「ラジオ技術」2018年6月号で発表した真空管式フォノイコライザ初号機の改良型です。この改良型は雑誌未発表です。
レコードプレーヤ内蔵のオペアンプ式フォノイコライザに飽き足らず、往年のLPレコード全盛時代の音を聴くために製作したのが本機です。真空管式NF型フォノイコライザとして基本に忠実な回路構成ですが、地道に音質とノイズの改善を行ってきた熟成機と言えましょう。 パソコンに接続してLPレコードをデジタル化することが想定された設計なので、入力セレクタの機能はありません。RIAAカーブのイコライジングと軽い電圧増幅のみを行います。
本機の回路構成は3段になっています。初段はカートリッジの微弱出力をECC82(12AU7)によってあらじめ増幅してからEF86によるイコライジング回路に送り込みます。イコライジング後の出力はECC81のカソードフォロワ回路により外部に出力されます。この出力回路は半導体式機器に対応するように低インピーダンスで出力できるようになっています。
出力コンデンサの容量は低域レベルに影響があり、接続先機器の入力インピーダンスに対応して変える必要があります。相手側入力インピーダンスが20kΩの場合は1.5μF、50kΩの場合は0.68μFが適正値です。
真空管式フォノイコライザの回路方式には「NF型」と「CR型」がありますが、本機は「NF型」です。5極管の電圧増幅管EF86(6267)にNFBを掛けてイコライジングします。低域はNFB量を減らし、高域は増幅度の減衰とNFB量の増加を組み合わせることによって高域と低域の出力電圧を加減する方式です。
「NF型」の場合、日本では米国製名機を模倣して12AX7を使う2段構成が一般的なようですが、本機が採用したEF86を使う単段構成のイコライジング回路は昔の英国製プリアンプによく見られたそうです。 |
フォノイコライザは非常に微小な電圧を扱うため、ごくわずかであっても電界や磁界の影響を受けやすく、配線上の繊細な工夫が求められます。ノイズを減らすことは回路動作の最適化にもつながって音質にも好影響があります。
本機は残留ノイズの改善に相当苦労しましたが、ほとんど問題ないレベルに落とすことに成功しました。
実際にどのくらいあるかというと、普段聴いている音量でスピーカーに耳を近づけるとツイーターからは非常にかすかなサラサラという音、ウーハーからはこれも非常にかすかなハム音が漏れ聞こえるだけです。真空管式としては優秀な部類だと思います。 本機は高域のハーモニクスが明瞭であると同時に、メリハリのある元気のよい音を聴けます。LPレコードに刻まれた音の情報が、実は非常に豊かであることに驚きます。CDではきつく聞こえる高音が、LPレコードでは滑らかで、天まで昇るように美しかったりします。
低音にはCDより重みがあるのが不思議です。CDは瞬発的なパワーには優れるものの、LPレコードで聴けるような重みが伴いません。本機で聴くと低音が空間に押し寄せるような感じです。 本機は当初アース端子を備えませんでしたが、デジタルノイズ対策面から追加しました。このアース端子をレコードプレーヤーにアース端子につなぐと、ハムノイズに限らずボソボソというデジタル機器がらみのノイズに有効な場合があるようです。
ハムノイズ対策としては、拙宅の機器環境では不要のようです。接続してもしなくても変化はありません。 本機の元となった実験機の製作の詳細と実体配線図は「ラジオ技術」をご覧ください。このサイトでご覧いただける回路図やシャーシ内部配線は改良機のものです。 |