『長崎―閃光の影で―』['25]
監督 松本准平

 長崎平和祈念式典での1945年8月9日、このまちに原子爆弾が投下されました。あの日から80年を迎える今、こんな世界になってしまうと、誰が想像したでしょうか。から始まる、鈴木史朗長崎市長の気迫の籠った平和宣言を聴いたこともあって、午前七時台からの一回上映になっているものを観てきた。

 グリコじゃんけんをアバンタイトルにした本作は、細部の描出において、過去に観たことのある作品群からしても、生々しいリアリティに後れを取るように感じながらも、事象そのものは、原案となった「閃光の影で ー原爆被爆者救護 赤十字看護婦の手記ー」(日本赤十字社長崎県支部)に寄せられた数々のものに加えて、記録に基づくものではないとの註書きをエンドロールにて添えたうえで、公然と朝鮮人差別が行われていた当時の状況をも描いていた。物語性以上に当時見舞われた惨状、症状、エピソードを詰め込むことに腐心したことの伺える作品だったように思う。そのいずれもが、今の時代に映画化するうえでの已む無きことなのだろうと思ったりした。あと一週間早う負けとったらみんな生きてたとの呟きが印象深い。

 エンドロールの前に映し出されていた楠の巨木の写真が、最後に当時の救護看護婦の現存者と思しき山下フジヱさん【「特別出演」とのクレジットからの推察】の背景に映っていた木なのだろう。以前観た、NHKスペシャル解かれた封印 ~米軍カメラマンが見たNAGASAKI~でも大きく取り上げられていた焼き場に立つ少年がフィーチャーされていたことが目を惹いた。

 すると、高校時分の映画部長が思いの外、この作品は響いて来たよ。昨夜福山雅治の「クスノキ」を5000人コーラスで聞いて余計にその想いがました。日本映画では『骨なし灯籠』に次いで暫定2❣️とのコメントを寄せてくれた。本作でエンドロールとともに流れる福山の♪クスノキ♪、確かになかなかよかった。ちょっとかぐや姫の物語いのちの記憶を思い出したりした。だが、福山の歌以上に、前日の式典で長崎市長が首相挨拶に先んじた宣言で…来年開催される核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議は、人類の命運を左右する正念場を迎えます。長崎を最後の被爆地とするためには、核兵器廃絶を実現する具体的な道筋を示すことが不可欠です。先延ばしは、もはや許されません。 唯一の戦争被爆国である日本政府に訴えます。 憲法の平和の理念と非核三原則を堅持し、一日も早く核兵器禁止条約へ署名・批准してください。…と述べた気迫に感銘を受けたと返した。

 その後に述べられた首相挨拶にあった…天を指す右手が原爆を示し、水平に伸ばした左手で平和を祈り、静かに閉じた瞼に犠牲者への追悼の想いが込められた、この平和記念像の前で、いま改めてお誓い申し上げます。私たちはこれからも、「核戦争のない世界」そして「核兵器のない世界」の実現と恒久平和の実現に向けて力を尽くします。との言葉を見越しての要請だったに違いない。
by ヤマ

'25. 8.10. TOHOシネマズ4



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