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| 『ミックスモダン』['25] | |||||
| 監督 藤原稔三
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| 何とも眼差しの優しく温かい作品だった。自身が保護司の支援の元で更生して従業員を幾人も抱える飲食店の社長になっている博之(藤原稔三)を夫に持ち、支えている園子(常石梨乃)が、三度目の女子少年院に入所することになった妊婦のユキハ(サーシャ)に掛けた言葉の少しも押し付けがましさのない声援に流したユキハの涙が美しかった。園子が流産経験ののち五度目の不妊施術にも失敗している経過が利いていたように思う。 ある種の一途さがその非行歴においても災いとなったと思しき勇人(井戸大輝)は、まだまだ未熟ながら、その一途さを善導してくれる支援者が傍にいれば、幼時の虐待による傷を克服していくことができるのかもしれないと思わせてくれるエンディングが感慨深く映ってきた。そこには、僕の僅かながらの教護院勤務の経験が作用しているのかもしれないが、それゆえに劇中での勇人の更生と転落の間の綱渡りのようなプロセスがとてもスリリングに映ってきた。ここまで頑張って来て自ら台無しにしてしまう危うさを勇人にだけ負わせるのではなく、元受刑者の先輩中年男にも被せていたところに感心させられた。 常識的理解と想像を超えた危うさを凌いで生きていくことの困難を思わずにいられない。そして、筋違い以外の何ものでもない、元従業員のマコトの負った借金を口実に強盗に見舞われるお好み焼き屋の木内夫妻のエピソードが目に留まるとともに、年の差婚の夫婦の関係が目を惹いた。更生中の従業員に対して、基本的に園子が厳しく臨み、博之が受容する関係のバランスが絶妙のコンビネーションを醸し出しつつも、恩ある先輩保護司に「まだ一人も更生させてやることができてない」と洩らす場面が切なかった。妻の園子は本当に偉いとしみじみ思った。 チラシ裏面の記載によれば、「国内の推薦も支援もない中、一般応募から2025年第75回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に選出」され、海外での公開を果たしているとのことだ。いい映画だった。『ミックスモダン』という作品タイトルは、勇人が失敗しながら焼いていたお好み焼きを博之が「いいんだ、いいんだ」と宥めていた最後の場面からのものだろう。まだ十八歳の勇人の人生の失敗は、必ずや上手な焼き上げの糧になるはずだ。 | |||||
| by ヤマ '26. 7.11. キネマM | |||||
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