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“パレスチナ映画祭2025”
https://afzjapan.com/cinemadays2025
Filmlab Palestine

『ジェニン、ジェニン』(Jenin Jenin)['02] 監督 モハンマド・バクリ
『ぼくに見えた道』(When I Saw You)['12] 監督・脚本 アンマリー・ジャシル
『爪痕』(Upshot)['24] 監督 マハ・ハッジ
 三十二年前にオスロ合意に基づいてイスラエルとパレスチナが初めて相互承認を果たした年として歴史的に記憶されることになる年に、そのイスラエルとパレスチナの映画に加え、アラブ諸国の作品まで、八カ国十七本にもなるフィルムを一堂に会して四日連続上映するという、全国的にも例のない質量ともに充実した真の意味での中東映画祭を実施しただけに、久方ぶりにパレスチナ映画を観られる機会を逃す手はないと赴いた。

 バルフォア宣言の日にちなんで世界規模での連帯を示す映画祭が行われていたとは寡聞にして知らなかったが、最初に観たドキュメンタリー映画は二十年以上も前の作品で、次の劇映画も十年以上前、最後に観た昨年の短編映画はパレスチナ人老夫婦を描きながらも、エンドロールからすると、製作はパレスチナではなく欧州の作品だった気がする。現在のパレスチナを捉えた作品に欠けるのは残念だと思ったら、共催した“高知からパレスチナ・沖縄連帯実行委員会”の山崎氏によれば、12月4日5日に、まさに観るに堪えないが故に観る必要のあるドキュメンタリー映画『10月7日からのガザ』を上映するとのことだ。心して臨まねば、と思っている。

 最初に観た『ジェニン、ジェニン』は二十三年前のヨルダン川西岸地区なのだが、現在のガザだと言われても違和感のない“爆撃で荒れ果てた廃墟”が映し出されていた。かつてはアラブとユダヤの共生を夢みたこともあったが、もはや戻れなくなったと落ちついた口調で非難していた男性の言葉と、非常に強い調子の言葉で報復を誓い、怒りを露わにして繰り返していた少女の言葉が印象に残っているが、二人とも今なお果たして生き永らえることができているのだろうか。そのような話を休憩時に知人と交わしていたら、主催者から、監督は本作を撮って程なくして亡くなっているとの話があった。

 続いて観た『ぼくに見えた道』は、1967年のヨルダンが舞台で、難民キャンプに馴染めないパレスチナ人少年ターレクがフェダイーン【闘士】養成キャンプで活き活きとし始めるのを、追ってきた母親が心配しつつも、戦闘員養成キャンプにコミットしていく物語だった。最後に映し出されていた国境線と思しき鉄条網が僕には、少年が目指していた故郷パレスチナのように感じられたが、たまたま居合わせた旧知の女性は、イスラエルとの境かと思ったと言っていた。

 最後の短編劇映画『爪痕』は、三十年前に一度に五人の子供を爆撃で失ったと思しきパレスチナ人医師夫妻が、まだ幼い子供五人を一挙に失った現実を生きられずにいる姿を描き出している短編だったように思う。インタビューに訪れた記者の様子からすれば、職務については来し方支障なく過ごしてきていることが偲ばれるだけに痛切だった。
by ヤマ

'25.11. 3. 高知市自治労会館



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