| |||||
『型破りな教室』(Radical)['23] | |||||
監督・脚本 クリストファー・ザラ
| |||||
最後に映し出された「私の学習を妨げるのは、教育だけである」とのアインシュタインの言葉が改めて響いてくる作品だったように思う。2011年にメキシコで起こった実話を基にしているとのことだったが、2023年作なら十二年経っているわけで、小6だったパロマ(ジェニファー・トレホ)も二十代半ばになっていることになるが、宇宙飛行士になる道にうまく進めたのだろうか、などと思っていたら、終映後、上映会主宰者のほうからパロマ本人が本作に出演しており、図書館で哲学書のコーナーに案内していた女性だとの説明があった。あまり絞っているとは言えない体型からは、宇宙飛行士とは異なる道に進んだようだ。 ゴミ拾いが家業だった彼女の夢が宇宙飛行士だったという設定は、八年前に『ブランカとギター弾き』['15]を観たときに想起した『忘れられた子供たち スカベンジャー』['95]のスモーキーマウンテンを思わせるゴミ山から隣接するアメリカのヒューストン宇宙センターが見えるらしい、舞台となった町マタモロスのロケーションからの創作だったのだろう。 指導要録を無視して子供の意欲を引き出そうとするラディカルな授業を行うセルヒア・フアレス先生(エウヘニオ・デルベス)から、特別な天才だと評されていた彼女の秘めたる靭さと毅然にも惹かれたが、やはり目を惹いたのは、幼い弟妹や赤ん坊の世話で学業を諦めていた、哲学者志望で、功利主義を説いたJ.S.ミルに惹かれていた少女ルペ(ミア・フェルナンダ・ソリス)やら、何でも質問していいと言われて女の子に好かれる方法をフアレスに訊ねていた一方で、パロマを守るために銃撃に出て四人も倒しながら自らも死んでいった少年ニコ(ダニーロ・グアルディオラ)だった。この二人に魅せられるところが大きく、いずれも破格の小学生でありながら、しっかり実在感を宿しているように感じられた人物造形に恐れ入った。 それにしても、最後にナレーションで現場では未だに稼働していないと語られていた、役人の不正によって機器が揃っていないパソコン室というのは、全国テストで画期的な成績を収めた時点での話なのか、本作を撮った時点での話なのか判然としなかったが、いくら何でも2023年時点での話ではなかろうと思いたいところだった。 | |||||
by ヤマ '25. 4.19. 喫茶メフィストフェレス2Fシアター | |||||
ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―
|