のST管6C5Gは1940年代に製造されたビンテージ管です。時代的に一番古いのは黒色に塗装されたメタル管で、筒型ガラス管のGT管は1960年代に製造された品種と思われます。いずれも本機に使えます。音色が少し違うのでタマを選ぶことで好みの音作りに活用できます。
 フォノイコライザは非常に微小な電圧を扱うため、ごくわずかであっても電界や電位差の影響を受けやすく、配線上の繊細な工夫が求められます。残留ノイズを減らすことは回路動作の最適化にもつながるので、音質にも好影響があります。
 本機の残留ノイズが実用上どのくらいあるかというと、普段の音量のときにスピーカーに耳を近づけるとツイーターから「シュー」という音が出ているのがわかります。しかしウーハーからはハムノイズがほとんど感じられません。このノイズの出かたは半導体式フォノイコライザとよく似ています。
 また本機は3機種のNF型フォノイコライザの中でも、コンピュータなどから出るデジタルノイズの影響を一番受けにくいようです。
 本機は豊かなハーモニーと透明感のある高域を聴けますが力強い低音にも特徴があります。往年のLPレコード全盛時代を支えた真空管式フォノイコライザを味わう贅沢は格別なものがあります。
 終段管に6C5を選ぶとややストレートで乾いた感じのサウンドになります。6C5より内部抵抗の低い6J5に変えると懐が深い高級感のあるサウンドに変化します。

 真空管式フォノイコライザの音は半導体式とは本質的な違いがあるように聴こえます。半導体式は「パワー感のリアルさ」、真空管式フォノイコライザは「空気感のリアルさ」と言えるかもしれません。スピーカーと鑑賞者の間の空間に音が満ちるような感覚が真空管式の魅力だと思います(再生環境にもよります)。 
製作の詳細と実体配線図は「ラジオ技術」をご覧ください。 


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