『サウンド・オブ・フリーダム』(Sound of Freedom)['23]
監督 アレハンドロ・モンテベルデ

 実話に基づくと最初に出てきたから、どこまでが実話なのかなどと思いながら観ていたら、どんどんエンタメ的作劇が目立ってきたので、実話部分は小児性愛症者の闇市場とその市場への供給を果たす国際的な誘拐及び人身売買組織の存在のことかと思った。そしたら、最後にジム・カヴィーゼルの演じたティム・バラード捜査官本人の姿が現われ、彼の証言に基づき、児童の人身売買を防止する法律が成立されたとも流れて驚いた。

 児童売買春パーティを行なう会員制リゾート島の開設を囮にした『スティング』張りの大仕掛けについては、実際の記録画像と思しき動画も示されていたが、少女ロシオを追ってコロンビア南西部の反政府軍支配地域に単身乗り込んでいって少女を救出するその後のエピソードには、いくら何でも大幅な潤色がある気がして仕方なかった。

 エンドロール時に流れたジム・カヴィーゼルの語っていた特別メッセージによれば、撮影から公開までに五年もの時間を要した問題作だったようだが、なかなか公開できなかった理由は何だったのだろう。監視カメラの捉えた誘拐画像と思しきものが、2010年,2011年,2013年,2017年と出て来て、それ以降がなかったのは、それゆえかと納得した。

 それにしても、コロンビアのカルタヘナを本拠地にする人身売買組織がホンジュラスのテグシガルバでかなり手の込んだ大量誘拐を企て、メキシコのティフアナで売春窟を営みつつ世界各地(主に米国)のペドフィリアに子供売りつける市場が1500億ドルにものぼっていて、武器輸出で儲けている規模をも上回っているというのは本当だろうか。ジムの特別メッセージには、本編以上の訴求力があったように感じられたが、真摯な思いで製作されていると同時に、けっこう盛られているものも多くある気がした。

 すると「実話を映画化したそうですが、どこまでがフィクションなのかよく分かりませんでしたが、後半から物語にグイグイ引き込まれました。けれどもあの少女ロシオの救出劇はあまりにも出来過ぎでした。この映画、もっと話題になってもいい 作品ですが…」とのコメントを戴いた。その是非を問う面からも大いに話題にされるべき作品だと思う。特別メッセージでジムがより多くの人の話題にしてほしいと言っていたが、アメリカでは、どのような反響を呼んでいるのだろう。
by ヤマ

'25. 8.31. 喫茶メフィストフェレス2Fシアター



ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―

<<< インデックスへ戻る >>>