H.S.Sの意味
アプローチは鉱山施設から大きく離れた一角からだ。
廃道らしき道を登る。
轟水力発電所跡に到達、施設は大正12年竣工。
使用水量 45.0m3/sec 有効落差30mと資料にはある。
水路を流れてきた水はこの上部の水槽に一旦蓄えられる。
そこから水圧管路を流れて、
水車に導かれる。
水圧管路は落差のある水槽の水を
発電所の水車入り口まで導水するための導水管で、
通常、落差の2.3倍で傾斜の変化が少ない場所に設置される。
バルブの開閉用かモーターが残る。
主弁/主要弁など水圧管の末端の管と水車の連結部に設置される、
入口弁の開閉に使われたのかもしれない。
水車の内部点検時などにもこの弁を閉じることで行う。
何かのメーターが残る。
メモリは1000/2000/3000とあり単位は不明。
調速機などの回転数(rpm) を計測する機器の可能性が高い。
碍子や変圧器も散乱する。
製錬用に210馬力電動機6台、鉄索用25馬力電動機25台、
削岩機用コンプレッサー170馬力 3台などに電源を供給していた
三相誘導電動機、つまりモーターである。
冷却水か排水用ポンプの駆動用か、
送風機などの運転用モーターかもしれない。
『區分開閉器』と記載された高圧配電盤を分けるための開閉器(スイッチ)である。
発電機と変圧器の切り離しや、保守作業時の電路の分離などを行う開閉器だ。
アーク(火花)が飛ばないように、数分かけてゆっくり開閉する機器だ。
そしてひと際大きな機器がフランシス水車と発電機だ。
1849年アメリカのフランシス氏によって発明され、
中落差から小落差で水量が豊富な場所で用いられる。
正確には単流渦巻横軸型フランシスタービンと呼ばれ、
水圧管から導入された水は、
カタツムリのような鋳鋼製の胴巻きケーシング内に流れ込む。
流れ込んだ水は“ぐるり”と回りながら内側へ向かう。
ガイドベーンと呼ばれる魚型断面を持つ軸のついた案内羽根で
ランナーと呼ばれる羽根車に水をちょうどいい角度に導く。
水は外側から内側へ向かって流れ込み、
その勢いでランナー(羽根車)を押して回転させる。
ランナーの軸が発電機につながり、
それが回転することで水のエネルギーが電気に変わる。
これは水が外側から内側へ巻き込むように流れて羽根を回す“万能型の水車であり、
回転後の水は吸出し管(テールレース)へ抜ける。
フランシス水車の銘板には『製造 大正12年12月12日』と残る。
記載されるH.S.S は 『Horsepower-Speed-Specification』 の略号で、
戦前の日本の電機銘板で使われた独自表記だ。
回転数を階級(Scale)として分類し、低中高を分類したものだ。
水車にはフランシス/ベルトン/プロペラなどの形式がある。
比較表を掲示しておく。
フランシス水車のケーシングには(東京)荏原製作所の文字がある。
荏原製作所は大正2年創業、
現存するポンプ・水処理設備の大手メーカーだ。
フランシス水車に接続される川ア電機製作所製交流発電機。
TYPE:LAB-8、三相交流、125 kVA、60 Hz、3500 V、
回転数900rpmもフランシス水車のスペックと合致する。
川ア電機製作所製の三相交流発電機は、
3.5kV出力と大正期の標準電圧とも一致する。
ゆくゆくはそれでも電力不足となり、
60KW火力発電所を新設することとなる。
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