自吸ポンプの行方

アプローチはかつての木そり道からとなる。
木そりは、木材で作られた簡易ソリ状の運搬具である。 アプローチ


木そりは荷台部分に鉱石を積み、人力または馬力で山道を滑らせながら運ぶための道具である。
上菱鉱山では木そりで約2km搬出 → 朝日沢で三輪トラックに積み替え → 塩瀬 → 桐生駅へ運搬 、
というルートが記録されている。 木そり


しばらく進むと索道搬器のような機器がある。
資料には索道の敷設については記載されていない。 搬器


架空索道は地上に支柱を立ててワイヤーを張り、
荷物を吊り下げて運ぶ“空中の運搬路” のこと。
この鉱石を積み込んで吊り下げる箱が搬器だ。 マウスon 搬器


トロッコの車軸が半ば埋もれている。
車輪を左右につなぐ鋼製の軸で、
鉱山では急カーブ・過積載・粉塵環境に耐える構造であった。 車軸


対岸には小さな坑口がある。
ガニ坑は露頭の下部50mで坑口から166mと資料にあるが、
湧水のため採掘は一時停止していた。
この坑口がそれと一致するかは不明だ。 坑口


更に登ると、ポンプや機材の残る一角がある。
これは坑口付近の補助設備エリアで、
資材揚げ・坑内補助作業・排水処理を行っていた場所と考えられる。 ポンプ


小形の巻上機と自吸式ポンプ、
坑内排水ポンプのケーシング(外筒)のような円筒管。
腐食しているが十分に形を維持している。 ウインチ


巻上機はワイヤー径が6mm程度の小形の仕様。
ワイヤー径からみてもこれは補助巻上機で、
鉱石やトロッコではなく資材や排水ポンプの設置に使用されたもののようだ。 巻上機


これは運転前に吸込み管まで満水状態にしなくても、
ケーシング内を満水(呼び水)にするだけで吸水できるポンプで、
再起動が容易な“自立型ポンプ”として活躍した。 自吸式ポンプ


通常のポンプは吸込み管まで満水にする“呼び水作業”が必要だが、
自吸式ポンプはケーシング内部に水を保持しておくだけで
自動的に吸水状態へ移行する。 ポンプ


その上流にはコンプレッサーなどの機器が散乱する一帯がある。
コンプレッサーは空気を圧縮して送り出す機械で、
削岩機・排水ポンプ・補助ウインチなど坑内作業の動力源として使われた。 コンプレッサー


こちらは分岐弁とタンクが接続されている。
削岩機は複数台使うため、
空気の量を調整する分岐弁ユニットが必要となる。 分岐弁


こちらは空気制御分岐弁が設備されたディーゼル機関だ。
この下流にホースで延長した削岩機が接続されたはずだ。 空気制御


コンプレッサーの原動機(エンジン)として使われていた可能性の高い、
産業用ディーゼルエンジンのようだ。
船舶用ディーゼルを陸上転用したケースかもしれない。 内燃機


この円筒タンクは、受気槽(レシーバータンク)のようだ。
コンプレッサーで圧縮された空気を一時的に貯め、
圧力を安定させるためのタンクである。 受気槽


コンプレッサーはピストンの往復動で空気を押し固めるため、、
どうしても 脈動(パルス状の圧力の揺れ) が発生する。
この波を下流の機器に伝達させないのが
受気槽(レシーバータンク)の用途だ。 レシーバータンク


ヤンマー製2LDLエンジン。 小型産業用ディーゼルエンジン(2気筒)で、
陸用・船用どちらにも使われる汎用エンジンだ。 2LDL


エンジンの脇に埋もれているのはどうやらロールジョークラッシャのようだ。
少量の鉱石を細かく砕くための押しつぶし型破砕機だ。 クラッシャ


固定側と可動側のプレート、または円筒ローラーの間で鉱石を圧縮し硬岩を粉砕する。
上菱鉱山では、マンガン鉱の選鉱前処理に使われたとみられる。
電力供給が難しい山中では、
ディーゼルエンジン駆動の破砕機として重要な役割を果たした。 マウスon ロールジョークラッシャ


据え置き機械群から更に標高を稼ぐと、
斜面に小さな坑口がある。 坑口


露頭の下20m第一通洞、そこから15.5mで第二通洞、
12.1mで第三通洞が掘削されていたと記録にはあるが、
これは急角度で下る、小さな立坑のようだ。 坑口


6kg級の埋没したレールを追う。
鉱車があった証だ。 レール


レールの奥では斜面に埋もれた坑道を発見した。 これは前述の通洞のようだ。 通洞


酸素濃度を計測しつつ探索する。
かなり奥まで続いているようだが、
ある程度で撤退する。 坑道


別の沢沿いには支保工が露出する坑口があった。
電力の届かない山中で、ディーゼルエンジンは坑内作業を支える唯一の鼓動となり、
その痕跡は今も沢沿いの坑口に静かに残されている。 坑口






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